声の出ない少年と心を読む少女

てけと

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月が綺麗ですね

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 エルフに案内されたのは一つの家でした。大きな木をくりぬいて作られた家。中はシンプルで、寝るためのベットと椅子しかない。

「滞在中はここを好きに使っていいよ。火だけは使わないでね。この木は生きてるからね」
「わかったです・・・ってこの一部屋だけです?」
「そうだね。来客なんて想定してないからここしか空いてないよ」
「そう・・・ですか・・・」

 レンと二人でこの部屋で?ベットも一つしかないんですが!?

 因みにレンはこの場所に来てからあんまり喋らなくなった。なんかそわそわしている感じがするのは気のせいだろうか。

(木のいい匂いがする)
「そうですね。なんか落ち着きますね」

「食事は、適当にこの辺を歩けば食べられる果物が何種類かあるから勝手に採っていいよ」
「果物!!」
「甘くて美味しいよーここでしか食べられないしね」
「行くですレン!!根こそぎ頂くです!!」
(いや根こそぎはダメだろ・・・)
「ははは。食べられる量だけで頼むよ」

 レンの手を引き、走り出す。
 エルフの言っていた通り、集落を少し外れたところに入ると、いろんな種類の瑞々しい実がなっている木が沢山あった。

 ひとまず目の前にあった赤い果実を取り、齧りつく。

 しゃくしゃくと心地いい触感と、口の中に広がる甘酸っぱい味。さっぱりとしていて何個でも食べられそうなさわやかな後味を感じる。

「んまいです!!!」
(美味しいな。こっちのピンク色の果実はめちゃめちゃ甘いや)
「私もそれ食べるです!!」

 私とレンは一通り味見すると、各々が好きな果物をもいで、仮宿に持って帰ることにした。

(マリー・・・そんなに食えるのか・・・?)
「食えるです。もし食えなくてもレンが食うです」
(えぇ・・・)

 エルフに借りた大きな籠に、溢れんばかりの果物。
 うぇへへ。こんなにおいしい果物が食べ放題・・・ここが天国ですか・・・。

(マリーが喜んでくれてうれしいよ)
「そう言えばレンは知ってたんですね。ここにエルフの里があることを」
(ちょっとどうしても見たいものがあって・・・)
「星が降る場所ってやつですか」
(まあな。ちょっとこの間立ち寄った村で教えてもらったんだよ)
「へぇ~・・・レンがどこかに行きたがるって珍しいです。いままでフラフラ旅をしてましたし」
(そうか?)
「ええ。私は嬉しいです。レンの行きたい場所について行けるのが・・・」
(まぁ半分以上マリーの為に来たかった場所・・・・)
「へ?」
(なんでもない)
「むぅ・・・まあ今は追及しないでおいてやるです。明日に備えて今日はゆっくり休むです」

 その日はレンとたわいのない会話をしながらのんびりと過ごす。
 夜は狭いベットで、背中合わせになって横になる。
 こんなの眠れる訳ねぇです!とは思っていたものの、横になってすぐに寝息をたてはじめるレンに呆れ、緊張している自分が馬鹿らしくなって、目を瞑る。すると意外とにすぐに眠気がやって来て・・・。



 目を覚ますと、すでに起きているレンが椅子に座って果物の皮を剥いていた。

「おはよーです・・・」
(おはようマリー。食べやすいようにカットしておいたから、顔洗ったら食べるといいよ)
「ありがとうです」

 部屋の中にある木の枝からどういうわけか常時水が流れている。そこから水を掬い、顔を洗って眠気を吹き飛ばす。
 レンが切り分けてくれていた果物を食べ、あまりの旨さに完全に目が覚める。

「んまいです!!」
(昨日も聞いたって・・・)
「これが持って帰れないのが残念でならないですね・・・」
(また来ればいいさ。それこそ何回でもな)
「そうですね」

 朝ごはんを食べた後は、昨日言っていた精霊様の元へと行く。
 エルフの案内で連れられた場所は、とても大きな大木の家だった。幹の周りだけで600mほどあり、木の頂上は目視で見えないほど高い。

「通称世界樹。精霊となったエルフはみんなここに住むんだ。そして彼の目的の場所は・・・」
「まさか・・・」
「そうそのまさかさ。この木の頂上。そこが目的の『星の降る場所』だね」
「うえ・・・ここを上るのですか・・・」
(俺がマリーをおんぶするから大丈夫)
「・・・いえ。レンが行きたい場所ならば、私だって頑張るです」
「私が案内できるのはここまでです。まぁあなた達なら大丈夫だと思いますが、くれぐれも失礼のないようにお願いします」
「わかったです!」

