【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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36.突然の告白

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静まり返った閉店後の『ひだまり亭』。ミランダが「あとは二人でゆっくり話しな」と気を利かせて店から早々に出ていくと、私とシオンだけが残された。先ほどの騒動とヴォルフが残していった複雑な余韻が店の隅々に漂っているよう。

「今日は本当にありがとうございました。伯爵がいてくださったおかげで、冷静な対応ができました」
「俺がしたことなど些細なこと。君は一人で堂々と王子に立ち向かっていた。いや、一人ではなかったな。君の後ろには君を信じる市民がいた」

彼の言葉に光景が蘇る。見知った顔、見知らぬ顔の全てが私を守ろうと声を上げてくれた。胸の奥がじんわりと温かくなる。この街に来て得たかけがえのない宝物。

「ええ。彼らは私の誇りです」
「君も彼らの誇りなのだろう」

シオンは穏やかな声でそう言うと、

「今日、改めて確信した。君という人間がどれほど強靭で、そして慈愛に満ちているかを。権威を振りかざす相手に怯むことなく、民のために自分の言葉で語る姿は誰よりも眩しく見えた。市長として、一人の人間として俺は君を心から尊敬する」

私が隣国の伯爵に「尊敬している」と言われている。その事実がくすぐったくも光栄なこと。

「もったいないお言葉です。私はただ、この街の人たちと一緒に歩んでいきたいだけですから」

私が照れ隠しにそう言うと、彼はふっと微かに笑みを浮かべた。そして、テーブルの上に置かれていた私の手に、そっと自身の手を重ねる。彼の少し冷たい指先が触れた瞬間、心臓がドキリと跳ねた。

「尊敬だけでなく、いつしか俺の中で別の感情も生まれていた。市長ルティア・ヴェルフェンだけではない。困難に立ち向かい、温かく笑い、時に悩みながらも前を向く……君という人間そのものに俺は強く惹かれている」

彼の伝えようとしていることになんとなく気づきつつも、まさかという思いで見つめ返した。いつも冷静で、感情を表に出さない彼の瞳が今は熱を帯びて揺れている。

「ルティア。君のことを愛している」

彼の唇から紡がれた言葉が、意味を結ぶのに長い長い時間が必要だった。愛している? この私が? シオンに? 思考が追いつかず、全身の血液が顔に集中していくのがわかった。耳まで熱い。きっと、自分でも見たことのないほど真っ赤になっているに違いない。

いつもならどんな窮地でも言葉を返せるはずの口が今は動いてくれない。どうしていいか分からずに戸惑う一人の女性でしかなかった。

シオンはそんな私を急かすことなくただ静かに、優しい眼差しで答えを待っている。閉店後のひだまり亭に満ちる静寂の中、私の心臓の音だけがやけに大きく響き渡っていた。
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