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むひ

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旅とは先の見えない闇である

33話 緊急

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 ポッツが目を開けると目の前でマカルがまさに撃たれようとしていた。
「いきなりの緊急事態かい!マカル!今助けるからな!」
プルリが焦る。
「そんな急に干渉魔法使えないらよおお!」
チュラーがフッと笑う。
「俺らがどれだけキツい修行に耐えてきたと思ってるんだ。ポッツ見せてやれ」
「行っくで!波の呼吸」
ポッツは呼吸を整える。
「うぉぉおおおお!」
繰り出した拳の速度が高速から音速へと上がる。
「コズミックウェ~~~~イブ!」
ポッツのビブラー効果により拳は更に加速。音速から光速。光速を超えた時、空間の壁と激突した。
「わしらの愛がどんだけ強いか証明してやるわ!行っけええええ!」
プルリは目を丸くする。
「空間を破るなんてこんなの聞いたことがないらよ!」


 「ふふっ」リカーはほくそ笑む。
「観念したようね。撃てえぇ!」
「待って!」ヒャノが何かに気づく。ヒャノが指を指した先の空間にヒビが入り音を立て割れた。
真っ先にマカルが気付く。
「にぃに!!!!」
カクトは照準をポッツに向け撃つもポッツは指で弾丸を受け止めた。
「わしの光速に比べたらハエが止まるで」
カクトは記憶を辿る。
「そんな…お前!ポッツか!」
「久しぶりやな。そろそろ止めてくれんとこっちも反撃に出なかんようなるで」
ポッツと聞いてリカーは反応する。
「おいポッツ!」
条件反射。ポッツは姿勢を正す。
「はいいいいい!ご主人!」
「ふふふ、まだ私の術が効いてるようね。私に逆らうとはどういうこと?」
「こ、これはその…」
ポッツの意思とは別の力が行動を縛る。
「斬魔刀…」ジースーは手刀を作りポッツの前を切るとポッツは崩れ落ちた。
「助かったで、ジースー」
リカーがうろたえる。
「僕は魔力が視覚化できるようになった。見えればどうにでも扱えるし斬ることもできる」
ジースーはニコッと笑う。
「みんな元々仲間だろ。仲良くしよ!」
全員の緊張の糸が切れた。イーモズは泣きながらオーニズに駆け寄った。
オーニズは今まで起こったことを話す。イーモズも思いの丈をぶちまけた。

 事の顛末を聞いたオーニズはムヒコーウェルに対峙した。
ムヒコーウェルはフンッと鼻を鳴らすと。
「あんた達には恨みもあるけど。そのおかげでアイツから解放されたからまあ許してあげますわ。ほんと痛かったんですからね!あのナンチャラカンチャラバズーカーってやつ!」
ポッツの条件反射。
「バズーカー言うてへん!自分の殺られた技くらい覚えといて!」
「冗談はさておいて。役者が揃ったところでムビーんとこ行くわよ。出発は深夜。魔界の扉が開く時間…みんなそれまでに準備するように!」

 一同は近くの村の宿に泊まり、装備を整える者。思い出話に華を咲かせる者。思い思いに過ごし。少し寝ようと寝室に戻った。
布団に潜ったイーモズはなかなか寝付けない。リファーは二人の方を向く。
「私…怖い…」
マカルもムーフーも思いは一緒だった。
ムーフーは布団から出る。
「だって魔界だよ!無理よそんなの!」
マカルはうつむく。
「ごめん…みんな…私のせいで…もういいよ、私の為にみんなを危険に晒したくない」
沈黙が部屋を埋めた。
 廊下が騒がしい。ジースーが駆け込んできた。
「ねーねー!コーナーズが緊急ライブするって!それが放送で全国に流れるらしいよ!」
リファーは一気に目が覚めた。
「何それ!そんなの聞いてないよ!」
「ほら、グズグズしてないで広場に集合だ!」
駆け出した。

広場にはコーナーズのライブを聞くため大勢集まっていた。
スピーカーから声が聞こえた。

「皆さんお久しぶりでーす!コーナーズでーす!」
ワーっと歓声が上がる。
リンレの声。
「今コーナーズは二人です。リファーは遠く離れて頑張っています。でも離れててもリファーは私たちの仲間。リファーはとても辛い思いをしながら試練に立ち向かってると思います」
アキーチャの声。
「そんなリファーに私たちも何かできないかなって。だからエリーヌさんに無理を言ってライブをさせてもらいました。この歌をリファーに、今色々な想いで立ち止まってる人や戦ってる皆に未来に向かって進んでもらいたい。そんな気持ちを届ければと思います。聞いてください」

「「running to you 」」

  『君が落ち込んだ時 そばにいてあげる
   この空はどこまでも続いているから
   君が泣きそうな時 一緒に泣いてあげる
   流れた涙は胸に花を咲かすから

   だけど 今は遠く離れて
   だけどきっと 届けてみせるから

   今は 走れ走れ 走れ走れ
   僕が君を押す風になる
   走れ走れ 走れ走れ
   僕が君を包む空になるから』


歓声の中。ライブは終わった。
イーモズはしばらく黙っていたがリファーが口を切った。
「行こ。魔界へ行こ!マカルも世界も!絶対救ってやるんだから!ムビーが何よ。みんな応援してくれる。みんな付いていてくれる」
ムーフーは頷いた。
「そうだよね!オーニズもいるし絶対大丈夫!ね、マカル」
「………うん。ありがとう」

人々は解散し広場には再び虫の声で溢れた。
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