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21.ぷつりと切れた糸
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翌日、曇り空が広がる屋上。
フェンスに寄りかかって、遠くの建物を眺めていたレオは背後の気配に気づいてゆっくりと振り返った。
「よお。この世の終わりみたいな顔してんな。ちゃんと寝たのかよ」
「……レオ」
レオの顔が一瞬だけ曇り、何かを探るように私の目を見つめてきた。
「……終わったの」
「は?」
「昨日の夜、アルバートがお父様と一緒に家に来たわ」
レオの隣に並び、彼と同じようにフェンスに両肘をついた。
「アルバートが……家に? なにしにだよ」
「謝罪に。学園から正式に処分が下されたみたい。目撃した生徒が先生に報告してくれたからって。リディアさんとは接触禁止で奉仕活動も課されたって……」
「へえ。そりゃあご愁傷様なこった。で?」
「私の家族の前でお父様がアルバートに土下座させたの。『どうかもう一度チャンスを』って泣いてたわ」
静かな語りにレオは黙って耳を傾けていた。
彼の表情からはいつもの茶化すような雰囲気は微塵もなかった。
「……でお前はどうしたんだよ。まさか情けない泣きっ面に同情して、許してやったなんて言わねえだろうな」
レオの問いに小さく首を横に振った。
そして、彼の方へまっすぐに向き直る。
「私、ちゃんと言ったの」
「……何をだよ」
「『もう元には戻れない』って。きっぱりと。『さようなら』って言ったの。これで本当に全部おしまい」
言い切った瞬間、張り詰めていたものが音を立てて切れた気がした。
目の前のレオの姿がふっと遠のく。
「……そうか」
レオはほっとしたように優しい声で呟いた。
「お前にしてはいい判断だ。よく言ったな、エリス。自分で決めたならそれが一番い……」
彼の言葉が最後まで聞こえることはなかった。ぐらりと私の体が大きく傾ぐ。
視界が暗転し、足から力が抜けていく。
「おい、エリス!?」
レオの焦った声が鼓膜を揺らす。
地面に崩れ落ちる寸前、力強い腕が私の体をぐっと引き寄せ抱きとめた。
「しっかりしろ! おい、聞こえるか!?」
「……れ、お……」
「クソっ、顔色真っ白じゃねえか……!」
肩を揺さぶられる感覚と彼の必死な声。
それがだんだんと遠くなっていく。
大丈夫だと答えたいのにもう指一本動かせそうにない。
(ああ、私……ずっと無理してたんだ……)
体の力が完全に抜けていく。
最後に感じたのはふわりと体が浮き上がる感覚と私を抱きかかえる彼の腕の温かさだけだった。
「待ってろ、今すぐ保健室に……!」
遠ざかっていく意識の中、レオの焦燥に満ちた声と私を運ぶために駆け出す力強い鼓動。それがひどく安心できて、彼の腕の中で静かに意識を手放した。
フェンスに寄りかかって、遠くの建物を眺めていたレオは背後の気配に気づいてゆっくりと振り返った。
「よお。この世の終わりみたいな顔してんな。ちゃんと寝たのかよ」
「……レオ」
レオの顔が一瞬だけ曇り、何かを探るように私の目を見つめてきた。
「……終わったの」
「は?」
「昨日の夜、アルバートがお父様と一緒に家に来たわ」
レオの隣に並び、彼と同じようにフェンスに両肘をついた。
「アルバートが……家に? なにしにだよ」
「謝罪に。学園から正式に処分が下されたみたい。目撃した生徒が先生に報告してくれたからって。リディアさんとは接触禁止で奉仕活動も課されたって……」
「へえ。そりゃあご愁傷様なこった。で?」
「私の家族の前でお父様がアルバートに土下座させたの。『どうかもう一度チャンスを』って泣いてたわ」
静かな語りにレオは黙って耳を傾けていた。
彼の表情からはいつもの茶化すような雰囲気は微塵もなかった。
「……でお前はどうしたんだよ。まさか情けない泣きっ面に同情して、許してやったなんて言わねえだろうな」
レオの問いに小さく首を横に振った。
そして、彼の方へまっすぐに向き直る。
「私、ちゃんと言ったの」
「……何をだよ」
「『もう元には戻れない』って。きっぱりと。『さようなら』って言ったの。これで本当に全部おしまい」
言い切った瞬間、張り詰めていたものが音を立てて切れた気がした。
目の前のレオの姿がふっと遠のく。
「……そうか」
レオはほっとしたように優しい声で呟いた。
「お前にしてはいい判断だ。よく言ったな、エリス。自分で決めたならそれが一番い……」
彼の言葉が最後まで聞こえることはなかった。ぐらりと私の体が大きく傾ぐ。
視界が暗転し、足から力が抜けていく。
「おい、エリス!?」
レオの焦った声が鼓膜を揺らす。
地面に崩れ落ちる寸前、力強い腕が私の体をぐっと引き寄せ抱きとめた。
「しっかりしろ! おい、聞こえるか!?」
「……れ、お……」
「クソっ、顔色真っ白じゃねえか……!」
肩を揺さぶられる感覚と彼の必死な声。
それがだんだんと遠くなっていく。
大丈夫だと答えたいのにもう指一本動かせそうにない。
(ああ、私……ずっと無理してたんだ……)
体の力が完全に抜けていく。
最後に感じたのはふわりと体が浮き上がる感覚と私を抱きかかえる彼の腕の温かさだけだった。
「待ってろ、今すぐ保健室に……!」
遠ざかっていく意識の中、レオの焦燥に満ちた声と私を運ぶために駆け出す力強い鼓動。それがひどく安心できて、彼の腕の中で静かに意識を手放した。
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