声の出ない少年と心を読む少女

てけと

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声の出るようになった少年と心を読めなくなった少女

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 レンが目を開くと、そこには鼻が当たるほどの距離にマリーの顔があって・・・。

「んっ・・・ッ!?レン!!」

 レンは目を見開く、なぜかマリーが自分の唇に唇を重ねていたからだ。

「良かった!!目を覚ましたんですねレン!!」

 そのままベットの上で体を起こしたレンに抱き着くマリー。
 レンは呆然としながらも、抱き着いてきたマリーをそっと抱きしめる。

「ううっ・・・レン・・・勝手にどこかに行かないでください・・・」

 レンの腕の中で泣き始めるマリー。
 レンは申し訳なさそうにマリーの頭を優しく撫でる。

「実は・・・レンに言わないといけないことが・・・」

 マリーはそっとレンの腕の中から離れる。
 涙を流すマリー。真っ白だった髪の毛だったマリー。それが今や前髪の一部分だけは白く、他は真っ黒の髪の毛になっていた。

「もう私には・・・レンの心の声が聞こえ・・・ないんです・・・今何を言ってるのかも・・・ごめんなさいレン・・・」

 そう言ってマリーは顔を伏せる。

「それでも・・・わだじは・・・れんのどなりに・・・いでもいいでずが・・・」

 マリーの腕に力が籠る。体は震え、涙は重力に従って地面に落ちる。




「あ・・・た・・・り・・まえ・・・だろ・・・ま・・・りー」



 レンは絞り出すように声を出す。

「レン・・・ごえが・・・・ううっ・・・うわああああぁぁぁぁ!」

 たまらずマリーはレンに再び抱き着く。

「い・・まは・・・ひさ・・・びさだ・・・から・・・じゃべり・・・・にく・・・い・・・けど・・・あい・・・・し・・・てる・・よ・・ま・・・りー」

 レンはマリーの背中に腕を回し、優しく背中をポンポンと叩く。


 その二人の姿を見て、ハンカチで涙をふくスイと、満足そうに微笑むキースがいた。

 
 マリーはレンに抱きしめられたまま顔をあげ、レンを見る。

「わだしも・・・あいじてまずぅれん!!!」

 マリーの泣き笑う姿にレンは微笑む。

「そう・・・いえば・・・なんで・・・おれに・・・きすを・・・?」
「ぎーずが・・・レンが魔王ののろいにががってじぬって・・・じんにあいずるものとのぐちずけで・・・のろいがどげるって・・・だがら・・・」

 途切れ途切れ泣きながら語るマリー。

 そっと部屋を退室しようとするキース。

「それ・・・・う・・そ・・・」
「へっ・・・?」

 泣き顔から呆然とした顔になるマリー。

「どろじー・・・」
「ここに!」

 どこからともなく現れるドロシー。
 服の袖で涙をふくマリー。ビシッと指差し、ドロシーに指示を出す。

「あのばがにてっついを!!」
「承知っす!!どんなお仕置き拷問にするっすか?」
「くすぐり一時間です!!」
「承ったっす!テツ!カイ!」
「「はっ!」」

 天井から二人の男性の返事が聞こえる。そして・・・。

「なんだてめぇら!!まてっやめっ!あーーーーーーーーーっ!!」

 部屋の外からキースの悲鳴が聞こえた。

 
 ぐすっぐすっといまだ泣いていた余韻が止まらないマリーの頭を引き寄せ・・・。

「レン?んっ・・・ちょっとまって・・です」

 そっとキスをするレン。マリーは赤く顔を染め、顔を伏せる。

「見られてるのは・・・はずいです・・・」

 そう言ってマリーはスイの方を見る。因みにドロシーは既に部屋の中から消えていた。

「見・・・見てないので・・・お好きにどうぞ・・・」

 そう言って目を指で隠し・・・つつ、ちらちらと指の隙間が開いたり閉じたりしている。

「さっさと出て行くです!!むっつり女ーーー!!」

「は・・・はぃぃぃ!!」
 
 スイは慌てて部屋を出て行く。
 バタンッと扉が閉まり、レンとマリーは二人きりになる。

「レン・・・」
「ま・・・りー」


 二人は見つめ合い・・・そしてお互い顔を近づけ・・・。


 

 バァン!と荒々しく部屋の扉が開く。

「レン!目が覚めたの!?」
「無事?」

 部屋に飛び込んできたのはアンジュとエリー。
 マリーはレンの顔の前でいったん止まり・・・そのまま二人を無視してレンとキスをする。

「「っ!?」」

 しばしお互いの唇を貪る様なキスをした後、マリーはベットから降り、入ってきた二人にドヤ顔をする。
 しかしその顔はまるでゆでだこのように真っ赤になっている。

「ふ・・・ふん!キスくらいで照れちゃんて初々しいわね」
「別に悔しく・・・ない」

「ビッチなお二人は即体を許しちゃいますもんね~さっさと王国に帰って、愛しのアル様と淫らな夜でも過ごしてろです」

 そう言われれば何も言えない二人。部屋に飛び込んだのはいいものの、少し空気が悪くなる。

「そう・・・いえ・・・ば・・・なんで・・・おれは・・・・いきて?」

 レンの受けた傷は間違いなく致命傷であった。魔物の一匹一匹から受けた傷は小さな傷でも、それが増えれば増えるほど死に至る傷になる。
 実は戦いの最後の方は、レンに意識はなかった。只々目の前の敵を殺すという本能だけが、レンの体を動かしていた。

