7 / 85
出会いとは何か
イヤザザ地区
しおりを挟む
水が底を尽きた。歩く疲れが溜まり視界がぼやける。
「ねえ、エニス。蜃気楼が見えるね」
「そうだな。何回騙されたことか」
寒かったはずの砂漠が急に暑くなった。気候がおかしい。
キールが座り込んだ。
「もうダメ。歩けない」
「水がないんだ、歩かないと。立ち止まれば必ず死ぬ、どうせ死ぬなら歩き疲れて死にたい。とにかく進むしかないんだ。万が一にあの蜃気楼が本物かも…ん?」
「どうしたの?」
エニスは目を凝らした。
「本物だぞ。本物の街だ!」
キールが飛び上がる。
「ほんとにー!急ごうエニス!」
二人は疲れを忘れたかのように走った。
レンガで作られた高い壁に巨人が開けるのかと思うくらいの扉。相当な大きさの街だ。
門番が厳しい顔で出てきた。
「ここで何をしている」
キールが前に出る。
「イヤザザのギルドマスターに用事で参りました。通して頂いたく存じます」
門番の顔色が変わった。
「こ、これはこれはアイネ家の坊ちゃんではありませんか。失礼をお許しください。ここはイヤザザ地方の入口『ガーデン』です。どうぞお入り下さいませ」
エニスは驚く。
「顔パス。そんなに凄い家だったのか」
キールは「ふん」と鼻を鳴らす。
「これでも全国に名が知れてるからね」
門番に通され街に入った。栄えている。流石ナーナ国の中でも最大の都市。人が賑わい、まるで祭りの様だった。奥には大きな城も見える。
通りを歩くと凄い勢いで人がぶつかってきた。
「あつ、すいません。急いでいるもので」
目鼻立ちのスッキリした高身長の青年。
「ああ、大丈夫ですよ」
エニスは胸の奥で何かを感じた。それが何なのかは分からなかった。
キールが急かす。
「エニス、急ごう」
「ここがギルドが集まる酒場か」
キールは扉を開け中に入る。酒場はガヤガヤ賑わっていた。大声で話す者。ビールを賭けて腕相撲をする者。ウエイトレスが忙しく酒を運ぶ中こっちに気付いた。
「いらっしゃいませ!ようこそギルドの酒場へ。ご注文は如何なされますか」
キールがメニューを見ながら。
「えーっと。ミルクで」
注文すると隣の客が笑った。
「酒場に来てミルクだと。笑わせるな。お母ちゃんのおっぱいでも吸って寝てろ!それよりスパルちゃんこの後どっか行かないか」
ウエイトレスは言い寄られ「止めてください」と困っていた。
キールが立ち上がる。
「無礼者!当家をなんだと心得える!僕はアイ…」
いきり立つキールをエニスは「まあまあ」となだめ。ミルクを二つ注文しスパルと酔っ払いと離した。
キールはまだ怒っている。
「全く、これだから礼儀を知らないものは」
「相手が誰だか分からないのにあの態度は無いよな。酔ってるとはいえ言っていい事と悪いことがあるからね。でもああいうのは相手にするだけ時間の無駄だ」
スパルは「お待たせしました」とミルクを運んできた。
エニスはここぞとばかりに聞く。
「あの、ギルドマスターに会いたいんですが」
「マスターですか。マスターは一番奥の席に座っています」
エニスはありがとうと言いミルクもそこそこに奥の席に向かった。
「ねえ、エニス。蜃気楼が見えるね」
「そうだな。何回騙されたことか」
寒かったはずの砂漠が急に暑くなった。気候がおかしい。
キールが座り込んだ。
「もうダメ。歩けない」
「水がないんだ、歩かないと。立ち止まれば必ず死ぬ、どうせ死ぬなら歩き疲れて死にたい。とにかく進むしかないんだ。万が一にあの蜃気楼が本物かも…ん?」
「どうしたの?」
エニスは目を凝らした。
「本物だぞ。本物の街だ!」
キールが飛び上がる。
「ほんとにー!急ごうエニス!」
二人は疲れを忘れたかのように走った。
レンガで作られた高い壁に巨人が開けるのかと思うくらいの扉。相当な大きさの街だ。
門番が厳しい顔で出てきた。
「ここで何をしている」
キールが前に出る。
「イヤザザのギルドマスターに用事で参りました。通して頂いたく存じます」
門番の顔色が変わった。
「こ、これはこれはアイネ家の坊ちゃんではありませんか。失礼をお許しください。ここはイヤザザ地方の入口『ガーデン』です。どうぞお入り下さいませ」
エニスは驚く。
「顔パス。そんなに凄い家だったのか」
キールは「ふん」と鼻を鳴らす。
「これでも全国に名が知れてるからね」
門番に通され街に入った。栄えている。流石ナーナ国の中でも最大の都市。人が賑わい、まるで祭りの様だった。奥には大きな城も見える。
通りを歩くと凄い勢いで人がぶつかってきた。
「あつ、すいません。急いでいるもので」
目鼻立ちのスッキリした高身長の青年。
「ああ、大丈夫ですよ」
エニスは胸の奥で何かを感じた。それが何なのかは分からなかった。
キールが急かす。
「エニス、急ごう」
「ここがギルドが集まる酒場か」
キールは扉を開け中に入る。酒場はガヤガヤ賑わっていた。大声で話す者。ビールを賭けて腕相撲をする者。ウエイトレスが忙しく酒を運ぶ中こっちに気付いた。
「いらっしゃいませ!ようこそギルドの酒場へ。ご注文は如何なされますか」
キールがメニューを見ながら。
「えーっと。ミルクで」
注文すると隣の客が笑った。
「酒場に来てミルクだと。笑わせるな。お母ちゃんのおっぱいでも吸って寝てろ!それよりスパルちゃんこの後どっか行かないか」
ウエイトレスは言い寄られ「止めてください」と困っていた。
キールが立ち上がる。
「無礼者!当家をなんだと心得える!僕はアイ…」
いきり立つキールをエニスは「まあまあ」となだめ。ミルクを二つ注文しスパルと酔っ払いと離した。
キールはまだ怒っている。
「全く、これだから礼儀を知らないものは」
「相手が誰だか分からないのにあの態度は無いよな。酔ってるとはいえ言っていい事と悪いことがあるからね。でもああいうのは相手にするだけ時間の無駄だ」
スパルは「お待たせしました」とミルクを運んできた。
エニスはここぞとばかりに聞く。
「あの、ギルドマスターに会いたいんですが」
「マスターですか。マスターは一番奥の席に座っています」
エニスはありがとうと言いミルクもそこそこに奥の席に向かった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる