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【番外編・ルーフォスとの恋愛エンディング】
01 ラナと逃げようとする
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--もしも、物語の途中で、メアリーが逃亡しようとしていたら……?
※ルーフォス恋愛ルートを元に設定を変えて手直ししています。
**
(このまま神殿にいたら、いつか殺されてしまうわ)
メアリーは生き残るためにラナと二人で逃げる覚悟を決めた。逃走のための資金は、エイベルがくれた大量のアクセサリーやドレスを売ればどうにかなるだろう。
本当に換金できるのか知るために、ラナにお願いして事前に少しだけ換金してもらった。
ラナは商家の娘だからか、こういう仕事をとてもスムーズにこなしてくれる。
(あとは、変装のための服がいるわね)
エイベルが買ってくれたドレスは、どれも高級すぎて目立ってしまう。
逃走準備のためにメアリーが神殿に「街に買い物へ行きたいです」と申請すると、神殿はメアリーに二人の護衛をつけた。彼らは神殿に仕えている兵士のようだ。
(護衛が聖騎士じゃなくて良かった……)
メアリーは神殿が用意してくれた馬車に揺られながら、そんなことを考えていた。向かいの席ではラナが嬉しそうにニコニコしている。
「買い物が好きなの?」と、訊ねるとラナは瞳をキラキラさせながら「いいえ、お嬢様とお出かけできるのが嬉しくって」と頬を染める。
その言葉を聞いて『ラナには幸せになって欲しい』とメアリーは思った。
(私と一緒に逃げることがラナの幸せになるかしら?)
ラナの幸せを本当に願うなら、逃げるべきではないのかもしれない。答えが出ないまま、馬車は大通りへとたどり着いた。
「お嬢様、何を買いますか?」
嬉しそうなラナに「庶民的な服が欲しいの」と伝えると、「でしたら、おススメのお店がありますよ!」と案内してくれる。
ラナが連れて来てくれた店は、庶民的だがほどよく品が良い服が並んでいた。
(こういうお店を知っているってことは、ラナってやっぱりお嬢様なのね)
白やピンクのワンピースを勧めてくれるラナの提案を優しく断って、メアリーは紺色のワンピースを一枚買って、そのワンピースに着替えた。
鏡を見てほどよく地味なワンピースに満足する。ラナが後ろで「お嬢様は何を着てもお似合いですね!」と褒めてくれる。
店員に「これ、いただくわ」と伝えると、面白いことを教えてくれた。
「ただいま、当店でご購入のお客様にサービスで、髪の色を変える魔法をかけています。どうですか?」
「髪の色を変えられるの?」
店員が言うには、貴族はお忍びデートの際などに、髪や瞳の色を魔法で変えて変装するそうだ。
「もちろん、魔法はかけられないんですが、簡易的に髪色を変えられる魔道具があるんですよ。まぁ、本物の魔法に比べたら、これはお遊びのおもちゃみたいなもので、数十分で元に戻っちゃいますが」
「おもちゃでも良いわ。やってみて」
店員は「はいはい」というと「何色にしたいですか?」と聞いた。
「ブラウン」
この世界で一番多い髪色を伝えると店員はその通りにしてくれた。鏡にうつるメアリーは、パッと見、別人に見える。
(これ、いいわね! 逃走するときに使える)
メアリーが「これ、どこで売っているの?」と聞くと、店員は「広場の隅にある雑貨で買えますよ」と教えてくれた。
「ありがとう。このワンピースは着たまま行くわ」
「では、先ほどまで着てらっしゃっていたワンピースを袋にお入れしますね」
店員から袋を受け取ったラナは「次は雑貨屋ですね! 広場はこっちです」と言いながら案内してくれる。
先ほど買った紺色のワンピースを着て、髪の色を変えたせいか、お店の入り口で待っていた護衛兵士達は、メアリーに気がつかなかった。
(すごいわ。これなら、本当に逃げられるかも!?)
