【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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31.この目で確かめる※ヴォルフside

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あれからさらに季節は巡った。俺がルティアの不在こそが王都の凋落の原因だと気づいてからも、無情に時は過ぎていった。羅針盤を失った船は今や嵐の中で完全に航路を見失い、沈没寸前の様相を呈していた。

税収はもはや予測を立てる意味もないほどに落ち込み、物価の高騰は市民の暮らしを直接的に脅かし始めていた。各地で小規模な暴動の報が届くようになり、王都ですら夜の治安は悪化の一途をたどっている。この国の輝きが日に日に失われていくのをただ見ていることしかできなかった。

父上や大臣たちは場当たり的な増税や商会からの強制的な資金供出といった、ただ民の不満を煽るだけの愚策しか打ち出せない。彼らの目にはこの国がゆっくりと死に向かっている現実が見えていない…。

もう、猶予はない。俺は固く拳を握りしめ父上――国王の執務室へと向かった。重い扉を開けると、そこには父上と母上、そして宰相が険しい顔で地図を睨んでいた。

「ヴォルフか。ちょうどよいところに。北方の領地でまた農民の反乱だ。お前に鎮圧を…」
「父上、そのような対症療法ではもはや手遅れです」

俺は父上の言葉を遮り、真っ直ぐに見据えた。俺のただならぬ気配に三人がけげんな視線を向ける。

「この都の経済を立て直す唯一の方法が一つだけあります。ルティア・ヴェルフェンを王都へ帰還させ、財政再建の全権を与えるのです」
「……何を戯言をぬかしているのですか、ヴォルフ。あの愚かな女を今さら呼び戻すと? あなたはまだあの女に惑わされているのですか!」
「惑わされてなどおりません! 彼女の類まれなる才覚こそ、今の王都に必要不可欠です! …俺たちがそれを知らずに追放したために、ここは今、滅びかけている!」

俺の叫びに父上が激昂して立ち上がった。

「黙れ! 一度ならず二度までも我らを侮辱する気か! そもそも追放された罪人が興した辺境の街の噂などどこまでが真実かもわからん!」
「ですから、俺がこの目で確かめて参ります」

俺の返答に父上も母上も、宰相までもが絶句している。

「アトランシアへ行き、噂が真実かを見極めます。そして…もし彼女に本当に国を救う力があるのなら、俺はどんな屈辱を味わおうと頭を下げ、助力を乞う覚悟です。それが次期国王たる責務ですから」

俺は返事を待たず、踵を返した。背後から父上の「許さんぞ、ヴォルフ!」という怒声が飛んでくるが、もはや俺の耳には届かなかった。

自室に戻り、旅の準備を整えながら自問する。俺は本当に王都のためだけにアトランシアへ向かうのか? 違う。それだけではない。自分が追放した女が本当に奇跡のような復興を成し遂げたというのか。彼女が今、どんな顔をして、何を考えているのか。この目で確かめずにはいられない。
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