【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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43.中央銀行と独自通貨

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都市を拡張してからアトランシアは一層の活気に満ち、商取引は勢いを増して拡大していた。真に強靭な経済を築くには街の隅々まで血流のように資金を循環させ、新たな事業を生み出す仕組みが必要。私は次の一手を打つ。

「―――以上が『アトランシア中央銀行』設立の趣旨です。街の富を安全に管理し、意欲ある商人や職人への融資を行うことで、経済のさらなる発展を目指します」

市庁舎の会議室。商人ギルドの代表や職人たちの親方を前に、私は熱弁を振るっていた。そして計画の核心に触れる。

「銀行設立に合わせ、アトランシア独自の通貨を発行します。王都の通貨は信用が不安定になりつつある。我々の通貨はこの街の経済的独立の象徴となるでしょう」

計画は満場一致で承認されたが一つ、大きな悩みがあった。市長室に戻り、書類を前に一人、私は頭を抱えていた。銀行の設立準備は順調に進んでいるものの、肝心の通貨名がどうしても決まらない。末永く市民の暮らしに根付くものだからこそ、みんなが愛着を持てる名前にしたい。

「また根を詰めているのか」

穏やかな声と共にドアが開き、シオンが入ってきた。クレイヴァーン領のリンゴをふんだんに使ったアップルパイを持って来てくれた。

「通貨の名前か。難航しているようだな」
「ええ。アトランシアのこれからを象徴するような力強くて希望に満ちた名前……なかなか思いつかなくて」
「ならば、その将来を生きる者たちに尋ねてみてはどうだ? 例えば……子供たちに」
「子供たちに?」

予想外の提案に私は目を瞬かせた。

「ああ。大人が考え出す名前はどうしても理屈や格式にとらわれがちだ。子供たちの発想はもっと自由で、純粋な願いが込められている。通貨名にこれほどふさわしいものはないと思うが?」

シオンの言葉は凝り固まっていた私の思考を180度変えてくれた。市民のための通貨。それも今後を担う子供たちの声を聞くこと以上に素敵な方法があるだろうか。

「……素晴らしい考えです!早速やってみます!」

すぐに市内各所にアンケート箱を設置し「アトランシアの新しいお金につけたい名前」を子供たちから募集した。街中が一種のお祭りのような雰囲気に包まれた。

そして数日後、中央広場は開票結果を待ちわびる人々で埋め尽くされていた。壇上に立った私は箱から溢れんばかりの投票用紙の山を前に、期待と緊張で胸を高鳴らせていた。

「皆さんのご協力に感謝します!それではこれより開票を始めます!」

係員が次々と名前を読み上げていく。キラキラしているから「キラ」、都市の名をもとに「アト」、世界に広がるよう「スカイ」……どれも子供らしい感性に満ちた素敵な名前ばかり。開票が進むにつれて、ある一つの名前に票が集中していることが明らかになった。

「―――ルティ」

最初にその名が呼ばれた時、私は自分の聞き間違いかと思った。しかし、それは一度では終わらない。

「ルティ、一票!」
「こちらもルティです!」
「ルティ、また入りました!」

広場が次第にどよめき始める。壇上の集計係も驚いた顔でこちらを見ている。そして最終結果が発表された。

「……以上をもちまして、投票数第一位―――『ルティ』に決定しました!」

ワァッと割れんばかりの喝采が広場を揺るがした。市民たちは互いに肩を叩き合い、まるで自分のことのように喜んでいる。その中心で、私は顔を真っ赤にして固まっていた。ルティ……それは幼い頃の私の愛称。

「ま、待ってください!私の名前なんてとんでもない!この通貨の主役は市民の皆さんです!私の名前をつけるなんて公私混同も甚だしいです!も、もう一度考え直しましょう!」

必死の訴えに広場の熱気は冷めるどころか、ますます大きくなるばかりだった。

「最高じゃあねえか!俺たち市民と市長の絆の証みてぇでよ」」
「ルティア市長が大好きだから、僕『ルティ』って書いたんだ!変えちゃいやだー!」
「大人になっても忘れたくないの。市長さんが教えてくれた“みんなで支え合う気持ち”」
「今回ばかりはわしらのわがままを聞いてくれ! わしらからの贈り物と思っておくれ!」

四方八方から飛んでくる温かい声に、私は恐縮しっぱなし。その時、隣にいたシオンが優しく微笑みながら言った。

「ルティア。これが市民たちの総意だ。君の名を永久にこの街の通貨に刻みたいと誰もが願っている。君が探していた『力強くて希望に満ちた名前』ぴったりだ」

私は溢れる涙をぐっと堪え、深々と頭を下げた。

「……わかりました。皆さんの想い、謹んでお受けします。このアトランシアの新たな通貨の名は『ルティ』です!」
その瞬間、今日一番の拍手と歓声が青空へと響き渡った。人々と隣に立つ愛する人と共に歩む未来が、黄金色に輝く通貨のように眩しく見えた。
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