 レンと二人で大きな木の中に入る。
 不思議な空間だった。空気が軽いというのだろうか、なぜだか体が軽く感じる。体の隅々まで力がみなぎる。

「人の来客とは珍しい。して何用か」

 さっきのエルフと外見は同じだが、存在感がまるで別者だった。
 地面から少し浮き上がり、ふわふわと飛んでいる。魔法?そんな魔法は存在しないはず・・・。

「我たちは生物というよりも概念に近い存在だ。この世界のあらゆる法則にとらわれることはない・・・目的は頂上か・・・ふむ」
「なんで・・・?」
「意思の疎通に言葉は不要。我らほどの上位の存在になるとお前達の考えていることなどわかるという事だ・・・しかしそっちの男は・・・なるほど・・・か」
「呪い?レンが?どういう―――」
「案ずるな。死ぬような類ではない。頂上へ上ることを許可しよう。お前たちに祝福が有らんことを」
「ちょっと待で・・・す?」

 目の前にいたはずの精霊はいつの間にか姿を消していた。

(許可はもらえたし、登ろうマリー!)
「ええ!?レンが呪われてるとかなんとか・・・気にならないんですか!?」
(んー・・・死ぬようなものではないって言ってたし・・・なんとなく心当たりもあるし・・・別に気にしてない)
「私は気になるですが・・・まあ本人がそう言うなら・・・」
(行こうマリー!)

 私の手を引いて歩き出すレン。木の淵にある階段を上り始める。
 上を見ると、やはり頂上は見えない。

 それでも、嫌な気にならないのは、きっとレンと共い歩いているからだろう。
 

 


 
 


 



 上り始めてどれくらいたっただろうか。上っても上っても階段階段。

「いつまで登るんですか・・・」
(いや・・・俺の背中にしがみついてるマリーに言われても・・・)

 私は既にレンの背中にしがみつき、おんぶされている状態だった。
 いや・・・結構上りましたよ?体が軽い事もあって、意気揚々と上っていたのですが・・・流石に高すぎです!!なんでレンは平然としてるのですか!?

(でも見ろ。頂上が見えてきたぞ)
「おぉ・・・やっと終わりが・・・」

 階段を上り切ると、横穴が開いており、そこを出ると大きな枝が伸びていた。

「ここから落ちたら即死ですよねぇ・・・」

 意外にも風は吹いていなかった。周りの木々が受け止めているのですかね?
 そっとレンの背中から降り、恐る恐る下を見る。
 もしろん地面は見えない。いつも見上げている雲が自分の下に見えることがとても不思議だった。

(マリー下よりも上を見て見なよ)
「へ?」

 空を見上げる。そこには満天の星空。
 真っ黒い空に輝く無数の星達。

「ふわあぁぁぁ!!すごいです!!」
(マリー。危ないからこっちで座って)

 恐る恐る歩き、レンの隣に座る。肩が触れ合いそうな距離で座り、横に置いた手を、レンがそっと握る。
 二人で手を繋ぎ空を仰ぎ見る。

「これは・・・苦労した甲斐があるというものですね」
(マリーは半分おんぶされてたけどな)
「それを言うのは野暮ってもんです!」
(ははは・・・ごめんごめん)
「まったく!それにしても綺麗な星空です・・・地上じゃ見れないですよね。それで?レンはどうしてここに来たかったのです?」
(マリーに見せたかったって言うのもあるけど・・・天国にいるお父さんとお母さんに報告したかったんだよ)
「報告?」




 ッ!?―――・・・・。

「ええ。そうですねレン。でも・・・

 レンの手に力が入る。

(そうだな・・・きっと


「ふふふふ・・」
(ははは・・)

「(はははははははは!!)」

 二人で笑い合う。恥ずかしさをごまかす様に、こんな臭いをしあう男女なんてきっと今の時代居ないだろう。

(よく知ってたなマリー)
「私だって恋愛ごとに夢見た時期はあるです。まさか本当に言う日が来るとは思っていなかったですが・・・まさか両親に報告って・・・」
(ああ・・・俺にも好きな人が出来たってな・・・。想いが通じなくても、一生をかけて守りたいほどの人がいるって)
「恥ずかしいです・・・。でも、私にとってもレンはかけがえのない人です。私の世界はあのボロボロの家の中だけのことでした。それが・・・レンと出会って・・・こんなに広い世界を見て・・・美味しいものを食べて・・・こんな綺麗な景色に出会えて・・・ありが・・とう・・レン」
(こちらこそ・・・出会ってくれてありがとうマリー。そして・・・これからもよろしくな)
「レン!!」

 泣き顔を見られたくなくて、胸の中に締まっていた想いがあふれ出して・・・私はレンに抱き着く。
 レンは優しく私を抱きとめ、背中に回した腕にギュッと力を入れる。



 満天の星空の元、私たちはパーティー仲間から、恋人同士となった。
 それが嬉しくて嬉しくて、私はしばし、レンの腕の中で泣き続けるのだった。
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