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20.鉱山再開発
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私は市庁舎の窓から活気を取り戻しつつある街並みを見下ろしながら、すでに次の一手を見据えていた。心の再生の次はこの街が自立するための経済基盤の確立。
「次のプロジェクトは閉鎖されたこの鉱山の再開発です」
作戦室ホールで私が広げた古地図の一点を指し示すと、職員たちの間にどよめきが走った。アトランシアの北部に位置する、何十年も前に放棄された鉄鉱山。
「市長、あの鉱山は半世紀も前に鉱石が枯渇し閉山したと…」
予想通りの否定的な意見に静かに首を振った。
「古い採掘記録を全て洗い直しました。記録によれば当時の技術では採掘困難だった深い層に、良質な鉱脈が手つかずで眠っている可能性が極めて高いのです。閉山したのは鉱石が枯渇したからではなく、単に採算が合わなくなったから」
「仮に話が本当だとしても、再開発には莫大な資金と労働力が必要になります。水路工事とは桁が違う。今の私たちにそんな余裕はありません」
その通り。今の新生アトランシアの体力だけではこの巨大プロジェクトは動かせない。だからこそ協力者が必要。
「ええ、ご指摘通りです。そこで隣領に話を持ち掛けます。クレイヴァーン伯爵に共同開発を提案しに行くのです」
「氷血伯に!?」
私の宣言は先ほど以上の衝撃をもって受け止められた。利用されるだけだと誰もが危惧の声を上げる中、彼らの不安を打ち消すように説得する。
「彼は冷徹ですが、同時に誰よりも合理的な判断を下す人物です。相応の利益が見込める話ならば、交渉の席につかない理由はありません。アトランシアは鉱山と労働力を。クレイヴァーン領は資金と最新の採掘技術を。そして得られた利益は双方が公平に分かち合う。これは対等なビジネスパートナーとしての提案です」
数日後、私はオドネルだけを伴い、クレイヴァーン領の城門をくぐっていた。通された謁見室は華美な装飾を排した実用本位の空間で、主の性格をそのまま映していると感じさせた。玉座に腰かけたシオンは氷の仮面を崩さぬまま、私に視線を注ぐ。
「何の用だ、アトランシア市長。また厄介な雑草でも探しに来たのか」
懐から鉱山の権利書と調査資料の写しを取り出し、彼の前のテーブルに広げた。
「本日は伯爵に共同事業のご提案に参りました。アトランシアの閉鎖鉱山を貴方様の資金と技術で再開発し、新たな富を生み出しませんか?」
眠っている鉱脈の推定埋蔵量、市場価値、そして事業計画の骨子を説明していく。緻密なデータに裏付けされた現実的な投資計画を。
シオンは黙って資料に目を通していたが、やがて顔を上げ、
「面白い。……が、君は俺を信用しているのか? 資金を出した俺が全てを乗っ取る可能性は考えないのか」
「ええ。あなたは無駄な争いを好みませんから。武力で奪うよりもパートナーとして共に利益を上げた方が、結果的により多くのものをより安定して得られると判断なさるでしょう。私はあなたのその合理性を信用しています」
彼の口元に初めて会って以来、満足げな笑みが浮かんだように見えた。
「……どうやら君は俺という人間をよく理解しているらしい」
彼は席を立って窓辺に寄り、アトランシアの方角を眺めた。
「よかろう。その話、詳しく聞かせてくれ」
「次のプロジェクトは閉鎖されたこの鉱山の再開発です」
作戦室ホールで私が広げた古地図の一点を指し示すと、職員たちの間にどよめきが走った。アトランシアの北部に位置する、何十年も前に放棄された鉄鉱山。
「市長、あの鉱山は半世紀も前に鉱石が枯渇し閉山したと…」
予想通りの否定的な意見に静かに首を振った。
「古い採掘記録を全て洗い直しました。記録によれば当時の技術では採掘困難だった深い層に、良質な鉱脈が手つかずで眠っている可能性が極めて高いのです。閉山したのは鉱石が枯渇したからではなく、単に採算が合わなくなったから」
「仮に話が本当だとしても、再開発には莫大な資金と労働力が必要になります。水路工事とは桁が違う。今の私たちにそんな余裕はありません」
その通り。今の新生アトランシアの体力だけではこの巨大プロジェクトは動かせない。だからこそ協力者が必要。
「ええ、ご指摘通りです。そこで隣領に話を持ち掛けます。クレイヴァーン伯爵に共同開発を提案しに行くのです」
「氷血伯に!?」
私の宣言は先ほど以上の衝撃をもって受け止められた。利用されるだけだと誰もが危惧の声を上げる中、彼らの不安を打ち消すように説得する。
「彼は冷徹ですが、同時に誰よりも合理的な判断を下す人物です。相応の利益が見込める話ならば、交渉の席につかない理由はありません。アトランシアは鉱山と労働力を。クレイヴァーン領は資金と最新の採掘技術を。そして得られた利益は双方が公平に分かち合う。これは対等なビジネスパートナーとしての提案です」
数日後、私はオドネルだけを伴い、クレイヴァーン領の城門をくぐっていた。通された謁見室は華美な装飾を排した実用本位の空間で、主の性格をそのまま映していると感じさせた。玉座に腰かけたシオンは氷の仮面を崩さぬまま、私に視線を注ぐ。
「何の用だ、アトランシア市長。また厄介な雑草でも探しに来たのか」
懐から鉱山の権利書と調査資料の写しを取り出し、彼の前のテーブルに広げた。
「本日は伯爵に共同事業のご提案に参りました。アトランシアの閉鎖鉱山を貴方様の資金と技術で再開発し、新たな富を生み出しませんか?」
眠っている鉱脈の推定埋蔵量、市場価値、そして事業計画の骨子を説明していく。緻密なデータに裏付けされた現実的な投資計画を。
シオンは黙って資料に目を通していたが、やがて顔を上げ、
「面白い。……が、君は俺を信用しているのか? 資金を出した俺が全てを乗っ取る可能性は考えないのか」
「ええ。あなたは無駄な争いを好みませんから。武力で奪うよりもパートナーとして共に利益を上げた方が、結果的により多くのものをより安定して得られると判断なさるでしょう。私はあなたのその合理性を信用しています」
彼の口元に初めて会って以来、満足げな笑みが浮かんだように見えた。
「……どうやら君は俺という人間をよく理解しているらしい」
彼は席を立って窓辺に寄り、アトランシアの方角を眺めた。
「よかろう。その話、詳しく聞かせてくれ」
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