転生しましたが、今から生贄として捧げられる様です。

深緑とかげ

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5.もふもふが現れた

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少し元気になりました。と言っても、ずっとあの貧弱な体で生きてきたので「私、今凄く強いし重いのでは?」なんて気持ちでいっぱいです。蘭さん(女将さんに名前を聞けました)にそう伝えたところ困った子を見る様な顔で笑ってくれました。そりゃあ、今のところ出会った二人に比べたら子供みたいなんでしょうけど。
「じゅうに、じゅうさん……じゅうよんっと……はあ、広いなあ。」
 今、私が何をしているかと言うと、お許しが出たので散歩が日課に加わりました。(ご飯の時間だけは、相変わらず抱き抱えられて移動してます)と言うか、私が夜中にドタバタ歩行練習しているのがばれました。
――ほら、上手やん……ゆっくりな。
 思い出すと恥ずかしいセリフがよみがえりましたが、歩行練習です。怪我をされるくらいならと、食後に歩行練習をしてもらいました。前世の病院にあるようなリハビリ施設なんてないので、あれです。「あんよが上手」です。がっしりした大和さんの腕に捕まって、歩く。躓く。抱きとめられる。この繰り返し。ええ、それだけです。
「色気が……ありすぎる」
 性格的には、話しやすい関西弁のお兄さんって感じの大和さんですが、とにかくあの美貌とボディタッチの多さにどう反応すべきか悩んでます。今生の家族は知らないので置いとくとして、前世も弟がいただけなので、お兄ちゃんへ憧れはあってもあんな心臓に悪いお兄ちゃんは求めてない。
「妹扱いっていうより、なんだろ…子供か、もしくはペットみたいな……」
 拾ったと言っていた気がするし、実は山の鬼さんたちは生贄なんて求めてなかったって事なんだろうか。なんなら、箱に入れて捨てられて可哀想な捨て人が居たから拾っちゃったのかなあ。
「いや、嘘でしょう。そんな捨て犬みたいに……」
 そういえば前世で飼ってたヤマトも捨て犬だったなあ。なんて、思いだす。
「まさか、ヤマトの恩返し?」
「がぅう?」
「え?」
「がう、がう」
 バレーボールくらいの大きさの丸い毛玉が居た。色は薄い灰色で、角の様なものは二本左右に生えている。
「えっ……何、鬼?いや、え?」
 敵意があるようには見えないが、鳴くたびにちらりと見える口らしき穴の中には尖った歯が並んでいる。
「わ、私は美味しくないよお?」
 一歩下がる。
「がう、がうぅう?」
 一歩……いや、一バウンドかな。ふわふわはそそられるけど、怖い。くりっとした悪意のなさそうな目がまた怖い。ホラー映画の記憶までしっかり思い出さなくていい。
「ひぃっ、ごめん、来ないでえ」
 意味はないかもしれないが、咄嗟に両手を生き物の方へ突き出す。伝わって。
――もふ。
 手のひらに、ふわふわの感触。気持ちいい。犬よりは、日向ぼっこした後の猫みたいな柔らかさ。
「えええ。何々もしかして撫でてほしいの?」
 可愛い。もう、さっきの丸ごとなかったことにしてほしい。全然怖くなかった。撫でるたびに嬉しそな声がする。なんなら、どこかわからない喉がゴロゴロ鳴っている。まさか猫なの。ヤマトごめん。犬も大好きだけど、猫も好き。
「ふぐうっ、可愛い」

 謎生物のがるちゃん(仮)をじっくり撫でた後、私は部屋に戻って大和さんを待った。
「大和さん、この子飼っても……いえ、私と一緒に飼ってください。お世話します!」
 綺麗に土下座できたと思う。いや、腕はがるちゃんを掴んで伸ばしてるので、ちょっと違うけど。
「……灯…そいつは鬼虫やで?」
「むし?えっ、だってこんなもふもふで可愛いんですよ?」
「餌もいらんし飼ってもええけどそんなに長くは生きられへんよ」
「えっ、そんな……」
「そもそも生き物ちゃうからなあ。妖力って言うんやけど、俺らにある特殊な力の残りカスが集まってできたようなやつやから、そのうち勝手に消えてくねん」
 そう言って大和さんががるちゃんを撫でた。がるちゃんは気持ちよさそうにしていた。
「がるちゃん……」
「……なんや、名前までつけたん。まあ、害にはならんし灯の好きにしてええよ。感情やらがあるかはわからんけど、人に寄ってくるんや」
「そう……なんですね」
 
 その後大和さんと元の場所に返しに行った。その翌日も私が散歩に出るとどこからともなく表れて、ついて回るので私には散歩のお供が出来ることになった。
「……なるべくずっといてね、がるちゃん」
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