転生しましたが、今から生贄として捧げられる様です。

深緑とかげ

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蘭の心配

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 妹の一人息子である大和が、人を拾ってきた。名前は灯と言うそうだ。少しずつ元気を取り戻し、先日は私に名前を聞いてきた。言語が通じるのも驚いたが、簡単に心を開き嬉しそうに食事をする姿を見ると心配になる。果たして本当に人なのだろうかとすら、疑いもした。

――蘭……しばらくは灯になんも聞かんで欲しい。出来るだけ普通に接してくれへんやろか。それから、他の奴には俺が言うから。

 真剣に頭を下げた大和に私は、ただ頷いた。義理の弟の影響で西の方のイントネーションで話す大和の両親は人に殺された。その事実を大和は知らない。どうしてそうなったのかは私にもわからなかった。大和を置いて、二人目の子が産まれて顔見せのために向こうの実家に向かう最中だったそうだ。ここ数年人の世では鬼退治なんてものが流行っていると言う噂を聞いた。だがこの里近くではそういったことは起きていなかった。むしろ生贄を頻繁によこすようになった。正直なところ迷惑だったが、放って置けと言うのが里長の考えだった。下手に触って何事かが起きないようにと言うことなのだろう。この里の長は賢く見目麗しい。銀色の腰まで伸びた長い髪をゆるくまとめていた。唯一の欠点は二本の角のうち右側だけが折れていることだ。それだって、人の仕業だと言う。
「あんな、可哀想な状態じゃなきゃ反対したのに」
 大和は、歴史として鬼が人を食べていたこと。そしていつの頃からか愛でるようになったこと。それだけしか知らない。特に鬼の本能が強く出る者たちだけがその性質を持つ。蘭はそこまで人に対して心を奪われはしなかった。
「生贄なんて、体のいい言い訳でしかない。あの子は口減らしされただけだわ」
 裕福な身なりで現れたのなら、夜の山に捨てただろう。けれど、灯は今にも消えそうなほど青白い顔をして眠っていた。着物ともいえないような汚れた布切れに包まれて、内側から開けることのできない木箱に押し込められていた。
「私にできるのは、せめて美味しいご飯を食べさせてあげることくらいだもの」
 人を許すことはできないだろう。けれど、灯を害したいとは思えなかった。

――あの、蘭さん。このお味噌汁凄く美味しいです。

 笑顔を見せるようになった灯は素直に可愛いと思えた。
「でも……いつまでも、こっそり囲ってるわけにはいかないのよね」
 大和は灯を拾ったことを里長にも話していない様だった。
「困ったわね……あんなに入れ込むなんて、血かしらね」
 一度だけ、決心がつかないのであれば自分がと大和に言ったことがあった。大事にはならなかったけれど、あの瞬間の大和は酷く恐ろしかった。言葉をつづけられずに固まっていると、大和が息を吐いてからそっと「ごめん」と言った。私にさえそんな感情をむき出しにしてしまうのだ。例え里長相手だとしても、難しいのは理解した。
「でも、気づかない人じゃないのよねえ」
 おそらく里長はすでに灯の存在に気付いているだろう。何も言ってこないのは様子を見ているからに過ぎない様に思う。
「それに灯ちゃんもねえ……お転婆みたいなのよね」
 鬼虫をそれは大事そうに抱えて帰ってきた灯を思い出すと頭が痛くなる。
「今日も、平和でありますように」
 
 大和も灯ちゃんも、それからこの里も。
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