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【番外編・カルヴァンとの恋愛エンディング】
04 訳の分からない幸せ
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カルヴァンと結婚してから、あっと言う間に三か月がたった。
その日々の中で、カルヴァンのいう『真実の愛』がどういうものなのか、メアリーは何となく分かったような気がした。
(カルヴァンのいう『真実の愛』って、ようするに家族愛のことなのね)
カルヴァンとの結婚生活を一言で表すなら『穏やかな日々』だった。カルヴァンに仕えるナイトレイ家の使用人は、みんな礼儀正しくとても温かい。
メアリー専属メイドのラナや他のメイド達も、良くしてもらっているようなので、居心地がよくて仕方ない。
(誰も嫌なことをしないし、ご飯も美味しいし、文句が一つもないわ)
しかも、カルヴァンが「我が家は騎士家系なので、社交をしなくていい。むしろ、しないでくれ」と言っていたので、社交会やお茶会には一切参加していない。
公の場に出なければ、カルヴァンの遊び相手の女性達と会うこともない。
(結婚前は、知らない女性にいきなりビンタされて『貴女にカルヴァンは相応しくないわ!』とか言われる覚悟をしていたんだけどね……)
そんな未来が来ないことにホッとしてしまう。
仕事に忙しそうなカルヴァンも、休みの日はのんびりと一緒に過ごしてくれるし、長く帰れないときは、贈り物まで送ってくれる。
(家族として、すごく大切にしてくれているって感じがするわ)
窓の外が騒がしくなった。カルヴァンが帰って来たのかもしれない。メアリーは嬉しくなって部屋から飛び出した。急いで階段を下りると、玄関ホールでカルヴァンを見つけた。
「お帰りなさい」
嬉しくなって飛びつくと、カルヴァンは優しく抱きしめてくれた。
「ただいま、メアリー」
この腕の中にいると、全ての危険から守られているような気がして、つい甘えてしまう。そして、カルヴァンもまるで妹を溺愛する兄のように、盛大に甘やかしてくれる。
(もし、メアリーを愛してくれる家族がいたら、こんな感じだったのかしら?)
カルヴァンに助けを求めたことは、人生で最高の選択肢だったのかもしれない。
(きっとカルヴァンも家族が欲しかったのね。私は女として見られていないし、本当の奥さんじゃないけど、それでもすごく幸せだわ)
カルヴァンの胸板に顔を押し当てながら、「カルヴァン、ありがとう。大好き」と感謝の気持ちを伝えた。なぜかピタリと動きを止めたカルヴァンに、「メアリー、今、なんて?」と聞き返される。
「貴方と結婚出来て、私、本当に幸せなの」
「ああ、私もだ。それで、その後はなんて言った?」
「ありがとう?」
「その後だ」
なぜか真剣な表情でカルヴァンに両肩をつかまれた。
「その後って、えっと、大好き?」
「それだ! それは、その……本当に?」
いったい何の確認をされているのか分からない。
「もちろん、本当よ。大好きに決まっているじゃない。大好きよ、カルヴァン」
そう伝えたとたんに、メアリーの身体が宙に浮いた。悲鳴と共にカルヴァンにしがみつくと、お姫様抱っこをされていた。
「え? カルヴァン?」
カルヴァンが「私が呼ぶまで、部屋に誰も近づけるな」と言うと、なぜかナイトレイ家の使用人達が「もちろんです!」と答えた後に「おめでとうございます!」と満面の笑みで拍手をした。
事情が分からないラナ達が「メアリー様?」と戸惑っている。メアリーも訳が分からなかったが、カルヴァンに危害を加えられる訳がないと思い「大丈夫よ」と伝えておいた。
そのまま、お姫様抱っこをされて寝室へと運ばれた。
「メアリー、愛している」と囁くカルヴァンには、いつもの大人な余裕がない。
「私も、大好きよ。愛している……けど……?」
「けど?」
「えっと、今はどういう状況なの?」
