ヴァンパイアの騎士

くじら

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第1章 ヴァンパイアは騎士になる

"あいつ"が倒れていた理由

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 そういえば………聞きそびれていたが、お前は何であそこで倒れていたんだ?



 その疑問と、本人が言うようにーーーー…………


 ……その事実……


 それが俺にーー……先程の質問を投げかけさせた。







 そして、ソイツはーー……吸血鬼ヴァンパイアはーー……その言葉を耳にした瞬間に俺の理解の及ばない能力を使ったーー……



 室内の気温が何度か下がったと感じるほどに俺は……ソイツから発せられる冷たい雰囲気に身震いをしていたーー……




 ソイツは俺の反応を楽しむかのように見たあとに……微笑むとーー……



「もう、後戻りは出来ないぞ?」



ーー……と、低めの声色こわいろで囁いた。



 その言葉に俺は口の端を吊り上げた。



「……何を今更?……ここまで聴いておいて無関係でいようとするほどーー……俺は薄情者に見えるのか?」


 その俺の答えがーー……ソイツにとって満足する答えだったのかーー……吸血鬼ヴァンパイアは、俺と同じように不敵に微笑んだ。




「……お前になら、教えてもよさそうだな。驚いて逃げ出すなよ?」


「ばーか。どんな理由か知らんが、逃げ出してたまるかよ。大体……困っている奴がいたら助けんのは、騎士として当然のことだ」


「…………


「?」


 ソイツが独り言のように零した言葉は、生憎と俺の耳まで届かなかったーー……



「先程、遮音と防音……立ち入り禁止を兼ねた魔法をこの部屋にかけた。しばらくの間、寝室ここ


 なるほど……さっきのは、話すための場所作りだったのかーー……




 ……そう思ったとき……俺の腹の虫が鳴った。





 それを聞いて恥ずかしくなった俺とソイツは少しの間、無言になりーー……そして……笑いあった。



 どれくらい笑っていただろうか……ソイツが涙目になりながら腹をかかえて……笑い終わった俺の表情かおを確認するまではーー……部屋の笑い声の響きがまなかった。



「あーー……すまねえな、笑っちまって?」


「いや、俺の方こそタイミングが悪かったというか……良すぎるというか……」


「……まあ、寝起きで飯を食ってねーし……俺が昨日血を貰いすぎたから……仕方ないんじゃねぇか?」


「……そうかもしれんな」



 正直、まだコイツと……俺はーーーー……………何回、恥ずかしさを感じるようなことをしてしまっているんだろう。




 騎士団では……そんなことは絶対にないというのにーー……



「ああ!そうだ!!!!お前と朝飯あさめしを食べようと思って料理したんだったわ。

台所、借りたけどいいよな?
テキトーに色々使わせてもらったぞ?」



「ああ、別に構わない。っていうか……使えるものがあったか?」




 最近は、疲れが溜まっていたため食材を買いに出掛けることもなかった。使用人も雇っていないため……使えそうなものがあったかはなはだ疑問だ。



「取り敢えず、調理道具一式は借りたぜ?
あとは……適当に買ったりして調達してきた。

嫌いなものとか、アレルギーとかあるか?」



「別に無いぞ。毒じゃなければ何でも食う」


「…………それを聞いて安心したわ。

今からとってくるーー……あ!あと……立ち上がって部屋を出るのは構わないが、今のお前の身体は貧血の状態だから……気をつけろよ?」



 つまり、ぶっ倒れないようにしろってことか…


「わかった。何から何まですまんな」



「いいってことよ!!つーか、お礼を言うのは俺の方な。じゃ、とってくるわ」


 そう言って急いでソイツは俺を寝室に残して台所へと向かっていった。











「うっしゃあ……出来たぜー俺の特製スープだ。まあ、適当に作ったからいつも同じ味じゃねーけど……身体には、いいはずだぜ?」




 ソイツが俺に差し出したのは、真っ赤なスープだった。小さく刻まれた野菜や鶏肉がたくさん入っている。



「……何を入れたんだ?」


 思わず、そう聞いてしまう。


「あのなぁ、いくら吸血鬼ヴァンパイアにとって血液の摂取が必要不可欠だからって……お前が貧血だからって理由で……血とか……変なものは、入れてねーよ!?」



 いや、そんなつもりで聞いてしまったわけではい。寧ろ……料理の腕前は、優秀な方だろう。


 ーー……その香りがあまりにも、食欲をそそるからーーーー…………質問してしまっただけだ。



「あ、そっちの意味じゃねーの?」



 俺の反応を不思議に見ていたソイツは、俺が香りに魅了されている様子を見て……納得したように呟いた。




 その後、懇切丁寧に作り方を教わりながら俺はそのスープを頬張った。ソイツ曰く、野菜と鶏肉を炒めた後に塩と胡椒で味付けをし……トマトの水分だけでスープを作り……すぱいす?や…はーぶ?で香りづけしたらしい。