「そうね・・・魔王が消えた後の話を少しだけしましょうか・・・」
「ん。アンジュも意識を失ってた。だから私が・・・」

 そしてエリーは事の顛末を語りだす。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
「おい!!しっかりしろレン!!死ぬんじゃねぇぞ!!」

 キースは叫ぶ。血まみれのレンに駆け寄りながら。
 キースがレンにたどり着く前に、レンの周りに数名の黒いローブを羽織った集団が颯爽と現れ・・・。

「なっ!?だれだてめぇら―――」
「サキはレン様にポーションを飲ませて、私たちは傷を塞ぐために体に塗布する」
「口移しでもいいんですよね」
「頭領に殺されてもいいなら」
「おとなしく流し込みます・・・ミラもあんまりいやらしく触ってると報告しますからね」
「これは治療だから問題ない・・・これは治療だから問題ない・・・」
「やばい目をしてるし・・・落ち着いてミラ。ひとまずレン様を生きて帝都に帰さないと」
「そ・・・そうね」

「なんなんだお前らは!レンに何をしてやがる!!」

 キースが問うと、一人の女性が振り返り・・・。

「あぁ・・・確か勇者?何ってレン様を治療して運ぶんですよ。これ貴方たちの分です」

 ドサリっとポーションなどが詰め込まれた袋を降ろす女性。

「ってなんで体が小さいサキがレン様をおぶろうと・・・それは私の役目って決めてたのに!!」
「早い者勝ちですね」
「待ちなさい!!」

 そうしてレンはほんの少しの時間で変な集団に連れ去られる。
 その様子をポカーンと見送る事しかキースはできなかった。

 
 突如その時、どこからか突然何かが飛んでくる。
 その光輝くなにかは、魔王がさっきまで居た場所に落ちてくる。

「今度はなんだ!?って・・・鎧?」

 光輝く鎧は、その場所でなお一層光り輝きだし・・・。
 キース、スイ、アンジュ、エリー、マリクの体の中から、小さな光の玉が飛び出し、その鎧に集まっていく。

「い・・・いったい・・・なにが・・・おきて・・・」

 スイは少し力が抜け、膝をつく。それはマザー以外の他の人もそのようだった。
 
 そして・・・うっすらと姿が見える透明なシルエットが、こちらに向けてお辞儀をしているように見え・・・。
 鎧の背後の空間が開き、鎧は別の次元へと消えていってしまった。
 
「女神とは魔王の対処をするために存在するもの。魔王のあるところに女神がいるのです」

 ポーションを呷りつつ、マザーがそう言う。

「つまりあれか。女神さまは魔王を追って別次元に行ったってことかよ。よっぽど魔王を恨んでるんだな・・・こえぇ女神さまだな」

 キースは吐き捨てるようにそう言う。

「いいえ・・・きっと逆でしょうね」
「は?」



魔王を愛しているからこそ、片時も離れたくないのでしょう」

 マザーは少し微笑み、そう静かに言い放った。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 レンが目を覚ましてから数日後。レンとマリーは帝都から旅を再開するために、帝都の出入り口へと向かっていた。

「そういえば・・・次はどこに行こうか。確かマリーの行きたいところに行くんだったよな」

 数日間リハビリを重ね、とうとう普通にしゃべれるようになったレンが口を開く。

「だったら行きたいところがあるです。私の故郷なんですが・・・墓参りをしなくてはいけない気がして」
「へぇ?誰の墓なんだ?」
「私の愛猫のお墓です。とは言っても何もない村なんですけどね」
「じゃあ次の目的地はマリーの故郷だな。どんな村なんだろう?楽しみだなぁ」
「本当に何もないですよ?」
「小さなころのマリーの話とか聞けるかもだろ?楽しみだなぁ」
「なっ!?そ・・それは・・・楽しみの意味が違うです!!」

 抗議の声をあげ、ふてくされるマリー。それを見て笑うレン。

「むぅ・・・あっ!ワタシワスレモノヲシタノデトッテキマスネ!」
「え?」
「レンは先に行っててください!すぐ追いつくので!!」
「だったら俺も付いて―――」
「大丈夫です!!」

 そう言ってマリーは走り出した。あっという間に見えないところまで走り去っていくマリー。
 レンは仕方なく先に帝都の出入り口のある門へと向かうことにした。

 レンは空を見上げる。雲一つない快晴で、太陽がぎらぎらと輝いていた。

(お父さんお母さん。いろいろあったけど俺は今幸せだよ。それも二人が力を貸してくれたおかげだよ・・・ありがとう)

 そう心の中でお礼を言い、そっと剣の柄を撫でる。


 レンが撫でた長剣と短剣が、同時にキラリと光った気がした。
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