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【番外編・カルヴァンとの恋愛エンディング】
03 カルヴァン視点
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カルヴァンが『真実の愛が欲しい』と伝えると、メアリーの顔には『理解できない』という表情が浮かんだ。
メアリーが警戒せずに感情を見せてくれただけで、カルヴァンは静かな喜びを感じた。
(まさか、彼女を手に入れる事が出来てしまうとは)
メアリーには『お兄様と呼べば、ハロルド殿下から助けてあげよう』という条件を提示して合意の上で兄妹ごっこをして遊んでいた。
どうしてそんなことを言ったかというと、メアリーの兄であるルーフォスがとても羨ましかったからだ。
長年、愛した女性に、気持ちを伝えた上でバッサリとふられる。そうなるように仕向けたのは、カルヴァンだったが、メアリーのふりっぷりは徹底していた。
それこそ、ほんのわずかな希望すら相手に与えず、見ているこっちが、いっそのこと清々しい気分になったほどだ。
その様子を見ながら、カルヴァンは過去に一度だけ真剣に愛した初恋の女性を思い出していた。
美しかったが、とても卑怯な女だった。『カルヴァン、貴方だけを愛しているわ』と囁きながら、他の男とも距離が近く、何度もカルヴァンを傷つけ裏切った。
(見る目がなかった)
その一言で終わらせるには、カルヴァンは若すぎた。
騎士になり長期演習から戻ると、彼女は別の男の妻になっていた。訳が分からず家に押しかけると、彼女は怯えて夫の影に隠れた。
カルヴァンが「俺と、結婚するって……言っていた、よな?」と、バカみたいな確認すると、彼女は自分ではなく、夫に向かって「知らないわ!」と縋るような視線を送った。
その瞬間に、カルヴァンの中で、何かが音を立てて崩れていったのが分かった。
その後は、ひどく荒れたが、先輩騎士達に「あるあるだ。長期演習中に恋人や妻が浮気! それ、騎士あるある」と背中を叩かれた。その話は聞いていたが、まさか自分の身に起こるなんて思ってもいなかった。
「俺だけは違うと、思っていた……」
「それ、みんな、言うからな」
哀れみの視線を向けられ、「酒だ、酒! 酒飲んで忘れろ!」と連れまわされた。それまで真面目に生きてきたが、その時に酒と女遊びを知った。
知ったと同時に、『男女の関係なんて、こんなものか』と、ひどく冷めていった。
酔っぱらった先輩騎士に「お前、知ってっか? 浮気された奴ら、すげー出世する説。今の団長も昔……な?」と言われ、『確かに、このままでは終われない』と思った。
せめて出世して、あのクソ女に『あっちを選べば良かった』と後悔くらいはさせてやりたかった。
その結果、騎士団長にまでのぼり詰め、王子の右腕になった。仕事の傍ら、女性とは後腐れなく適当に遊んでそれなりに楽しんでいた。
(だが、見つけてしまった)
食事の手を止めたメアリーは、何かを考えているようだった。
「カルヴァン様、本当に実家の伯爵家からの利益は、この結婚に関係ありませんか?」
そう確認されて、カルヴァンは『こんなことなら、さっさと爵位を受け取っておけば良かった』と後悔した。
今までのカルヴァンの騎士としての功績と、ハロルドの腹心という立場から、陛下から『伯爵位を与える』という話が出ていたが、高い爵位を持つと面倒ごとが増えるので、忙しいことを理由に先延ばしにしていた。
「ああ、関係ない。それは、すぐにでも証明しよう」
自分が伯爵になれば、メアリーの心配も消えるだろうと思ったが、メアリーは「では、カルヴァン様のおっしゃる『真実の愛』とは、どういうものなのでしょうか?」と深刻な顔で聞いてきた。
(そういう所が、好きなんだ)
メアリーは今まで出会ってきたどの女性とも違う。
警戒心が強く、したたかなのに、とても誠実に人と向き合おうとしてくれる。今だって、自分が理解できないことを拒絶するのではなく、歩み寄るために質問してくれた。
メアリーは、「私は『真実の愛』どころか、『普通の愛』ですら分かりません。分からないものを求められても困ります」と言いながらため息をついた。