メアリーは護衛兵士の横を静かに通り過ぎると、ラナと二人で広場に向かった。ラナは案内することに一生懸命で護衛兵士がついて来ていないことに気がついていない。
案内された雑貨店は、大人気のようで外にまで行列ができていた。
「これは……買うのは大変そうね」
「私が並んで買ってきます! お嬢様は、ここのベンチに座って待っていてくださいね!」
「あ、ちょっと、ラナ!」
メアリーの制止も聞かずにラナは走って行ってしまった。お役に立ちたくて仕方がないといった感じだ。仕方がないのでメアリーは広場の隅にあったベンチに座った。
やることもないので、ぼんやりと空を見上げていると「う」と苦しそうな声が聞こえた。辺りを見回しても誰も苦しんでいない。
「ううっ」
また苦しそうな声が聞こえた。
(後ろ?)
メアリーがベンチの後ろを見ると、細い路地があった。ベンチから立ち上がり、そっと路地を覗いてみると、男性がしゃがみ込んで苦しそうな声を出している。
(どうしよう……声をかける? 無視する?)
危ないことはできるだけしたくない。メアリーが『見なかったことにしよう』と思ったとたんに、男性が地面に倒れた。
「ちょっと、大丈夫ですか!?」
驚いてとっさに声をかけてしまった。男性はゆっくりと顔を上げる。綺麗な金髪が汗で額に貼りつき、うつろな青い瞳がメアリーを見つめている。その青ざめていても端正な顔立ちをメアリーは良く知っていた。
(ルーフォス!?)
名前を呼びそうになって、慌てて手で自分の口を押えた。
(私は今、変装しているからこのまま立ち去ったら、ルーフォスは気が付かないはず)
こちらを見つめていたルーフォスの瞳が大きく見開かれた。
(まずい、気づかれた!?)
逃げようと後ずさりするメアリーを見て、ルーフォスは慌てて起き上がった。
「君、ちょっと、待って……」
メアリーを見つめる青い瞳が、少しずつキラキラと輝きだす。
「お願いだから、待ってくれ! 俺は怪しいものじゃない!」
メアリーが逃げようと背を向けると、具合が悪いはずなのにルーフォスは素早く立ち上がり腕をつかまれた。
「お願いだ。君の名前を教えて欲しい」
懇願するような声でそんなことを言ってきた。ルーフォスの瞳は怖いくらい真剣で頬が赤い。
(これって……まさか……私に振られた後に、私に似た子を見つけて、運命を感じちゃってるとか……ないよね?)
切ないくらいに真剣なルーフォスを見て、メアリーの嫌な予感は膨らんでいく。
ルーフォスは身なりを整えながら、「昨日は、同僚に無理やり飲まされたんだ。いつもこんな訳ではなくて……その」と必死に言い訳をしている。そういえば、カルヴァンが『失恋を忘れるには飲んで騒ぐのがいい』と言っていたような気がする。
(無理やり飲ませた同僚ってカルヴァンよね。飲ませて潰すなら最後まで面倒みてあげなさいよ!)
真面目なルーフォスは、きっと酔い潰れたことはない。
「あの、その、どうか君の名前を教えて欲しい」
そして、きっとこんな風に女性をナンパしたこともないだろう。その証拠に、「こういうときは、どうすればいいんだ?」と呟き、頬を赤く染めながら歯を食いしばっている。
(ルーフォスには私を忘れて新しい恋でもして欲しいって思っていたけど、新しい恋の相手が変装した私って……)
何とも言えない気持ちになってメアリーはため息をついた。
ルーフォスは気まずそうに、こちらの返事を待っている。その瞳は真剣そのものだ。
(もし、ここで私が逃げたら、ルーフォスは死ぬ気で変装した私を探し続ける)
ルーフォスは、良く言えば一途で、悪く言えば執念深い。
メアリーは諦めて口を開いた。
「……お兄様」
ルーフォスがピタリと固まった。
「お兄様、私です。メアリーです」
しばらく呆然とした後に、言葉の意味を理解したルーフォスの顔が苦痛に歪んだ。その後に、自嘲するように笑みが浮かぶ。
(何も言えない。私は彼を傷つけることしかできない)
ルーフォスのことをずっと恨んでいたし、傷つけたいと思っていた。だから、それが達成した瞬間は爽快だった。
ただ、こんな風に何度も苦しめたいとまでは今は思わない。
ルーフォスに「なんだ、その恰好は?」と暗い声で尋ねられた。
「別に……。今、こういうのが流行っているそうですよ」
「別人に見えたぞ」
ルーフォスが「もしかしてお前……逃げる気か?」と呟いたので、ビクッと身体が震えてしまう。
「逃げる気なんだな!?」
腕をつかまれ詰め寄られる。
「逃げません!」
「じゃあなぜ今、怯えた!?」
「あ、貴方が怖いからです! 私が逃げられる場所なんてないの知っているでしょう!?」
少し黙り込んだ後に、ルーフォスは「……逃げる場所が欲しいのか?」と聞いた。
「何を……?」
「欲しいのかと聞いている」
「それは……欲しいに決まっています! 私は聖女になんてなれません! 痛いのも、つらいのも、苦しいのも、もう嫌! 穏やかに生きたいんです! だから、私のことは、ほっておいてください!」
乱暴にルーフォスの手を振りほどくと、ルーフォスは暗い目をした。
「メアリー、もし俺がお前の望む『逃げる場所』を与えたら……お前は……」
ルーフォスは最後まで言葉を言わず、何かを考えるような仕草をした後に、さっさとその場を去った。
「な、何なの……あいつ……?」
メアリーが呆然と立ち尽くしていると、ラナが戻ってきた。
「お嬢様……申し訳ありません。売り切れでした……」
ついさっきまでルーフォスにいらついていたのに、しょんぼりするラナを見ると、すぐにいらつきが消えてしまう。
「そうなのね。ありがとう。じゃあ、美味しいものでも食べて帰りましょう」
ラナと美味しいものを食べてから神殿に戻ると、メアリーは数日間、逃げる計画をたてながら大人しく神殿で過ごした。
あの日から、ルーフォスには一度も会っていない。
※ルーフォス恋愛ルートを元に設定を変えて手直ししています。
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(このまま神殿にいたら、いつか殺されてしまうわ)
メアリーは生き残るためにラナと二人で逃げる覚悟を決めた。逃走のための資金は、エイベルがくれた大量のアクセサリーやドレスを売ればどうにかなるだろう。
本当に換金できるのか知るために、ラナにお願いして事前に少しだけ換金してもらった。
ラナは商家の娘だからか、こういう仕事をとてもスムーズにこなしてくれる。
(あとは、変装のための服がいるわね)
エイベルが買ってくれたドレスは、どれも高級すぎて目立ってしまう。
逃走準備のためにメアリーが神殿に「街に買い物へ行きたいです」と申請すると、神殿はメアリーに二人の護衛をつけた。彼らは神殿に仕えている兵士のようだ。
(護衛が聖騎士じゃなくて良かった……)
メアリーは神殿が用意してくれた馬車に揺られながら、そんなことを考えていた。向かいの席ではラナが嬉しそうにニコニコしている。
「買い物が好きなの?」と、訊ねるとラナは瞳をキラキラさせながら「いいえ、お嬢様とお出かけできるのが嬉しくって」と頬を染める。
その言葉を聞いて『ラナには幸せになって欲しい』とメアリーは思った。
(私と一緒に逃げることがラナの幸せになるかしら?)
