【完結】王子への罰として婚約させられました!

オリハルコン陸

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おまけ

女子…会…?

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私は今、王妃様とサシで(紅茶を)飲んでいる。

この緊迫した空気……
………怖い。

本音を言えば全力でお断りしたかったんだけど

「領主夫人に相応しい振舞いか見て差し上げます」

と言われては、逃げようがなかった…。

そんな訳で私は今、冷や汗ダラダラでお茶を飲んでいる。
ちなみに王子はこの場にはいない。
だって

「女だけで…ね…?」

って、王妃様が言うんだもの!言うんだもの!
凄い怖い笑顔で!!!

だから王子は、国王とジュニアズと一緒に、あっちはあっちでお茶でもしている筈だ。
もっと気楽な雰囲気で!!

国王あのバカがまた妙な贈り物をひと財産ジュニアズたちに押し付けようとしてるかもしれないけど、うちの長男はしっかりしているから安心だ。ちゃんと断っていることだろう。


そんなことより我が身である。
私は借りてきた猫というより、むしろ犬に咥えられた骨の気分で椅子に座っている。
いつガリっと、バキっと、いかれるのかと戦々恐々である。

王妃様は悠々とカップを傾けている。

優雅だな!
そんな何気ない仕草もとても優雅だ!

「それで…」

音も立てずに、流れるような仕草でカップを置いた王妃様が口を開いた。

きた!
何だ!?
どんとこい!
いや、こないで!!
むしろこのまま無言でお帰りください!!!
無言のお茶会は、昨今のトレンドです!!!!!!!

という必死の願いも虚しく、王妃様は続けた。

「あの子、最近どう?」

けれど、思ってたのとはちょっと違う内容だった。

…ジャブか?
でも王妃様がそんな無駄なことをする訳………

あるな。
むしろする。
関係ない話題から入って、相手が気を抜いたところで一気にーー



ひぃいいっ…!!!!!



いや落ちつけ。
とりあえず答えなきゃ。
「あの子」って誰だ?
ジュニアズ…?
でもそれなら「あの子たち」って言うだろうし。

クー…の訳はないな。
何が琴線に触れるかわからないので、大事なクーは、王妃様にはほとんど会わせていないから。
なら…

「あまり変わりありません」

王子うちの子は相変わらずだ。
たまに結婚式の時のドレスを引っ張り出してきては、私に着せたがるくらい相変わらずだ。

…あれが唯一、『胸のある私』だからっ……!



…でもそれ以外は、バカ過ぎることはしないし、お仕事も手伝ってくれるし、いい感じだ。
…なんとなく三兄弟みたいになってるけど…。

長男>王子>次男

な感じ。
そのうち

長男>次男>王子

になりそうだけれど、そうなったらそうなったで仕方がない。
うん、仕方がない。
王子が落ちるんじゃなくて子どもが優秀になるだけだから。
心の準備はできてる。

それに…




バカな子ほど可愛い




この言葉を、王子と出会ってから何度も何度も噛み締めている。



許容範囲内のバカさは、愛情を感じさせるのだ!



恐ろしい…。
これが生き物の生存戦略なのか…。


現に王子のことを話題に出した、このおっかない王妃様の眼にも、ほんの微量の愛情が見え隠れしている。

「そう…。あの子は昔から、他の二人とはちょっと違っていてね…」

………なんか語り出したぞ?
怖いので、黙って拝聴しておく。
矛先が変な方に向かないのであれば大歓迎だ。






そうして王妃様の一人語りを聞き続け、楽しいお茶会尋問の時間は終了した。
私はひたすら相槌に徹した。


「楽しかったわ」

などとのたまった王妃様は、王子たちのところに行くというので侍女に案内を頼んだ。
王妃様の姿が扉の向こうに消えるのを、立って見送る。
そしてーー



………………うはぁ。




肩と言わず全身から力が抜けた。
脇のソファに突っ伏して、己の生を実感する。

胸に手を当てると、心臓はまだちゃんと動いていた。真っ平らな胸だと鼓動の確認が楽…ってやかましい……


……ああ…。
私、まだ、生きてる…。


いや、本気で死ぬとは思ってないけど…(あれ?…思わなくていいんだよ…ね………?)
でもそれくらい緊張した。
…まだ動悸が収まらない。


…………。
これは良いタイミングなので、今から晩餐まで私は席を外そう。そうしよう。
王妃様はきっと王子とジュニアズがいれば満足だろうし、国王はジュニアズしか目に入っていない感じだもの。
私はいなくても大丈夫、な筈。

……よし。今からちょっと、クーに癒してもらおう。
………そして、夜は王子に癒してもらうんだ……。




足早にクーの部屋に向かう。
ドアを開けると、クーはすぐそこで尻尾を振って待っていた。
しゃがみ込んでぎゅっと抱きつく。

「クー………」

ちょっと涙目になる。
…本当に怖かったよー……

クーにペロペロ顔を舐められて、少し余裕が出てきた。

…さっきのお茶はなにか意味あったのだろうか。
王妃の思い出話しか聞いてないんだけど。
いや、ひたすら拝聴してればよかったから、何か言われるより数百倍マシだったけど。
でも別に開催の必要なくなかったか?と思わざるを得ない。


…まぁ、いい。
いずれにせよ終わったことだ。

ぎゅうっと抱きしめ直しても、クーはパタパタと尻尾を振っている。
風が顔に当たる。

……ああ…生きてる…。


……できれば王妃様とのサシでの(お茶)飲みなんて、これっきりで勘弁願いたい。
マジで!マジで!!!

心からそう思った…。




------
リューンさん、無事生還。



「殴る」の二年後くらい。
国王夫妻が、リューンたちの領地に立ち寄った時の話。

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