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第九話 命の瀬戸際
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3日後に修学旅行を控えている私。
優奈と部屋は一緒にはできなかったけど、行動班が一緒だからとても楽しみにしている。
そして、優奈と二人でショッピングモールに来ていた。将来複数の犬を飼いたいと思っていた私だが、私にはできないだろう。
夜遅くになり、優奈と現地で解散した。後、自転車を漕いで家に帰ろうとしていたところだった。何かくらくらしてきた。意識が遠のいていく。心臓が痛い。
「バタン!」呼吸もなくなりそうだ。
私はなにも見えない畑に自転車と一緒に倒れてしまった。水が張られていたので、落ちた時の
「バッシャーーン!!」
と言う水の音は耳に焼き付けていた。楽しいと思っていた私の生活がこんな形で終わるなんて。私は悲しかった。
サイレンの音が聞こえる。目が覚めた。
あの頃と同じ病院にいた。
「また倒れたの私。」
「また意識が飛んだ。」
ドアからお母さんとあの頃と同じ医師が入ってきた。医師が同じがどうかは顔で覚えていたからだ。
私は安心した。死んでない。
私は死んでないんだって。
「由香里・・・.」
「ごめんね。お母さんまたこんなことになっちゃって。」お母さんはなにも言えなかった。
「あの。由香里さんと二人きりでお話がしたいので、お母さんは外で待ってて貰えますか。」
「はい。」お母さんは寂しそうに病室を後にした。
「由香里さん。あなたの体を検査しました。
ついに来てしまいましたよ。」
医師は悲しそうに私に言ってくれた。
「あれですよね。」
「はい・・・。余命宣告が来てしまいました。」
「覚悟はしてましたが、こんなに早く来てしまうなんて信じられません。5年足らずで。」
「心臓の状態は現状問題ないのですが、急に容態が悪くなってしまうこともあり得ます。言うのは申し訳ないですが、1週間以内になくなってしまいます。あなたの存在が。」
この時が来てしまった。来ることはわかっているのに悲しい。命が惜しいよ。いじめが完全に終息してこれから新しい人生を歩んでいこうと思っていたのに。
「あの、3日後修学旅行に行くんですけど、間に合いますか。」
「ちなみに何日間行くんですか。」
「4日です。」
このことに悩まされる医師。現地まで行きたいところは山々だが行くことはできない。
「多分ですが、修学旅行が終わるまでに、間に合うかどうかは分かりません。」
私は久しぶりに涙の味がした。すると私の視線に医師の名札があった。
「下村 悠太」と書いてあった。
「下村さん。あの私どうしても修学旅行に行きたいんです。どうすれば旅行に行けますか?友達ができたばっかりで、その子と一緒に最期を送りたいんです。」
「お母さんの同行はできないかな?」
「本当はしてもらいたいですけど、多分無理だと思います。」
二人が話している時にドアが開いた。
「由香里!大丈夫?」聞いたことがある声だ。
優奈と悠木先生とお母さんが入ってきた。
「あれ?お父さん?」
「優奈!」
やはり予感が的中した。
この医師の先生は優奈のお父さんだったんだ。
ということは、5年前のあの時に既に会っていたということか。
「大丈夫よ。なんで知ってるの?それに先生まで。」
「先生が電話してくれたの。」
私が倒れてからお母さんが夜遅くに帰ってこないことを心配し学校に電話しても学校におらず、近所を探していたら倒れている私を見つけて病院に連絡してくれたのだ。お母さんの電話を聞いて心配した悠木先生は、放課後に私と優奈が二人でどこかに行くと言うことを偶然聞いてしまったため、優奈に連絡したが私の安否が取れず、二回目のお母さんからの電話で優奈と一緒に急いで病院に向かったと言う経緯だった。
「私もすごく驚いたのよ。帰り道歩いてたら、急に電話がかかってきて。」
「優奈か?由香里が病院に搬送された。至急来て欲しいって。」
「はい。すぐに向かいます。
2回も電話してくれたからそこまでひどいのかなと思って悠木先生と一緒に病院まできたの。」
「いやーよかった。先生が帰ろうとした時に電話が来たからさー。後もう少し遅かったらきてなかったかもよ。残業しておいてよかった。」
すごいチームワークじゃないけど結束力の高さに驚いた。
「お母さん。ありがとう。」
「ううん。全ては先生と優奈さんのおかげだよ。ありがとね。」
「あれ?お母さん優奈を知ってるの?」
「今さっき知り合ったの。」
優奈と先生が来た時にお母さんは椅子に座っていた。
「由香里のお母さんですよね?」と先生が聞いた。
「はい。」
「娘さんが病院に運ばれたと言うことを連絡していただいてありがとうございます。」
「初めまして。由香里の友達の優奈です。」
「あなたが由香里の友達なのね!」
私はお母さんに友達がいることは話したけど、名前は言っていなかったため、初対面となった。
「いつもありがとう。娘からは色々と聞いてるよ。」
「いいえ。そんなことないですよ。由香里のは学校で私と楽しく話しているので毎日楽しくやってますよ。」
三人での話は案外盛り上がった。私を待っててくれたのだ。
「話は終わりました。あとは娘さんの様子を見ていてください。僕もここで座ってずっと見ていますね。」
「わかりました。」
「お父さんありがとう。」
「まさか信じられなかったよ。優奈の友達がまさか僕の患者だったとは。」
すると悠木先生は修学旅行について話した。
「修学旅行は行けそう?」
「3日あるので、それまでには治ると思います。迷惑かけてすみません。」
「いや、そんなこと思わなくていいよ。で、お医者さんとは何を話してたの?」
「この話行ってもいいんですか。」
「いいよ。」
「私、実は余命宣告を受けててね。」
すると、驚愕の真実にお母さんは泣き崩れた。
「まさかあなたまでいなくなるなんて。」
「お母さん。お気は確かに。ですが最後まで話を聞いてあげましょう。」先生が慰めてくれた。
「ちなみに余命宣告は何年なの?」
「私が11歳の時に妹とお父さんを亡くしたあと、退院する時に医者、優奈のお父さんに言われたんです。」
「もう余命宣告が来ている。最長でも10年だけど、もしかしたら時間が早まって5年以内になるかもしれないって。」みんなは優奈のお父さんを鋭い目で見た。
「何で言ってくれなかったんですか!?」
お母さんは優奈のお父さんの胸ぐらを掴んだ。
すごく怯えていた。
「やめて、お母さん。私が言わないでってお願いしたの。」
「何で?」
「もしあの時このことを言ってたら、お母さんは普通じゃなくなってたと思うの。いつまでも2人の死プラス私を一人で引きずって泣き崩れていると思ってた。もしかしたら優奈や悠木先生に会えなかったかもしれないの。私は一人で暗くて深い闇にいたかもしれないの。娘の私がいつ死ぬかわからない瀬戸際を私じゃなくてお母さんが背負う必要なんてないよ。親子2人の明るい家庭すら築けなかったと思うし、天国で見守ってる妹とお父さんに悪いよ。」と私はお母さんに本音を言った。
「ごめんなさい。優奈さんのお父さん。勝手に胸ぐら掴んでしまって。」
お母さんは娘の本音が聞こえたことから涙が最初よりさらに強くなった気がした。ハンカチでは拭えないほどに。
「そういうことがあったのか。」
「私、両親どっちもいるからこんなこと経験してきたことないのに、由香里こんなに苦労してたんだ。」
優奈と先生は涙を流していた。
私は話の続きをした。
「そして、その余命宣告が来たけど、もう私は1週間しか生きられないんだ。あれから5年も経ったけど、優奈のお父さん言う通りだった。5年まで短くなってしまった。」
周囲は涙で止まらなかった。ティッシュ一箱ぐらい必要なくらい。でも私は沈黙を貫いていた。もう私が死んだら、私のことなんて忘れるから。
早く頭の中から私という存在を削除してほしい。私はそう願っていた。
「残りはさ、いつも通りにみんなと楽しもうよ。」
「でも、」
「いいの。どうせ死ぬってわかってたし。」
優奈は突然私にビンタをした。まるで闇に取り憑かれた私を元に戻してくれた時みたいに。
「あんたは、死んだらみんな私の記憶なんて忘れるに決まってるなんて思わないでよ!あんたがいなくなった後の私たちを想像できる!?過去に忘れ物をして取りにいこうとする前のあんたみたいに、私達は涙で止まらなくなるんだよ。もし余命宣告がなかったら私と先生も会えなかったって言ってたよね?そしたら、あんたも私もここにいるみんなもあんたの最期を見届けてないわよ!」と大声で泣きながら言った。
「他人の死って、赤の他人は悲しまないって私思ってたけどさ、由香里みたいな友達や両親そして、私たちを守ってくれる学校の中の担任の先生とか他に接点を持っている人は、本人が思えないほどたくさんいるの。だから接点のある私たちは、由香里の死を悲しむんだよ。」
実は、優奈は幼い頃私と同じ難病にかかっていたが、手術をお父さんにしてもらい、なんとか克服できたそうだ。そこで、両親や知人学校の先生などのありがたみを知ることができたそう。自分の関わる人は数え切れないほどいるということを知ることになったという過去がある。
「ありがとう。優奈。私、目が覚めたよ。」
修学旅行の前日になって、私は病院から退院することができた。学校ではもう先生がクラスメイトたちに私が余命宣告を受けて、1週間しか生きることができないということを話したそうだ。優奈も含めてみんな泣き崩れてたよ。いじめていたあるクラスメイトもとても後悔していたという。
「昨日、由香里が帰り道に倒れて病院に搬送された。私は優奈と一緒に病院に行ったよ。とても悔しがってたよ。やっと自分居場所を見つけたのに、死ぬなんて嫌だって言ってたよ。」
「由香里を暖かく迎えてやってくれ。」と先生は言ってくれたそうだ。
私は学校を休み、お母さんと2人で久しぶりにドライブした。
「お母さん。どこに行くの?」
「ちょっとそこまで。」
車で2時間だった。山の一本道のカーブを曲がり続けて、ついに標高1,000メートルにまで到達していた。私は寂しいよ。死ぬとわかっていてもお母さんとはもう会えないから。
修学旅行前日だったが、私の最期にお母さんを見ることができないため、学校側が私だけに休みを一日設けてくれた。お母さんの同行を学校側は許可したが、お母さんが出張のため白紙になってしまった。
「着いたよ。」
どうやら展望台のようだ。見たことがない。
「ここどこなの?」
「わからないの?まだ4人だった時にここに結構来てたの。思い出の場所と言っても過言じゃないよ。」
「そうだったんだ。」
そういえば、家族写真がこの展望台からの景色を背景に撮影したものだったとお母さんが写真を見せてくれた。
「まさか2人で来ることになるなんて。」
「お母さん。ごめんね。修学旅行に行ったら多分もう会えないかも。」
「死ぬって思ってたら死ぬんだよ。私は生きたいって言い聞かせないと。」
「私が死んだらどうするの?」
「んーあんまり考えたことなかったな。まさか3人がいなくなるとは思わなかったし。寂しくなるわ。」
「ごめんね。」
「いいのよ。今更怒鳴っても元も子もないから。」
「最後どんな結末になるかな。」
私とお母さんは展望台の手すりに腕を組んで掴んだ。
時間の流れを体感できる。私は。
山の霧に囲まれているコンクリートの上に私は立っている。
第十話に続く
優奈と部屋は一緒にはできなかったけど、行動班が一緒だからとても楽しみにしている。
そして、優奈と二人でショッピングモールに来ていた。将来複数の犬を飼いたいと思っていた私だが、私にはできないだろう。
夜遅くになり、優奈と現地で解散した。後、自転車を漕いで家に帰ろうとしていたところだった。何かくらくらしてきた。意識が遠のいていく。心臓が痛い。
「バタン!」呼吸もなくなりそうだ。
私はなにも見えない畑に自転車と一緒に倒れてしまった。水が張られていたので、落ちた時の
「バッシャーーン!!」
と言う水の音は耳に焼き付けていた。楽しいと思っていた私の生活がこんな形で終わるなんて。私は悲しかった。
サイレンの音が聞こえる。目が覚めた。
あの頃と同じ病院にいた。
「また倒れたの私。」
「また意識が飛んだ。」
ドアからお母さんとあの頃と同じ医師が入ってきた。医師が同じがどうかは顔で覚えていたからだ。
私は安心した。死んでない。
私は死んでないんだって。
「由香里・・・.」
「ごめんね。お母さんまたこんなことになっちゃって。」お母さんはなにも言えなかった。
「あの。由香里さんと二人きりでお話がしたいので、お母さんは外で待ってて貰えますか。」
「はい。」お母さんは寂しそうに病室を後にした。
「由香里さん。あなたの体を検査しました。
ついに来てしまいましたよ。」
医師は悲しそうに私に言ってくれた。
「あれですよね。」
「はい・・・。余命宣告が来てしまいました。」
「覚悟はしてましたが、こんなに早く来てしまうなんて信じられません。5年足らずで。」
「心臓の状態は現状問題ないのですが、急に容態が悪くなってしまうこともあり得ます。言うのは申し訳ないですが、1週間以内になくなってしまいます。あなたの存在が。」
この時が来てしまった。来ることはわかっているのに悲しい。命が惜しいよ。いじめが完全に終息してこれから新しい人生を歩んでいこうと思っていたのに。
「あの、3日後修学旅行に行くんですけど、間に合いますか。」
「ちなみに何日間行くんですか。」
「4日です。」
このことに悩まされる医師。現地まで行きたいところは山々だが行くことはできない。
「多分ですが、修学旅行が終わるまでに、間に合うかどうかは分かりません。」
私は久しぶりに涙の味がした。すると私の視線に医師の名札があった。
「下村 悠太」と書いてあった。
「下村さん。あの私どうしても修学旅行に行きたいんです。どうすれば旅行に行けますか?友達ができたばっかりで、その子と一緒に最期を送りたいんです。」
「お母さんの同行はできないかな?」
「本当はしてもらいたいですけど、多分無理だと思います。」
二人が話している時にドアが開いた。
「由香里!大丈夫?」聞いたことがある声だ。
優奈と悠木先生とお母さんが入ってきた。
「あれ?お父さん?」
「優奈!」
やはり予感が的中した。
この医師の先生は優奈のお父さんだったんだ。
ということは、5年前のあの時に既に会っていたということか。
「大丈夫よ。なんで知ってるの?それに先生まで。」
「先生が電話してくれたの。」
私が倒れてからお母さんが夜遅くに帰ってこないことを心配し学校に電話しても学校におらず、近所を探していたら倒れている私を見つけて病院に連絡してくれたのだ。お母さんの電話を聞いて心配した悠木先生は、放課後に私と優奈が二人でどこかに行くと言うことを偶然聞いてしまったため、優奈に連絡したが私の安否が取れず、二回目のお母さんからの電話で優奈と一緒に急いで病院に向かったと言う経緯だった。
「私もすごく驚いたのよ。帰り道歩いてたら、急に電話がかかってきて。」
「優奈か?由香里が病院に搬送された。至急来て欲しいって。」
「はい。すぐに向かいます。
2回も電話してくれたからそこまでひどいのかなと思って悠木先生と一緒に病院まできたの。」
「いやーよかった。先生が帰ろうとした時に電話が来たからさー。後もう少し遅かったらきてなかったかもよ。残業しておいてよかった。」
すごいチームワークじゃないけど結束力の高さに驚いた。
「お母さん。ありがとう。」
「ううん。全ては先生と優奈さんのおかげだよ。ありがとね。」
「あれ?お母さん優奈を知ってるの?」
「今さっき知り合ったの。」
優奈と先生が来た時にお母さんは椅子に座っていた。
「由香里のお母さんですよね?」と先生が聞いた。
「はい。」
「娘さんが病院に運ばれたと言うことを連絡していただいてありがとうございます。」
「初めまして。由香里の友達の優奈です。」
「あなたが由香里の友達なのね!」
私はお母さんに友達がいることは話したけど、名前は言っていなかったため、初対面となった。
「いつもありがとう。娘からは色々と聞いてるよ。」
「いいえ。そんなことないですよ。由香里のは学校で私と楽しく話しているので毎日楽しくやってますよ。」
三人での話は案外盛り上がった。私を待っててくれたのだ。
「話は終わりました。あとは娘さんの様子を見ていてください。僕もここで座ってずっと見ていますね。」
「わかりました。」
「お父さんありがとう。」
「まさか信じられなかったよ。優奈の友達がまさか僕の患者だったとは。」
すると悠木先生は修学旅行について話した。
「修学旅行は行けそう?」
「3日あるので、それまでには治ると思います。迷惑かけてすみません。」
「いや、そんなこと思わなくていいよ。で、お医者さんとは何を話してたの?」
「この話行ってもいいんですか。」
「いいよ。」
「私、実は余命宣告を受けててね。」
すると、驚愕の真実にお母さんは泣き崩れた。
「まさかあなたまでいなくなるなんて。」
「お母さん。お気は確かに。ですが最後まで話を聞いてあげましょう。」先生が慰めてくれた。
「ちなみに余命宣告は何年なの?」
「私が11歳の時に妹とお父さんを亡くしたあと、退院する時に医者、優奈のお父さんに言われたんです。」
「もう余命宣告が来ている。最長でも10年だけど、もしかしたら時間が早まって5年以内になるかもしれないって。」みんなは優奈のお父さんを鋭い目で見た。
「何で言ってくれなかったんですか!?」
お母さんは優奈のお父さんの胸ぐらを掴んだ。
すごく怯えていた。
「やめて、お母さん。私が言わないでってお願いしたの。」
「何で?」
「もしあの時このことを言ってたら、お母さんは普通じゃなくなってたと思うの。いつまでも2人の死プラス私を一人で引きずって泣き崩れていると思ってた。もしかしたら優奈や悠木先生に会えなかったかもしれないの。私は一人で暗くて深い闇にいたかもしれないの。娘の私がいつ死ぬかわからない瀬戸際を私じゃなくてお母さんが背負う必要なんてないよ。親子2人の明るい家庭すら築けなかったと思うし、天国で見守ってる妹とお父さんに悪いよ。」と私はお母さんに本音を言った。