ラナの幸せを本当に願うなら、逃げるべきではないのかもしれない。答えが出ないまま、馬車は大通りへとたどり着いた。
「お嬢様、何を買いますか?」
嬉しそうなラナに「庶民的な服が欲しいの」と伝えると、「でしたら、おススメのお店がありますよ!」と案内してくれる。
ラナが連れて来てくれた店は、庶民的だがほどよく品が良い服が並んでいた。
(こういうお店を知っているってことは、ラナってやっぱりお嬢様なのね)
白やピンクのワンピースを勧めてくれるラナの提案を優しく断って、メアリーは紺色のワンピースを一枚買って、そのワンピースに着替えた。
鏡を見てほどよく地味なワンピースに満足する。ラナが後ろで「お嬢様は何を着てもお似合いですね!」と褒めてくれる。
店員に「これ、いただくわ」と伝えると、面白いことを教えてくれた。
「ただいま、当店でご購入のお客様にサービスで、髪の色を変える魔法をかけています。どうですか?」
「髪の色を変えられるの?」
店員が言うには、貴族はお忍びデートの際などに、髪や瞳の色を魔法で変えて変装するそうだ。
「もちろん、魔法はかけられないんですが、簡易的に髪色を変えられる魔道具があるんですよ。まぁ、本物の魔法に比べたら、これはお遊びのおもちゃみたいなもので、数十分で元に戻っちゃいますが」
「おもちゃでも良いわ。やってみて」
店員は「はいはい」というと「何色にしたいですか?」と聞いた。
「ブラウン」
この世界で一番多い髪色を伝えると店員はその通りにしてくれた。鏡にうつるメアリーは、パッと見、別人に見える。
(これ、いいわね! 逃走するときに使える)
メアリーが「これ、どこで売っているの?」と聞くと、店員は「広場の隅にある雑貨で買えますよ」と教えてくれた。
「ありがとう。このワンピースは着たまま行くわ」
「では、先ほどまで着てらっしゃっていたワンピースを袋にお入れしますね」
店員から袋を受け取ったラナは「次は雑貨屋ですね! 広場はこっちです」と言いながら案内してくれる。
先ほど買った紺色のワンピースを着て、髪の色を変えたせいか、お店の入り口で待っていた護衛兵士達は、メアリーに気がつかなかった。
(すごいわ。これなら、本当に逃げられるかも!?)
メアリーは護衛兵士の横を静かに通り過ぎると、ラナと二人で広場に向かった。ラナは案内することに一生懸命で護衛兵士がついて来ていないことに気がついていない。
案内された雑貨店は、大人気のようで外にまで行列ができていた。
「これは……買うのは大変そうね」
「私が並んで買ってきます! お嬢様は、ここのベンチに座って待っていてくださいね!」
「あ、ちょっと、ラナ!」
メアリーの制止も聞かずにラナは走って行ってしまった。お役に立ちたくて仕方がないといった感じだ。仕方がないのでメアリーは広場の隅にあったベンチに座った。
やることもないので、ぼんやりと空を見上げていると「う」と苦しそうな声が聞こえた。辺りを見回しても誰も苦しんでいない。
「ううっ」
また苦しそうな声が聞こえた。
(後ろ?)
メアリーがベンチの後ろを見ると、細い路地があった。ベンチから立ち上がり、そっと路地を覗いてみると、男性がしゃがみ込んで苦しそうな声を出している。
(どうしよう……声をかける? 無視する?)
危ないことはできるだけしたくない。メアリーが『見なかったことにしよう』と思ったとたんに、男性が地面に倒れた。
「ちょっと、大丈夫ですか!?」
驚いてとっさに声をかけてしまった。男性はゆっくりと顔を上げる。綺麗な金髪が汗で額に貼りつき、うつろな青い瞳がメアリーを見つめている。その青ざめていても端正な顔立ちをメアリーは良く知っていた。
(ルーフォス!?)
名前を呼びそうになって、慌てて手で自分の口を押えた。
(私は今、変装しているからこのまま立ち去ったら、ルーフォスは気が付かないはず)
こちらを見つめていたルーフォスの瞳が大きく見開かれた。
(まずい、気づかれた!?)
逃げようと後ずさりするメアリーを見て、ルーフォスは慌てて起き上がった。
「君、ちょっと、待って……」
メアリーを見つめる青い瞳が、少しずつキラキラと輝きだす。
「お願いだから、待ってくれ! 俺は怪しいものじゃない!」
メアリーが逃げようと背を向けると、具合が悪いはずなのにルーフォスは素早く立ち上がり腕をつかまれた。
「お願いだ。君の名前を教えて欲しい」
懇願するような声でそんなことを言ってきた。ルーフォスの瞳は怖いくらい真剣で頬が赤い。
(これって……まさか……私に振られた後に、私に似た子を見つけて、運命を感じちゃってるとか……ないよね?)
切ないくらいに真剣なルーフォスを見て、メアリーの嫌な予感は膨らんでいく。
ルーフォスは身なりを整えながら、「昨日は、同僚に無理やり飲まされたんだ。いつもこんな訳ではなくて……その」と必死に言い訳をしている。そういえば、カルヴァンが『失恋を忘れるには飲んで騒ぐのがいい』と言っていたような気がする。
(無理やり飲ませた同僚ってカルヴァンよね。飲ませて潰すなら最後まで面倒みてあげなさいよ!)
真面目なルーフォスは、きっと酔い潰れたことはない。
「あの、その、どうか君の名前を教えて欲しい」
そして、きっとこんな風に女性をナンパしたこともないだろう。その証拠に、「こういうときは、どうすればいいんだ?」と呟き、頬を赤く染めながら歯を食いしばっている。
(ルーフォスには私を忘れて新しい恋でもして欲しいって思っていたけど、新しい恋の相手が変装した私って……)
何とも言えない気持ちになってメアリーはため息をついた。
ルーフォスは気まずそうに、こちらの返事を待っている。その瞳は真剣そのものだ。
(もし、ここで私が逃げたら、ルーフォスは死ぬ気で変装した私を探し続ける)
ルーフォスは、良く言えば一途で、悪く言えば執念深い。
メアリーは諦めて口を開いた。
「……お兄様」
ルーフォスがピタリと固まった。
「お兄様、私です。メアリーです」
しばらく呆然とした後に、言葉の意味を理解したルーフォスの顔が苦痛に歪んだ。その後に、自嘲するように笑みが浮かぶ。
(何も言えない。私は彼を傷つけることしかできない)
ルーフォスのことをずっと恨んでいたし、傷つけたいと思っていた。だから、それが達成した瞬間は爽快だった。
ただ、こんな風に何度も苦しめたいとまでは今は思わない。
ルーフォスに「なんだ、その恰好は?」と暗い声で尋ねられた。
「別に……。今、こういうのが流行っているそうですよ」
「別人に見えたぞ」
ルーフォスが「もしかしてお前……逃げる気か?」と呟いたので、ビクッと身体が震えてしまう。
「逃げる気なんだな!?」
腕をつかまれ詰め寄られる。
「逃げません!」
「じゃあなぜ今、怯えた!?」
「あ、貴方が怖いからです! 私が逃げられる場所なんてないの知っているでしょう!?」
少し黙り込んだ後に、ルーフォスは「……逃げる場所が欲しいのか?」と聞いた。
「何を……?」
「欲しいのかと聞いている」
「それは……欲しいに決まっています! 私は聖女になんてなれません! 痛いのも、つらいのも、苦しいのも、もう嫌! 穏やかに生きたいんです! だから、私のことは、ほっておいてください!」
乱暴にルーフォスの手を振りほどくと、ルーフォスは暗い目をした。
「メアリー、もし俺がお前の望む『逃げる場所』を与えたら……お前は……」
ルーフォスは最後まで言葉を言わず、何かを考えるような仕草をした後に、さっさとその場を去った。
「な、何なの……あいつ……?」
メアリーが呆然と立ち尽くしていると、ラナが戻ってきた。
「お嬢様……申し訳ありません。売り切れでした……」
ついさっきまでルーフォスにいらついていたのに、しょんぼりするラナを見ると、すぐにいらつきが消えてしまう。
「そうなのね。ありがとう。じゃあ、美味しいものでも食べて帰りましょう」
ラナと美味しいものを食べてから神殿に戻ると、メアリーは数日間、逃げる計画をたてながら大人しく神殿で過ごした。
あの日から、ルーフォスには一度も会っていない。
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