カルヴァンに優しく手をつかまれると、手のひらにキスされた。
「メアリーと私が、ようやく両想いになれたところだが?」と、にっこりと爽やかに微笑まれてしまう。
「両想い? ……両想い!? えっ、カルヴァンって私のこと、好きだったの?」
驚いて尋ねると、何を今さらと逆に驚かれた。
「あれほど、顔を合わせるたびに『愛している』と伝えていたのに?」
「それは、その、家族愛的なものかと……。だって、私に何もしなかったから……」
「同意もないのに、愛するメアリーに手を出すわけがない」
そういえば、カルヴァンには、『同意がない女性には手を出さない』というキャラ設定があったような気がする。
「じゃ、じゃあ、今からは……?」
カルヴァンは、何も返事をしない代わりに、にっこりと爽やかに微笑んだ。拒まなかったメアリーは、大人な世界を知ることになった。
数日後。
木漏れ日の下で、ピクニックシートを引いて、カルヴァンとメアリーはのんびりと過ごしていた。カルヴァンがあくびをしたので、膝枕をしてあげる。
膝の上で幸せそうに眼を閉じているカルヴァンの頬を、メアリーが指でつつくとカルヴァンはゆっくりと目を開けた。
「なんだ?」
「ねぇ、いつから私のことが好きだったの?」
「さぁ、いつからだろうな?」
「え? もしかして、結婚する前からなの?」
「そうかもな」
カルヴァンはクスクスと笑っている。
「全然気がつかなかったわ。ねぇ、私がずっと同意しなかったら、どうするつもりだったの?」
不思議そうな顔をしたカルヴァンは「別に?」と答えた。
「メアリーが側にいるだけで幸せだから、少しも問題ない」
外見だけは誠実そうな残念な騎士様は、いつの間にか中身まで誠実な理想の騎士様になっている。
「訳が分からないわ」
「分からなくていい。ただ、私がメアリーを愛しているというだけだから」
訳が分からないまま、生涯にわたってカルヴァンに大切にされ愛され続けたメアリーは、晩年になって「未だに訳が分からないけど、分からなくても、私はとっても幸せだわ」とよく笑っていたという。
ハッピーエンド
その日々の中で、カルヴァンのいう『真実の愛』がどういうものなのか、メアリーは何となく分かったような気がした。
(カルヴァンのいう『真実の愛』って、ようするに家族愛のことなのね)
カルヴァンとの結婚生活を一言で表すなら『穏やかな日々』だった。カルヴァンに仕えるナイトレイ家の使用人は、みんな礼儀正しくとても温かい。
メアリー専属メイドのラナや他のメイド達も、良くしてもらっているようなので、居心地がよくて仕方ない。
(誰も嫌なことをしないし、ご飯も美味しいし、文句が一つもないわ)
しかも、カルヴァンが「我が家は騎士家系なので、社交をしなくていい。むしろ、しないでくれ」と言っていたので、社交会やお茶会には一切参加していない。
公の場に出なければ、カルヴァンの遊び相手の女性達と会うこともない。
(結婚前は、知らない女性にいきなりビンタされて『貴女にカルヴァンは相応しくないわ!』とか言われる覚悟をしていたんだけどね……)
そんな未来が来ないことにホッとしてしまう。
仕事に忙しそうなカルヴァンも、休みの日はのんびりと一緒に過ごしてくれるし、長く帰れないときは、贈り物まで送ってくれる。
(家族として、すごく大切にしてくれているって感じがするわ)
窓の外が騒がしくなった。カルヴァンが帰って来たのかもしれない。メアリーは嬉しくなって部屋から飛び出した。急いで階段を下りると、玄関ホールでカルヴァンを見つけた。
「お帰りなさい」
嬉しくなって飛びつくと、カルヴァンは優しく抱きしめてくれた。
「ただいま、メアリー」
この腕の中にいると、全ての危険から守られているような気がして、つい甘えてしまう。そして、カルヴァンもまるで妹を溺愛する兄のように、盛大に甘やかしてくれる。
(もし、メアリーを愛してくれる家族がいたら、こんな感じだったのかしら?)
カルヴァンに助けを求めたことは、人生で最高の選択肢だったのかもしれない。
(きっとカルヴァンも家族が欲しかったのね。私は女として見られていないし、本当の奥さんじゃないけど、それでもすごく幸せだわ)
カルヴァンの胸板に顔を押し当てながら、「カルヴァン、ありがとう。大好き」と感謝の気持ちを伝えた。なぜかピタリと動きを止めたカルヴァンに、「メアリー、今、なんて?」と聞き返される。
「貴方と結婚出来て、私、本当に幸せなの」
「ああ、私もだ。それで、その後はなんて言った?」
「ありがとう?」
「その後だ」
なぜか真剣な表情でカルヴァンに両肩をつかまれた。
「その後って、えっと、大好き?」
「それだ! それは、その……本当に?」
いったい何の確認をされているのか分からない。
「もちろん、本当よ。大好きに決まっているじゃない。大好きよ、カルヴァン」
そう伝えたとたんに、メアリーの身体が宙に浮いた。悲鳴と共にカルヴァンにしがみつくと、お姫様抱っこをされていた。
「え? カルヴァン?」
カルヴァンが「私が呼ぶまで、部屋に誰も近づけるな」と言うと、なぜかナイトレイ家の使用人達が「もちろんです!」と答えた後に「おめでとうございます!」と満面の笑みで拍手をした。
事情が分からないラナ達が「メアリー様?」と戸惑っている。メアリーも訳が分からなかったが、カルヴァンに危害を加えられる訳がないと思い「大丈夫よ」と伝えておいた。
そのまま、お姫様抱っこをされて寝室へと運ばれた。
「メアリー、愛している」と囁くカルヴァンには、いつもの大人な余裕がない。
「私も、大好きよ。愛している……けど……?」
「けど?」
「えっと、今はどういう状況なの?」
カルヴァンに優しく手をつかまれると、手のひらにキスされた。
「メアリーと私が、ようやく両想いになれたところだが?」と、にっこりと爽やかに微笑まれてしまう。
「両想い? ……両想い!? えっ、カルヴァンって私のこと、好きだったの?」
驚いて尋ねると、何を今さらと逆に驚かれた。
「あれほど、顔を合わせるたびに『愛している』と伝えていたのに?」
「それは、その、家族愛的なものかと……。だって、私に何もしなかったから……」
「同意もないのに、愛するメアリーに手を出すわけがない」
そういえば、カルヴァンには、『同意がない女性には手を出さない』というキャラ設定があったような気がする。
「じゃ、じゃあ、今からは……?」
カルヴァンは、何も返事をしない代わりに、にっこりと爽やかに微笑んだ。拒まなかったメアリーは、大人な世界を知ることになった。
数日後。
木漏れ日の下で、ピクニックシートを引いて、カルヴァンとメアリーはのんびりと過ごしていた。カルヴァンがあくびをしたので、膝枕をしてあげる。
膝の上で幸せそうに眼を閉じているカルヴァンの頬を、メアリーが指でつつくとカルヴァンはゆっくりと目を開けた。
「なんだ?」
「ねぇ、いつから私のことが好きだったの?」
「さぁ、いつからだろうな?」
「え? もしかして、結婚する前からなの?」
「そうかもな」
カルヴァンはクスクスと笑っている。
「全然気がつかなかったわ。ねぇ、私がずっと同意しなかったら、どうするつもりだったの?」
不思議そうな顔をしたカルヴァンは「別に?」と答えた。
「メアリーが側にいるだけで幸せだから、少しも問題ない」
外見だけは誠実そうな残念な騎士様は、いつの間にか中身まで誠実な理想の騎士様になっている。
「訳が分からないわ」
「分からなくていい。ただ、私がメアリーを愛しているというだけだから」
訳が分からないまま、生涯にわたってカルヴァンに大切にされ愛され続けたメアリーは、晩年になって「未だに訳が分からないけど、分からなくても、私はとっても幸せだわ」とよく笑っていたという。
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