こんな風に自分の意見を隠さず、はっきりと言ってくれる所も好ましい。
(彼女は信頼できる)
もし、他に好きな男が出来たら隠さず話して、いっそのこと清々しいまでにきっぱりとふってくれるだろう。
だからといって、メアリーを初めから妻にしたいと思っていた訳ではなかった。最初は、可愛い妹で満足していた。
ただ、彼女から、もし『助けて欲しい』と言われたら、その時は、妻にしようと決めていた。それがハロルド王子からメアリーを守る一番の方法だったからという理由だが、本当にその方法以外ないのかは考えたことがないので分からない。
メアリーを見ていると、まるで初恋でもしているかのように、心がフワフワと浮き立ってしまう。
必死に隠しているつもりだが、部下から「団長、綺麗な奥さんをもらって嬉しいのは分かりますけど、幸せオーラをまき散らすの、やめてくださいよ……」と苦情を言われてしまうくらいには漏れてしまっているようだ。
そんなことには、まったく気がついていないメアリーは、「どうして、その相手が私なのですか?」と聞いてくる。
青く透き通るような瞳が、まっすぐにこちらを見つめている。美しく可憐なのに、少しも自分の魅力が分かっていない。
(好意を持つなというほうが無理だ)
今ならメアリーに片思いしていたルーフォスの気持ちが痛いほど分かってしまう。
カルヴァンは幸せなため息をついた。
「メアリー。貴女が私のことを何とも思っていないことは分かっている。」
メアリーはここ以外に行く場所はないし、カルヴァン以外に頼れる人もいない。彼女がどこにも逃げられないことを知っていて、カルヴァンは、にこやかに紳士ぶった提案をした。
「だから、これから少しずつお互いのことを知って距離を縮めよう」
メアリーは納得したのか、少しだけ笑ってくれた。
(何年かかってもいい。彼女が私を愛してくれるまで、私は愛を囁き続けるだけだ)
もし、一生、愛してくれなくても、メアリーはどこにもいけない。
(だって、彼女は私の側にいる以外、生き残る方法がないのだから)
その事実に、ひどく安心してしまう。
でもそれは、昔、自分を裏切ったクソ女と同じくらいに、卑怯な考えだということに気がついて、カルヴァンは何とも言えない気分になった。
メアリーが警戒せずに感情を見せてくれただけで、カルヴァンは静かな喜びを感じた。
(まさか、彼女を手に入れる事が出来てしまうとは)
メアリーには『お兄様と呼べば、ハロルド殿下から助けてあげよう』という条件を提示して合意の上で兄妹ごっこをして遊んでいた。
どうしてそんなことを言ったかというと、メアリーの兄であるルーフォスがとても羨ましかったからだ。
長年、愛した女性に、気持ちを伝えた上でバッサリとふられる。そうなるように仕向けたのは、カルヴァンだったが、メアリーのふりっぷりは徹底していた。
それこそ、ほんのわずかな希望すら相手に与えず、見ているこっちが、いっそのこと清々しい気分になったほどだ。
その様子を見ながら、カルヴァンは過去に一度だけ真剣に愛した初恋の女性を思い出していた。
美しかったが、とても卑怯な女だった。『カルヴァン、貴方だけを愛しているわ』と囁きながら、他の男とも距離が近く、何度もカルヴァンを傷つけ裏切った。
(見る目がなかった)
その一言で終わらせるには、カルヴァンは若すぎた。
騎士になり長期演習から戻ると、彼女は別の男の妻になっていた。訳が分からず家に押しかけると、彼女は怯えて夫の影に隠れた。
カルヴァンが「俺と、結婚するって……言っていた、よな?」と、バカみたいな確認すると、彼女は自分ではなく、夫に向かって「知らないわ!」と縋るような視線を送った。
その瞬間に、カルヴァンの中で、何かが音を立てて崩れていったのが分かった。
その後は、ひどく荒れたが、先輩騎士達に「あるあるだ。長期演習中に恋人や妻が浮気! それ、騎士あるある」と背中を叩かれた。その話は聞いていたが、まさか自分の身に起こるなんて思ってもいなかった。
「俺だけは違うと、思っていた……」
「それ、みんな、言うからな」
哀れみの視線を向けられ、「酒だ、酒! 酒飲んで忘れろ!」と連れまわされた。それまで真面目に生きてきたが、その時に酒と女遊びを知った。