 一緒に持ってきてくれたパンは……外は焦げ目がついてちぎると良い音をたてるが中はもっちりとしているものと、サクサクとしていて熱々のクロワッサン、そしてブルーベリーの入ったマフィンだった。



 ソイツがいれてくれたであろう紅茶も香り高いうえにストレートでほのかな甘味が感じられ美味かった。




「……どれもうまかった。ごちそうさま。」


「全部、美味うまそうに食ってくれて嬉しかったぜ!ありがとう」




 嬉しそうにソイツが俺に笑いかけながら俺の使った食器を片付けた。





 ソイツが吸血鬼ヴァンパイアだと忘れてしまうほどーー……今までで1番……優しさに満ちた瞳をしていたからか俺は……ついーーーー…………





「…………お前は、いい嫁さんになると思う」





 満腹ゆえの幸福感からか…………とんでもないことを口走った。



 気付いたときには、もう……遅い。




 は、目を見開いて……俺を見ていた。









「いつからーー……知っていたんだ?」











「……お前を助けたときから。」



 ……正直に答える。



「マジかよ……」


 驚愕の表情で彼女が顔を手で覆った。




「…………見つけたときは……男だと思った。

でも……が男とは、違っていた。それに……俺がお前に血を差し出した瞬間ーー……長い赤髪の深紅の瞳の女性が目に入った。

夢か幻だと思っていたがーーーー…………あのときの状況……そして、お前の能力的に出した答えだ。






 そういうと、新しい玩具おもちゃを見つけた子供のようにーー……無邪気にーー……彼女は口角を上げると真剣な瞳で俺を見据えた。





「だから、言ったじゃないか。。お前はーー……本当に……面白い。」




 どうやら、俺のことをお気に召したようだ。





「じゃあ、





 彼女が語った"それ"はーー……俺の予想もしない人物ががはじまりだったそうだ。





「そもそものはじまりは、
世界大戦争だったのかもしれない。


魔界に住む者達はーー……元々、人間と同じように暮らしていた。

しかし、サイエンジェ皇国が各国に戦争を仕掛けるために自然を破壊していったーー……それが原因で魔人、魔物、魔獣の居場所が減っていった。

今は魔王国というところに住んでいる者が大半を占めるがーー……戦争の爪跡つめあとは根強いもんだ……神話になるようにな。

サイエンジェ皇国はその心を利用し、魔界に生まれし者達を使役し始めた。

魔王国を治める者が……同胞達の様子を探ってきてほしいと私に依頼したんだ。

だが、事態は思わぬ方向に進んでしまった」




 魔界や魔王国が本当に存在していたなんてーー……物語や神話の中だけの話だと思っていた。


 そして、彼女の話のスケールの大きさに思わず息をのむ。



「魔界にまで、サイエンジェ皇国のような考えに傾倒する者達があらわれた」




「つまりーー……世界征服?」


 サイエンジェ皇国が世界征服を企み、この世界で最も素晴らしいと言われていた国を崩壊させ世界を混乱におとしいれたのは……記憶に新しい。まあ、俺は生まれていないが。


 俺の言葉に彼女が頷いた。




「そうだ。
少し違うかもしれないが……そう言っても差し支えないだろう。私はそいつら達の動向を探っていたんだがーー……遂に、見つかってしまってな。

まあ……変身や変装は、していたから身元がバレていないとは思うんだがーー……」



 つまりーー……世界征服を企む魔界の者達に襲われて偶然、俺の家の庭に倒れてたってことか?





「……昨日は、満月だっただろう?

ーー……つまり、吸血鬼ヴァンパイアやそれ以外の魔界の者達まで魔力が増幅する時期だった。

10人くらいなら……適当にあしらうことが出来たんだが……」





 余程、数が多かったらしい。





「……どれくらいだったんだ?」




 彼女が3本の指を立てて示した。




「30人か?」



「いや、300人。
奇襲も含めれば1000人を余裕で超えるぞ?
しかも、アイツら……魔獣や蝙蝠こうもりも使ってくるうえにーー……一般人が住んでいる直ぐ近くで仕掛けてきたんだぜ?…………そんなん、守るものが多いこっちが負けるのは必然だわ」





 思い出すのも嫌そうに吸血鬼ヴァンパイアは俺が聞きたがっていた全てを話した。




 俺が彼女の話を聴いて……


感じたのはーー……とてつもない怒りだった。








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