anything

むひ

文字の大きさ
55 / 85
旅立ちとはまさに出会いである

13話 王の力

しおりを挟む
 ヨッシューは続ける。
「幼い頃、僕とユラン、メクは親友だった。成績も優秀で人望もある。次期、王になるとは関係なく僕らは唯一無二の親友だった。だがメクは王家の相続争いに巻き込まれ、この鬼の仮面を付けられ幽閉されたんだ。僕らは奪還を図るも王家に阻まれた。そして綿密な計画を練り今日決行の合図としてanythingの呻き声が上がった」
「anythingの呻き声…」
リファーはハッと気付いた。
「だから街の人は聞こえてなかったのね。こんなに不気味なのになんで誰も反応しないんだろって思ってたのよ」
「そう、この呻き声はanythingを自ら使えるものしか聞こえない魂の叫びなんだ。もうすぐユランが壁を開けてくれる」
「壁を開けるって…」
どこからか綺麗な弧を描いてボールみたいなものが窓際に投げ込まれた。入るか入らないかでボールは爆発し、窓があった場所にポッカリと穴が空いた。
ヨッシューは口笛を吹く。
「ナイシュー、ユラン」
「朝飯前だよ、ヨッシュー。早いとこ方をつけるぞ、衛兵が来る」

「お遊びはここまでだ」
声の方を振り向くとナツァーキが後ろに衛兵を従え腕を組んで立っていた。
ユランはヨッシューに目配せをすると、ヨッシューが飛び上がった。
そのままクルクルと回転をして穴の中に入り、メクを抱き抱えまた出てきた。メクは長年繋がれ、自分で歩く体力もないようだった。
ナツァーキは衛兵に指示を出す。
「捕らえろ!」
衛兵が襲いかかる。
マカルは叫んだ。
「ちょっとー!あたし達まで?もしかしてダッタン国を敵に回したの?草!」
「草生やしてる場合じゃないよマカル!」ムーフーがマカルの手を引っ張る。リファーも後に続いた。
「そうよね、今は一旦逃げましょ。私たちまで仲間だと思われてるわ」
「こっちだ」ヨッシューが先頭に立つも回り込まれた。
「くそっ…メク…」
メクはよろよろと顔を上げるとまたあの呻き声を出した。
すると、ドーンという音と共に透明な石が落ちたかのように所々衛兵が潰れていく。
ナツァーキは瞬間移動で右へ左へ避ける。
「どうなってるの?」リファーはヨッシューに聞いた。
「俺も分からないんだよね。メクが嘆くと誰かが潰れたり急に空に飛び上がったかと思えば消えたり。さっぱり分からないけど何か特別な力があるみたいなんだ。ゆっくり話してる暇はないぞ!今だ逃げろ!」
衛兵がパニックで隊列の崩れた隙間を見逃さなかった。そのまま城を出て走り森の奥へと一気に走った。
ユランは森の向こうを指さす。
「あの洞窟が我々のアジトだ」
洞窟へ滑り込むように到着した。
マカルは息を切らしながらメクの仮面が気になった。
「これって取れないのかな?夜こんな鬼見たらトイレにも行けないよぉ」
ヨッシューは仮面を取ろうとするもどういう訳か外れなかった。
「ダメだ。何か特殊な力で張り付いているのかも」
マカルは何かを感じた。
「待って」と言うと虚無を出し、仮面に持っていく。
虚無が仮面の近くに来るとフッと仮面を吸い込んだ。
「やったー!」
仮面が取れたメクはカハッっと息を吐くと力が入るのが分かった。
「ありがとう。この仮面はanythingを封じるものなんだ。あの呻き声を出す力を貯めるのに精一杯だった。何で決行を今日にしたと思う?」
リファー達は考えたが分からなかった。
「僕のanythingが教えてくれたんだ。『今だ』って」
マカルが悩む。
「私達がいることですよね。違いといえば」
「そうかもしれないし違うかもしれない。現に君たちがいなかったら例え抜け出せたとしても仮面を取ることはできなかった。anythingが導いてくれたんだ」
「にぃに達がよく言ってた『anythingの導きのままに』って事なのかな」
「分からないけどね。結局のところそれがいいのか悪いのかは今直ぐに判断できるものじゃないから。でもanythingが導いたなら…
今日はもう遅い。寝るとしよう。僕も疲れたよ」
洞窟の闇が一層深くなった。
しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

処理中です...