知ったと同時に、『男女の関係なんて、こんなものか』と、ひどく冷めていった。
酔っぱらった先輩騎士に「お前、知ってっか? 浮気された奴ら、すげー出世する説。今の団長も昔……な?」と言われ、『確かに、このままでは終われない』と思った。
せめて出世して、あのクソ女に『あっちを選べば良かった』と後悔くらいはさせてやりたかった。
その結果、騎士団長にまでのぼり詰め、王子の右腕になった。仕事の傍ら、女性とは後腐れなく適当に遊んでそれなりに楽しんでいた。
(だが、見つけてしまった)
食事の手を止めたメアリーは、何かを考えているようだった。
「カルヴァン様、本当に実家の伯爵家からの利益は、この結婚に関係ありませんか?」
そう確認されて、カルヴァンは『こんなことなら、さっさと爵位を受け取っておけば良かった』と後悔した。
今までのカルヴァンの騎士としての功績と、ハロルドの腹心という立場から、陛下から『伯爵位を与える』という話が出ていたが、高い爵位を持つと面倒ごとが増えるので、忙しいことを理由に先延ばしにしていた。
「ああ、関係ない。それは、すぐにでも証明しよう」
自分が伯爵になれば、メアリーの心配も消えるだろうと思ったが、メアリーは「では、カルヴァン様のおっしゃる『真実の愛』とは、どういうものなのでしょうか?」と深刻な顔で聞いてきた。
(そういう所が、好きなんだ)
メアリーは今まで出会ってきたどの女性とも違う。
警戒心が強く、したたかなのに、とても誠実に人と向き合おうとしてくれる。今だって、自分が理解できないことを拒絶するのではなく、歩み寄るために質問してくれた。
メアリーは、「私は『真実の愛』どころか、『普通の愛』ですら分かりません。分からないものを求められても困ります」と言いながらため息をついた。
こんな風に自分の意見を隠さず、はっきりと言ってくれる所も好ましい。
(彼女は信頼できる)
もし、他に好きな男が出来たら隠さず話して、いっそのこと清々しいまでにきっぱりとふってくれるだろう。
だからといって、メアリーを初めから妻にしたいと思っていた訳ではなかった。最初は、可愛い妹で満足していた。
ただ、彼女から、もし『助けて欲しい』と言われたら、その時は、妻にしようと決めていた。それがハロルド王子からメアリーを守る一番の方法だったからという理由だが、本当にその方法以外ないのかは考えたことがないので分からない。
メアリーを見ていると、まるで初恋でもしているかのように、心がフワフワと浮き立ってしまう。
必死に隠しているつもりだが、部下から「団長、綺麗な奥さんをもらって嬉しいのは分かりますけど、幸せオーラをまき散らすの、やめてくださいよ……」と苦情を言われてしまうくらいには漏れてしまっているようだ。
そんなことには、まったく気がついていないメアリーは、「どうして、その相手が私なのですか?」と聞いてくる。
青く透き通るような瞳が、まっすぐにこちらを見つめている。美しく可憐なのに、少しも自分の魅力が分かっていない。
(好意を持つなというほうが無理だ)
今ならメアリーに片思いしていたルーフォスの気持ちが痛いほど分かってしまう。
カルヴァンは幸せなため息をついた。
「メアリー。貴女が私のことを何とも思っていないことは分かっている。」
メアリーはここ以外に行く場所はないし、カルヴァン以外に頼れる人もいない。彼女がどこにも逃げられないことを知っていて、カルヴァンは、にこやかに紳士ぶった提案をした。
「だから、これから少しずつお互いのことを知って距離を縮めよう」
メアリーは納得したのか、少しだけ笑ってくれた。
(何年かかってもいい。彼女が私を愛してくれるまで、私は愛を囁き続けるだけだ)
もし、一生、愛してくれなくても、メアリーはどこにもいけない。
(だって、彼女は私の側にいる以外、生き残る方法がないのだから)
その事実に、ひどく安心してしまう。
でもそれは、昔、自分を裏切ったクソ女と同じくらいに、卑怯な考えだということに気がついて、カルヴァンは何とも言えない気分になった。
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