【完結】裏切り王子様とからかい幼馴染~気づけば私の心は一人に奪われていました~

遠野エン

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20.元恋人の謝罪

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重苦しい空気がリビングに満ちていた。
ソファに私と両親、妹のマリベルが並んで座り、その向かい側には生気をなくしたアルバートと、彼の父であるルモンド氏が硬い表情で腰を下ろしている。誰一人として口を開かず、時計の秒針の音だけがやけに大きく響いていた。
沈黙を破ったのは私の父だった。

「さて、ルモンドさん。詳しいお話を伺いましょうか」

父の声にルモンド氏は深く頷き、隣に座る息子の肩を強く押した。

「アルバート。お前自身の口から洗いざらいすべてをお話しするんだ」
「……はい」

アルバートは俯いたまま、か細い声でぽつりぽつりと語り始めた。

「今日……放課後、学年主任の先生と担任の先生に生徒指導室へ呼び出されました」
「……」
「そこで……『同じ学年のリディア・クロフォードとの間に、学園の風紀を著しく乱す不適切な関係があったのではないか』と……」
「不適切ですって!?それどころの話じゃないでしょう!」

思わずマリベルが声を荒らげたが、父がこつと指でテーブルを一度叩いた音にぐっと言葉を飲み込んだ。アルバートはさらに声を小さくして続ける。

「実際に……僕たちの行為を目撃したという生徒から正式な報告が上がっている、と……問い詰められて……僕は……」
「……」
「もう、言い逃れはできないと観念して……すべてを話しました。リディアとは……その場の感情に流されて……エリスという大切な恋人がいながら、深い関係になってしまったこと……そして旧校舎の空き教室で……みだらな行為に及んだこと……すべてを白状しました」

私はアルバートから目を離さなかった。
ルモンド氏が重々しく口を開いた。

「学園からは厳重注意の処分が下されました。リディアさんとは接触を禁じられ、風紀を乱した罰として奉仕活動も課せられるとのことです。もちろん我が家でも厳しく罰する所存です」

話が終わるとルモンド氏はアルバートのうなじを鷲掴みにし、ソファから引きずり下ろした。そして抵抗する間もなく、その頭を床へと強く押し付けた。

「さあ!エリスさんに!そしてご家族の皆様に!心から!土下座してお詫び申し上げるんだ!」
「ぐっ……!」

アルバートは床に額をこすりつけ、絞り出すように叫んだ。

「エリスッ……!本当に……!本当に申し訳ありませんでした……! 僕は……どうかしていたんだ!君という、誰よりも素晴らしい恋人がいてくれたのに……なんて愚かで、許されないことを……!」

むせび泣きながら顔を上げたアルバートは、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、

「もう二度とあんな過ちは犯さない!リディアとは金輪際、言葉を交わすことすらしないとここに固く誓う!だから……!だからどうか……!どうかもう一度だけ僕にチャンスをくれないか!? 君を失いたくないんだ、エリス!僕には君だけが必要なんだ!卒業したら結婚するという約束もあれは嘘じゃない!僕の本心だったんだ!」
「アルバート」

その声にアルバートの懇願がぴたりと止まる。リビングにいる全員の視線が私に集中した。

「あなたの謝罪は受け取ります。お父様までお越しになってこうして頭を下げてくれたこと……その誠意は理解しました」
「じゃあ、エリス……!許して……」
「でも私たちの関係はもうおしまい」
「そ、そんな……どうして……!僕はもう過ちは犯さないとここで誓ったのに……!」
「過ちを犯したからというだけじゃないわ。私の信頼を……あなたはあなた自身の言葉と行動で粉々に打ち砕いたの。粉々になったものはもう二度と元には戻らない」

そっと何もない自分の胸元に手をやった。

「あなたが私にくれたものは、もう全部、私の心の中にはないの」
「そん……な……嘘だろ、エリス……」

アルバートは力なくその場にへたり込んだ。
まっすぐに彼の目を見つめて最後の言葉を告げた。

「今までありがとう、アルバート。あなたの恋人でいられて幸せだった時も確かにありました。それももう過去のこと。さようなら」

そのきっぱりとした響きにアルバートはもう何の言葉も返せなかった。
やがてルモンド氏が諦めたように深く息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。

「……息子がしでかしたことの重大さを考えれば当然の結果です。エリスさん。あなたの賢明なご判断、そのお気持ち、しかと受け止めました。この度は息子の愚行により皆様に与えたご心痛、重ねてお詫び申し上げます」

彼はアルバートの腕を乱暴に掴んで無理やり立たせる。

「行くぞ、アルバート。これ以上、皆様にご迷惑をおかけするんじゃない」

力なく引きずられるようにしてアルバートはリビングを後にする。玄関のドアを開ける直前、彼は最後に一度だけ私の方を振り返った。
その目は取り返しのつかない後悔と絶望に濡れていたけれど、私がその視線に応えることはなかった。
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