「ごめんなさい。優奈さんのお父さん。勝手に胸ぐら掴んでしまって。」
お母さんは娘の本音が聞こえたことから涙が最初よりさらに強くなった気がした。ハンカチでは拭えないほどに。
「そういうことがあったのか。」
「私、両親どっちもいるからこんなこと経験してきたことないのに、由香里こんなに苦労してたんだ。」
優奈と先生は涙を流していた。
私は話の続きをした。
「そして、その余命宣告が来たけど、もう私は1週間しか生きられないんだ。あれから5年も経ったけど、優奈のお父さん言う通りだった。5年まで短くなってしまった。」
周囲は涙で止まらなかった。ティッシュ一箱ぐらい必要なくらい。でも私は沈黙を貫いていた。もう私が死んだら、私のことなんて忘れるから。
早く頭の中から私という存在を削除してほしい。私はそう願っていた。
「残りはさ、いつも通りにみんなと楽しもうよ。」
「でも、」
「いいの。どうせ死ぬってわかってたし。」
優奈は突然私にビンタをした。まるで闇に取り憑かれた私を元に戻してくれた時みたいに。
「あんたは、死んだらみんな私の記憶なんて忘れるに決まってるなんて思わないでよ!あんたがいなくなった後の私たちを想像できる!?過去に忘れ物をして取りにいこうとする前のあんたみたいに、私達は涙で止まらなくなるんだよ。もし余命宣告がなかったら私と先生も会えなかったって言ってたよね?そしたら、あんたも私もここにいるみんなもあんたの最期を見届けてないわよ!」と大声で泣きながら言った。
「他人の死って、赤の他人は悲しまないって私思ってたけどさ、由香里みたいな友達や両親そして、私たちを守ってくれる学校の中の担任の先生とか他に接点を持っている人は、本人が思えないほどたくさんいるの。だから接点のある私たちは、由香里の死を悲しむんだよ。」
実は、優奈は幼い頃私と同じ難病にかかっていたが、手術をお父さんにしてもらい、なんとか克服できたそうだ。そこで、両親や知人学校の先生などのありがたみを知ることができたそう。自分の関わる人は数え切れないほどいるということを知ることになったという過去がある。
「ありがとう。優奈。私、目が覚めたよ。」
修学旅行の前日になって、私は病院から退院することができた。学校ではもう先生がクラスメイトたちに私が余命宣告を受けて、1週間しか生きることができないということを話したそうだ。優奈も含めてみんな泣き崩れてたよ。いじめていたあるクラスメイトもとても後悔していたという。
「昨日、由香里が帰り道に倒れて病院に搬送された。私は優奈と一緒に病院に行ったよ。とても悔しがってたよ。やっと自分居場所を見つけたのに、死ぬなんて嫌だって言ってたよ。」
「由香里を暖かく迎えてやってくれ。」と先生は言ってくれたそうだ。
私は学校を休み、お母さんと2人で久しぶりにドライブした。
「お母さん。どこに行くの?」
「ちょっとそこまで。」
車で2時間だった。山の一本道のカーブを曲がり続けて、ついに標高1,000メートルにまで到達していた。私は寂しいよ。死ぬとわかっていてもお母さんとはもう会えないから。
修学旅行前日だったが、私の最期にお母さんを見ることができないため、学校側が私だけに休みを一日設けてくれた。お母さんの同行を学校側は許可したが、お母さんが出張のため白紙になってしまった。
「着いたよ。」
どうやら展望台のようだ。見たことがない。
「ここどこなの?」
「わからないの?まだ4人だった時にここに結構来てたの。思い出の場所と言っても過言じゃないよ。」
「そうだったんだ。」
そういえば、家族写真がこの展望台からの景色を背景に撮影したものだったとお母さんが写真を見せてくれた。
「まさか2人で来ることになるなんて。」
「お母さん。ごめんね。修学旅行に行ったら多分もう会えないかも。」
「死ぬって思ってたら死ぬんだよ。私は生きたいって言い聞かせないと。」
「私が死んだらどうするの?」
「んーあんまり考えたことなかったな。まさか3人がいなくなるとは思わなかったし。寂しくなるわ。」
「ごめんね。」
「いいのよ。今更怒鳴っても元も子もないから。」
「最後どんな結末になるかな。」
私とお母さんは展望台の手すりに腕を組んで掴んだ。
時間の流れを体感できる。私は。
山の霧に囲まれているコンクリートの上に私は立っている。
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