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第1章 ヴァンパイアは騎士になる
就職したいらしい……
しおりを挟む「あのさーー……この国の騎士になるにはどうすればいいんだ?」
俺が彼女との出会いを思い出していたために黙っている様子を不思議に感じたのか、彼女が質問してきた。
彼女と出会って幾許かの日にちが過ぎ……彼女と食事するのが日常になってきた。
あの出会い……そして、衝撃的な話を聴かされた俺は……彼女に協力したい旨を伝え、今のような関係になった。
曰く、彼女には血液の摂取が人間の食事のように頻繁にいるものではないらしい。
しかし、今回の大怪我が原因で血がかなり減った。そのため定期的に血を得る必要があり、誰かに血を貰おうと考えていたーー……
だから俺は自分の血を提供することを提案した。
なぜそこまでするのかーー……理由を問われたが曖昧に誤魔化した。
誰にも知られないところで命をかけ、世界のために動いている彼女がどこか悲しくてーーーー………
もっと報われてもいいと思ったなんて……伝えるつもりもない。
「……どういうことだ?なぜ、そんなことを聞く?」
俺は、思わず訝しげな表情をする。
それを聞くということは……
「いや~~……そろそろ、腰を据えようと思ってな……」
どこかを懐かしむようにーー……彼女は告げた。
「……騎士になりたいのか?」
騎士になる方法を聞く理由は、それしか考えられなかった。
「うーーん?
騎士になりたかったというよりも、
元々……ここーー……ワルキューレ王国で就職しようとは思ってたんだ。
色んな国を見てきたが……ここが1番過ごしやすそうだったしな。
騎士になろうと思ったのは……単に面白そうだったからだな。
それに、お前がいる騎士団なんだろ?
お前の職場って何か……楽しそうじゃないか」
「なんだその理由……」
思ったことが、口から零れた。彼女の言葉が予想外だったのだから……仕方がない。
俺が呆れて……そう言ったというのに、彼女はそのことを気にすることなくーー……寧ろ嬉しそうに言った。
「お前と仲間になれるなんてーー……最高だと思ってな」
俺と彼女が出会ったのは、ついこの間のはずだーー……
だが、彼女はーーーー…………
まるで……
昔から俺のことを知っているかのようにーー……
俺が……彼女の昔からの友人であるかのように告げた。
……違和感が無かったと言えば、嘘になる。
でも、
俺は彼女がそうやって笑顔でいてくれるのが
なぜかーー……
嬉しかった……
「騎士になるには、主に2つの方法がある。
1つは……騎士になるための試験を受けること。
2つ目は、王族や貴族に騎士に任命されることだ。
騎士にも国のものと貴族のものと2つあり、俺のいる騎士団は国のものだから……もし試験を受けずにその騎士団に入りたいのなら王族の任命が必要だな。同じようにどこかの貴族の護衛とかなら、貴族に任命されればいいことになる」
……理由は置いといてソイツの質問に答える。
ワルキューレ王国は、新興国で……他の国に比べて実力主義的な考えが強い。そのおかげか、身分による差別も少なく……実力のある者や努力できる者は身分に関係なく功績が得られる。
望む者には、必ず手がさしのべられるような政策だっていくつもある。
「へーー?じゃあ、俺の場合は試験を受けた方が早そうだな……因みに、試験ってどんな感じだ?」
「そうだなーー……王族か団長、副団長の推薦があれば試験をしない場合があるが……
お前の場合は……筆記試験と実技試験を受けることになるだろうな。
……今から勉強するとなると、正式に騎士になれるのは来年になるんじゃないか?」
次の試験の日程を考えると、その結論になった。
「げ……そんなにかかるのか?もっと手っ取り早く騎士になれるかと思ってたんだけどな……」
嫌そうな……面倒くさそうな顔をしながら彼女は自分で作ったスープを頬張った。
「そもそも、一般人は騎士育成のカリキュラムがある学校で何年か勉強し学校から受験資格などをもらってから試験を受けるのか普通で……
それ以外となると何か功績のある人か……
貴族から紹介状を書いてもらうとかだな。
どちらにしろ、筆記試験が難しいから
一から勉強するとなると時間がかかるぞ?」
「何か、他に方法ねえーのか?」
時間がかかるのが余程嫌なのか……若干、必死になりながら俺に再度問う。
他に方法があったか……と、記憶を辿る。
「あとはーーーー…………そうだな、騎士団員からの紹介や推薦で入るとかか?」
「それだ!!!!
お前が俺を推薦してくれれば、来年まで待たなくても騎士になれるんじゃねーか!?」
「いや、確かに可能だが……そんな前例は無いぞ?どちらにしろ…試験は受けなければならないし……かえって難しい試験になるらしく誰も受けようとせず"あってないような規則"だぞ?」
ソイツが妙案とばかりに告げてきたが、俺は否定的な意見を述べた。
何しろ、"それ"は誰も受けたがらない騎士団への入団試験として有名なのだ。
騎士団員からの紹介や推薦は、結構簡単に貰えるんだ。そもそも、仲間が増えることにを嫌がる者は滅多にいないし……やる気のある者は大歓迎って雰囲気の職場だからな。だが…………大変なのはその後だ。
そもそも、この規則は毎年一度しかない入団試験をもっと頻繁にすべきという世間とそんなに試験をやることが出来ないという国の都合から作られたものであり、表面的にはいつどんな人でも騎士団に入り……騎士になってもいいというものだが……実際は、特例で入団したいならこれくらい出来ねばいけないということで明らかに合格基準を高く設定したものだ。
過去に受験した人はこの試験の筆記で出された問題の難易度の高さに驚き、一般で受験した方がよっぽど早く合格できると思い……早々に諦めて普通に受験したらしい。
筆記試験の問題が難しいことに加え、実技試験も明確にされておらず……どんな無理難題を与えられてしまうか恐ろしくなり受験を考えていた数え切れないほどの人が辞退したらしい。
それほど、ほとんどの人が避ける受験なのだ。
大体、過去問が公開されていない時点で勉強のしようがないというか……
「そんなに受かんねえのか?」
難しい表情の俺を見てソイツが訊ねた。
俺は、頷いた。
「でもさーー
どうせ、受かるならそっちの方がいいな。誰も受かってねえ試験に受かったらすっげぇ嬉しいじゃん!!!!」
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