28 / 85
最終決戦
28話 ダッタン国立図書館
しおりを挟む
「酷い、こんなん酷すぎるで」
ポッツは憤りを隠せない。ナツァーキは一息つくと。
「二人はチルンとルミナリエ。これは彼女達の意思なんだ。ムヒコーウェルが現れてから図書館の番人である姉妹の様子が変わってしまった。黒い霧に包まれ書物の内容が全て彼女達に詰め込まれた。その知識量の膨大さから精神にも異常をきたし、チルンは言葉を、ルミナリエは視界を失ってしまったんだ。そして自分を、他人を傷つけないようにと本人の意思で鎖に繋がれた。どういう訳かルミナリエは視界が奪われているがチルンの出すものが読めるらしい。文字通り二人で一つなんだ」
ジースーは二人に近づいた。二人は急に震えだし鎖を引きちぎらんばかりに逃げようとした。
「ご、ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
ナツァーキが制す。
「ジースーの何かに反応しているみたいだね。一体君は…」
「……。助けたかった。けどそれではなかったみたいだね」
チュラーは何かに引っかかったようだ。
「ジースー、とりあえず後ろにいてくれないか」
チュラーは二人が落ち着くのを待った。
「チルンさんとルミナリエさん、ムヒコーウェルの事を教えて貰えませんか?」
口を封じられたルチンはうなづくと目を開いた。チルンの目から光が出て地面に見慣れない文字を浮かび上がらせた。その文字を目を封じられたルミナリエが読む。
それは儚く気を張っていないとどこかへ消えてしまいそうな声だった。
「その昔、ムヒコーウェルは西の果ての深い谷、オーカマバレーの奥深くで封印された。しかし封印は時と共にほつれ、その隙間を縫って魔力を送り込んだ。封印が解けるのも近い。ムヒコーウェルは今その鍵を握った。語り部…」
言いかけて姉妹はガタガタ震えだし体を仰け反らせ胸のあたりを掻きむしろうとしていた。ナツァーキは咄嗟に二人を押さえつけ。
「ここまでだ、もう限界みたいだ。一旦出よう」
図書館を出ると一室に通された。さすがお城だけあって一部屋が大きい。
チュラーは中央のソファーに向かう中、ジースーを止めた。
「ジースー、お前最近何か変化はなかったか?」
「ん?いや、なんの事かな?分からないけど…」
「ならいい。何かあったら言えよ」
「う、うん。わかったよ」
中央からポッツが呼んだ。
「おーい、何してんねん早うこっち来いや」
ジースーは目を輝かせる。
「今行くねー!すっごい!ふっかふかなソファーだ!」
セイクが口を開く。
「ムヒコーウェルの所に急げと言っていたな。それに語語り部?」
ナツァーキは答える。
「語り部か。聞いたことはある。ムヒコーウェルが封印された時の目撃者で語り継ぐ者だと。話ではムヒコーウェルの核の一部を埋め込まれたらしいが…何せ見てきた訳では無いので」
エニスは呟く。
「ムヒコーウェルの核…それをムヒコーウェルが手に入れたということか。チュラーはどう思う」
「そうだな、イールビも気になるが早急にムヒコーウェルを討った方が良さそうだな。ポッツは?」
「順番的にはイールビかもしれへんけど。元凶は?と考えると、わしもその方がええと思うな。イールビに時間を取られてそれこそムヒコーウェルが完全に復活したら元も子もないで、ジースーは?」
「僕はムヒコーウェルよりも…」
ジースーはエニスを見た。エニスは何かを見透かされているようで鼓動が速くなる。ジースーはニコッと笑い。
「ムヒコーウェルでいいと思う!ね、エニス」
「ああ、そうだな。セイクは?」
「もし、イールビがムヒコーウェルの復活に何かしらの影響があったらどうする?放置しておくのも危ない気がする」
ポッツは「なるほど」と。
「さすがセイクやな!目の付け所が違うわ!天才やな!」
セイクは照れながら。
「ポッツやめろ。褒めすぎだ!」
「まあ、赤くなった顔も可愛ええのぅ」
セイクは真っ赤になった。
「切り刻んでやろうか!」
「とりあえず」とエニスは進めた。
「僕はチルンとルミナリエを信じてみようと思う。色々心配はあるが図書館の知識を総動員して得られた情報だ。かけてみたいんだが」
セイクはフッとわらった。
「私も同じだ。ただ悪い可能性も潰しておかねばと思ってな。まあ、どうもムヒコーウェルの線が濃そうだからな」
チュラーはまとめた。
「それじゃ満場一致でムヒコーウェル討伐へ向かう。それに向けて各自準備するように。絶対、生きて帰る!いや、みんな生きて帰らせる!」
「せやな!そのために頑張ってきたんや後は全力で当たって砕けろや!」
ジースーは少し考えた。
「当たって砕けたら帰れないよね?」
「ものの例えや!ところでジースーも強うなったんやろなぁ」
「え?もちろんだよ。あれ見てて」
ジースーが指を刺したのは窓から見える大きな岩だった。
ジースーは人差し指を岩に向けた。片目をつむる。
「いくよ、バーン」
岩は粉々に砕け、ついでにポッツの腰も砕いた。
