【完結】王子への罰として婚約させられました!

オリハルコン陸

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おまけ

バレンタイン 前編

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朝食のテーブルについたら王子がソワソワしていた。結婚して一年経ったのに、相変わらず落ち着きの無い。
一瞬

トイレかな?

って思ったけど流石に違うだろう。どれだけ犬っぽくても王子は人間だ。それもいい歳の。


でも、じゃあ何だろう?


わからなくて首をひねる。
何というか、期待のこもったキラキラした視線を向けられている。
厨房で骨からスープを取った日に愛犬のクーが向けてくる視線に似ている。クーはスープを取り終わった後の、あのでっかい骨を齧るのが大好きだ。

でも今はそのスープの匂いはしていない。というか今は朝だ。仕込みにはまだまだ早い。いや、そもそも王子に骨を齧る趣味はない…筈だ。

うーん、わからない。



サクッと諦めてターニャを呼んだ。わからない事は人に聞けばいい。

近づいてきたターニャに顔を寄せる。

「王子の様子が変なんだけど、何か知ってる?」

ひそひそと囁くと、ターニャは小さく顎を引いた。

「少し調べて参ります」

ススっと、ターニャが裏に姿を消した。
よし、これでオッケー。

直接聞けばいいのかもしれないけど、何となく王子からは「察して欲しい」オーラが出ている気がする。正直そういうのは面倒くさいのだけれど、できれば王子を喜ばせたいとも思ってしまうで。
………私もそれなりに王子にメロメロなのだ。

それに王子のことは、周囲の人に聞けば大抵わかる。私の王子うちの子はわかりやすいから。
きっとターニャが、答えを見つけてきてくれる筈だ。


「き、今日はいい天気だな!」

ターニャが部屋から出て行くと、王子が挙動不審に話しかけてきた。

外を見る。
雨が降っていた。

まあ、雨も嫌いじゃない。
今日くらいのシトシトした雨は、音もなかなか落ち着くし。
あと微妙に湿気がある感じも好きだ。

「そうですね」

頷いてサラダにフォークを刺した。
炙った肉のカケラとカリカリの小さいクルトンが、たっぷりの葉野菜に乗っている。ドレッシングはシンプルに塩と植物油だけど、めちゃくちゃ美味しい。
素材がいいって事なのだろう。
野菜も肉も良いけれど、特に油が良いのだと思う。

うちの領地は、この植物油の生産が盛んだ。ただし、品質に結構ばらつきがある。
領主館に届くのは一番良いやつらしくて凄く美味しいんだけど、街で食べるとそうでもない。
その所為か、あまり領外に良さが伝わっていない気がする。私もこの領地に来るまで聞いた事なかったし。

それをもう少しこう、どうにかしたい。等級管理とか使い道とか何かしらでプッシュしたら、他領との取引材料になる品になりそうな気がするんだけど…。

考え事をしながらモグモグ食べていたら

「今日は…何か予定はあるのか?」

と聞かれた。
朝の着替え中にターニャに確認したところ、外出の予定も来客の予定もなかった。

「特にありませんよ」

答えて何気なくそちらを見ると、王子の前の皿はほぼ手付かずだった。

どうしたんだろう?
らしくない。

「具合でも悪いんですか?」

眉を寄せた私の視線に気づいて自分の皿に目を落とした王子は、慌てて首を横に振った。

「いや、そんな事は無いぞ!」

そして勢いよくパクパクと食べ出したので、ちょっと安心する。

ならいいんだけど。

私も自分の食事に戻る。
朝は基本、サラダとスープとパンと卵料理だ。王子はそれに肉が付く。肉は重いので、私は朝には食べない。
王子はソーセージをナイフで切って着々と口に運んでいる。厨房で作られてる、ハーブ入りの美味しいやつ。

うん。無理して食べてる感じはしないな。

愛犬の健康管理は飼い主の務めだ。
少し挙動不審ではあるけれど、今日も元気そうな王子を眺めながら朝食を終えた。

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