声の出ない少年と心を読む少女

てけと

文字の大きさ
36 / 44

マリーの生い立ち

しおりを挟む
 マリーが突如倒れ、即座に宿に戻り、聖女アンジュの診察と治療も空しく、マリーが目覚めることはなかった。結局そのまま夜が明け・・・宿の部屋のベットで眠るマリー。
  それを心配そうにベットの横で見つめるレン。

 

  ガチャリと宿の部屋の扉が開く。

「レン様。助けになりそうな人を連れてきたっす」

  そう言って、その助けになりそうな人とやらを、乱暴に部屋の中に放り投げるドロシー。

「久々に会ったかと思えばこの仕打ちか・・・まったく・・・ってレンじゃないか」

  その人物は、レンが帝国に入って最初にあった人物。



  デルであった。

「それにそこに寝ているのは・・・マリーか・・・なるほど理解した」

  レンは木の板に文字を刻む。

『知ってるのか?』
「ふむ。マリーは儂の孫だからもちろん知っとるし・・・こうなった原因も知っとる」
「原因は私でも何となくわかるっす。知りたいのは治す方法っす」

  ギラリとドロシーはデルを睨む。

「まぁまぁ落ち着け。グラス人払いを」
「分かった!」

  扉の外にいた女性が返事をする。

「どこで聞き耳を立てられとるかわからんからな」
「流石変態じじいの人造人間ホムンクルス。確か人の魔力を探知できるんでしたっけ?」
「逆に言えばそれしか出来ないただの人だよ」

  デルは部屋にあった椅子に座り、レンのほうを向く。

「これから話すのは本人も知らない彼女マリーの過去の話だ。お主には聞く資格・・・いや、義務がある」

  レンはコクリと頷く。

「まず、マリーは魔物の遺伝子を植え付けられた改造人間だ」

「!?」

「そもそも天啓と同時にスキルなんぞ発現するはずが無い。心を読むという能力は、ある魔物の能力なのだ」

「昔帝国にとある研究者がいた。儂とそいつは同期で、お互い回復魔法に頼らない治療の研究をしていた。
  なにせ回復魔法が使える人は少ない。なのに怪我や病気で死んでいく人は後を絶たない。
  だからワシとそいつは思った。誰でも知識さえあれば出来る治療を広めれば、もっと不合理に死んでいく人は減るのではないかと。

  死体を解体し、人体の構造や病気の症状をひたすら研究し、やがて儂とそいつで今の医療の基礎を作り上げた。あとは広めるだけ、それだけだったのに・・・。

  奴は狂った。原因が何だったのかは未だに分からない。そして禁忌へと手を出し始める。

  怪我も病気もしない新しい人を作ると言う。

  そこでやつが目をつけたのが魔物だった。


  奴は帝国から姿を消し、酷い人体実験を繰り返しておった。
  そのことを聞き付けた皇帝は奴の排除を命じた。

  そこにおるドロシー達暗部の協力の元、ようやく居場所を見つけ、そこで儂が見たものは・・・この世の地獄じゃった。

  まさに怪物。もはや正気を失い、異形の姿になった人々。もはや殺す以外に救いは無かった・・・。

  ドロシー達に彼らと奴の処理を任せ、儂はやつの研究資料を見た。そこには・・・何百何千の実験体の記録。 
  儂自身吐き気をもよおしたほど邪悪な研究じゃった。

  そして・・・その研究室の奥にいたのが・・・検体番号211番、生まれて間もないマリーだった。そしてマリーを守るように立ちはだかる3つの尻尾を持つ、真っ白なけこのような魔物だった」

「それで情が湧いて、マリー様を連れ帰ったわけっすね」
「あの頃のお主だったら赤子でも殺しただろ?」
「否定はしないっす。あそこで殺していた方が、この先ひどい目にあう事もない、と考えていました」

「だから儂は赤子とその魔物を連れ帰った。魔物にしては妙におとなしく従ってくれた。それもそのはずだよな。なにせその魔物は、おったのだから。
 その後は儂の研究室にいた夫婦をマリーの両親とし、その母親の親が儂ということにした。

 マリーは普通の子だった。人として成長し、一緒に連れてきた魔物もペットとしてマリーと共に生きていた。
 しかし・・・数年後その魔物は寿命でこの世を去った。短命だったのだろう。マリーはしばらく塞ぎ込んでいた・・・そして天啓を授かる日がやってくる・・・

 偶然なのか、それとも必然だったのか、天啓を得た日・・・マリーは同時に魔物の特性を開花させた。人の心の声が聞こえるというその能力を・・・。


 その日から儂はマリーの元から離れた。真実を知られるわけにはいかなかったからな。マリーの両親もマリーの能力故にどうもギクシャクした関係になってしまった。



 これがマリーの生い立ちだ」

 レンはデルの顔をじーっと見ていた。真剣にその話を聞き・・・。

『それで?どうやったらマリーが元気になるんだ?』

「ふっははは!そうだよな。お主には関係ない事か」

『そうじゃない。マリーはマリーだ。過去がどうあれ、俺がマリーを嫌いになることはない』
「ふむ。マリーとお主を会わせたことは間違いじゃなかったようだな。

 マリーがこうなっている原因は、マリーの中にいる魔物が寿命を迎えようとしている。マリーはそれに引っ張られる形で死にかけておる」

『マリーを救う方法は?』

「一つだけある。それは・・・不死鳥の涙があれば、マリーは助かるだろう」

「それって・・・あの不死鳥のダンジョンの最奥にあると言われる・・・伝説級のアイテムじゃないっすか!?ほかに方法はないんですか!?」
「マリーの中にある魔物の遺伝子だけを取り出すなんて不可能だ。それに・・・寿命を覆す事なんぞ、それこそ女神くらいにしか出来んだろう・・・」
「そんな・・・ってレン様!?どこに・・・」

 レンはスッと立ち上がり、部屋を出ようと歩き出す。

『その不死鳥のダンジョンに』

「落ち着けレン。お主がいくら強かろうが、間に合わん。なにせあのダンジョンは最奥まで100階層。この世界の根幹に一番近いとされているダンジョンだ。まっすぐ降りていったとして、最低1年はかかる」

『じゃあどうしろと?俺にマリーを見殺しにしろと?』

 レンは歯噛みする。やり場のない怒りをぐっと堪える様に。

「実は帝都に一つだけあるんだよ。不死鳥の涙」
「・・・まさか」



「お察しの通りだ。皇帝の住まう城の宝物庫。・・・つまり皇帝が持ってるんだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...