ポッツは憤りを隠せない。ナツァーキは一息つくと。
「二人はチルンとルミナリエ。これは彼女達の意思なんだ。ムヒコーウェルが現れてから図書館の番人である姉妹の様子が変わってしまった。黒い霧に包まれ書物の内容が全て彼女達に詰め込まれた。その知識量の膨大さから精神にも異常をきたし、チルンは言葉を、ルミナリエは視界を失ってしまったんだ。そして自分を、他人を傷つけないようにと本人の意思で鎖に繋がれた。どういう訳かルミナリエは視界が奪われているがチルンの出すものが読めるらしい。文字通り二人で一つなんだ」
ジースーは二人に近づいた。二人は急に震えだし鎖を引きちぎらんばかりに逃げようとした。
「ご、ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
ナツァーキが制す。
「ジースーの何かに反応しているみたいだね。一体君は…」
「……。助けたかった。けどそれではなかったみたいだね」
チュラーは何かに引っかかったようだ。
「ジースー、とりあえず後ろにいてくれないか」
チュラーは二人が落ち着くのを待った。
「チルンさんとルミナリエさん、ムヒコーウェルの事を教えて貰えませんか?」
口を封じられたルチンはうなづくと目を開いた。チルンの目から光が出て地面に見慣れない文字を浮かび上がらせた。その文字を目を封じられたルミナリエが読む。
それは儚く気を張っていないとどこかへ消えてしまいそうな声だった。
「その昔、ムヒコーウェルは西の果ての深い谷、オーカマバレーの奥深くで封印された。しかし封印は時と共にほつれ、その隙間を縫って魔力を送り込んだ。封印が解けるのも近い。ムヒコーウェルは今その鍵を握った。語り部…」
言いかけて姉妹はガタガタ震えだし体を仰け反らせ胸のあたりを掻きむしろうとしていた。ナツァーキは咄嗟に二人を押さえつけ。
「ここまでだ、もう限界みたいだ。一旦出よう」
図書館を出ると一室に通された。さすがお城だけあって一部屋が大きい。
チュラーは中央のソファーに向かう中、ジースーを止めた。
「ジースー、お前最近何か変化はなかったか?」
「ん?いや、なんの事かな?分からないけど…」
「ならいい。何かあったら言えよ」
「う、うん。わかったよ」
中央からポッツが呼んだ。
「おーい、何してんねん早うこっち来いや」
ジースーは目を輝かせる。
「今行くねー!すっごい!ふっかふかなソファーだ!」
セイクが口を開く。
「ムヒコーウェルの所に急げと言っていたな。それに語語り部?」
ナツァーキは答える。
「語り部か。聞いたことはある。ムヒコーウェルが封印された時の目撃者で語り継ぐ者だと。話ではムヒコーウェルの核の一部を埋め込まれたらしいが…何せ見てきた訳では無いので」
エニスは呟く。
「ムヒコーウェルの核…それをムヒコーウェルが手に入れたということか。チュラーはどう思う」
「そうだな、イールビも気になるが早急にムヒコーウェルを討った方が良さそうだな。ポッツは?」
「順番的にはイールビかもしれへんけど。元凶は?と考えると、わしもその方がええと思うな。イールビに時間を取られてそれこそムヒコーウェルが完全に復活したら元も子もないで、ジースーは?」
「僕はムヒコーウェルよりも…」
ジースーはエニスを見た。エニスは何かを見透かされているようで鼓動が速くなる。ジースーはニコッと笑い。
「ムヒコーウェルでいいと思う!ね、エニス」
「ああ、そうだな。セイクは?」
「もし、イールビがムヒコーウェルの復活に何かしらの影響があったらどうする?放置しておくのも危ない気がする」
ポッツは「なるほど」と。
「さすがセイクやな!目の付け所が違うわ!天才やな!」
セイクは照れながら。
「ポッツやめろ。褒めすぎだ!」
「まあ、赤くなった顔も可愛ええのぅ」
セイクは真っ赤になった。
「切り刻んでやろうか!」
「とりあえず」とエニスは進めた。
「僕はチルンとルミナリエを信じてみようと思う。色々心配はあるが図書館の知識を総動員して得られた情報だ。かけてみたいんだが」
セイクはフッとわらった。
「私も同じだ。ただ悪い可能性も潰しておかねばと思ってな。まあ、どうもムヒコーウェルの線が濃そうだからな」
チュラーはまとめた。
「それじゃ満場一致でムヒコーウェル討伐へ向かう。それに向けて各自準備するように。絶対、生きて帰る!いや、みんな生きて帰らせる!」
「せやな!そのために頑張ってきたんや後は全力で当たって砕けろや!」
ジースーは少し考えた。
「当たって砕けたら帰れないよね?」
「ものの例えや!ところでジースーも強うなったんやろなぁ」
「え?もちろんだよ。あれ見てて」
ジースーが指を刺したのは窓から見える大きな岩だった。
ジースーは人差し指を岩に向けた。片目をつむる。
「いくよ、バーン」
岩は粉々に砕け、ついでにポッツの腰も砕いた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる