【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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40.整えられた住環境

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計画発表から10ヶ月。
アトランシア北部の未開拓地――――整然と区画整理された土地には真新しい住宅が立ち並び、窓辺には色とりどりの花が咲き誇っている。急ピッチで建設された新たな街区は、移住者や若い世代の希望の受け皿となるべく、大胆な政策と共に門戸が開かれた。

「驚いたな。これほどの規模の街を一年かからずに……。しかも、ほとんどの家に既に入居者がいるとは」
「急増する移住者の方々を待たせるわけにはいかないから。職人さんたちが本当によく頑張ってくれました」

『アトラ・ワークス』が生み出す富は、まず市民の生活基盤の安定に投じられた。この新しい住宅はアトランシアで働くことを誓う者であれば無利子での購入を可能にした。

「無利子では街の財政を圧迫するのでは?」
「利益よりも大切なものがあるわ。それは人々がこの街を愛し、根付いてくれること。初期投資の負担をなくすことで彼らには安心して家族を呼び、子供を育て、世代を超えて受け継いでくれるように」

単なる労働力の確保じゃない。新たな家族を迎え入れるための未来への投資。私の揺るぎない瞳を見て、シオンは「君らしいな」と柔らかく微笑んだ。

そして今日、街の新たな動力源である『魔源炉』がついに本格稼働の日を迎えた。ダビデが満面の笑みでメインレバーを下ろすと、炉心から放たれた緑色の魔力の光が施設全体に満ち、地下に張り巡らされた供給網を通じて街の隅々へと流れ込んでいく。

陽が落ちると、等間隔に設置された魔導灯が街路を煌々と照らす。工業地帯と居住区を結ぶ大通りには緩やかに動く歩道が設置され、労働者たちの通勤の負担を大幅に軽減している。そして何より大きな変化は、各家庭にまで届けられる魔力の恩恵だった。『アトラ・ワークス』製の小型冷暖房装置が標準装備され、冬の寒さや夏の暑さから人々を守る。

「市長様のおかげでこの冬は凍えずに済みそうだわ」
「うちの爺さんも夏の暑さに参っていたが、今年からは涼しい部屋で楽に過ごせると喜んでおりました」

すれ違う市民から掛けられる感謝の言葉に一つ一つ丁寧に頭を下げて応える。魔法はもはや、一部の特権階級や軍事のためだけのものではない。人々の日常を豊かにし、快適な生活を支えるためのエネルギーなのだ。このアトランシアで、私はそれを証明したかった。

「君はいつだって俺の想像を超えていく」

シオンの感嘆のこもった声に、私は夜の街並みから彼へと視線を移した。

「ふふ、まだまだ発展の余地はあるわ」
「まだ……? これだけのことを成し遂げておいて、まだ先があると言うのか」
「ええ。その一つは教育よ。身分や財産に関係なく、誰もが等しく学べる機会を提供するの。魔導工学、建築、調理、農業……子供たちが自分の興味や才能に合わせて自由に選べる学校を創るわ」
「まったく君ってやつは…。一つの事業を成し遂げたばかりだというのに、もう次の百年先を見ているのか」
「百年なんて言わず、千年先も愛される街にしたいもの」

私の返答に、シオンはとうとう堪えきれないといったように笑い出した。

―――その頃、一人の人物がひっそりと王都を発つ。豪華な紋章も、物々しい護衛もついていない。フードを目深に被った乗り手が駆る一頭の馬、その蹄の音だけがアトランシアへ向かう街道に響く―――。
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