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47.背水の陣
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「王宮へ向かう前に、一度実家へ寄ってもらえますか」
変わり果てた王都の姿に家族の安否が一層気にかかっていた。私の追放後、ヴェルフェン家がどのような立場に置かれたか想像に難くない。シオンも静かに頷き、馬車は慣れ親しんだ伯爵家の邸宅へと進路を変えた。
門をくぐると父と母、弟が駆け寄ってきてくれた。
「ルティア! 無事だったか……!」
「お帰りなさい、ルティア。あなたの活躍は噂で聞いていました。我が娘を誇りに思います」
皆、気丈に微笑んでくれたけど、その目元に刻まれた疲労の色は隠しようもなかった。短い再会の中で家族と積もる話をし、家の内情や王宮の閉塞的な空気の一端を聞き出すことができた。私は彼らの手を強く握りしめ、言葉にならない決意を瞳に込めて頷いた。
「オドネル。我が娘をこれまでよくぞ守り抜いてくれた。ヴェルフェン家当主として心から感謝する」
「もったいないお言葉です」
オドネルが短く応え、一礼する。次に父はシオンへ、
「そして、クレイヴァーン伯爵。貴殿の助力なくして、娘が今日この日を迎えることはなかっただろう。この御恩は決して忘れぬ」
「ヴェルフェン伯爵。私はアトランシア市長の意志を尊重し、お供したまでのことです」
家族の温もりに触れ、私はこれから成し遂げねばならないことへの決意をさらに固くした。彼らにしばしの別れを告げ、私たちは再び王宮へと向かった。
王宮に到着すると、一人の侍従が私たちを待っていた。彼の案内で通されたのは謁見の間ではなく応接室。そこには窓の外を眺めながら一人佇むヴォルフの姿があった。一年ぶりに見る彼は以前よりもやつれ、その横顔には苦悩が刻み付けられていた。
「……よく来てくれた、ルティア市長。そしてアトランシア使節団の皆様方。王国皇太子として心から歓迎する」
彼は振り返り、私たちを正式な賓客として迎えた。その声にはかろうじて王族としての威厳が保たれていたが、その瞳は助けを求めるように揺らいでいた。
「すまなかった……。アトランシアで約束したというのに……私の進言はことごとく退けられ……『正式な要請』は父上、国王陛下によって阻まれた。親書も私の独断で受け入れたものだ。父上は君の力を借りることなど王家の恥だと聞く耳を持たない」
ヴォルフは自嘲するように唇の端を歪め、己の無力さを告白した。
「もう手段を選んでいる時間はない。君たちがこの王都で見たものが今の全てだ。これ以上、父上の強情のために民が苦しむのを黙って見ているわけにはいかない」
彼は真っ直ぐに私を見据え、そして私だけでなくシオンやオドネルにも視線を移した。
「これから父上に謁見していただく。私が全ての責任を負う。だが、心してほしい。父上は君を賓客などとは思わないだろう。理不尽な要求を突き付けられるかもしれない。……それでも、この都を見捨てないでくれるだろうか」
それは懇願だった。私は静かに彼の姿を見つめ、
「そのためにここに来たのです。ご案内ください、殿下」
変わり果てた王都の姿に家族の安否が一層気にかかっていた。私の追放後、ヴェルフェン家がどのような立場に置かれたか想像に難くない。シオンも静かに頷き、馬車は慣れ親しんだ伯爵家の邸宅へと進路を変えた。
門をくぐると父と母、弟が駆け寄ってきてくれた。
「ルティア! 無事だったか……!」
「お帰りなさい、ルティア。あなたの活躍は噂で聞いていました。我が娘を誇りに思います」
皆、気丈に微笑んでくれたけど、その目元に刻まれた疲労の色は隠しようもなかった。短い再会の中で家族と積もる話をし、家の内情や王宮の閉塞的な空気の一端を聞き出すことができた。私は彼らの手を強く握りしめ、言葉にならない決意を瞳に込めて頷いた。
「オドネル。我が娘をこれまでよくぞ守り抜いてくれた。ヴェルフェン家当主として心から感謝する」
「もったいないお言葉です」
オドネルが短く応え、一礼する。次に父はシオンへ、
「そして、クレイヴァーン伯爵。貴殿の助力なくして、娘が今日この日を迎えることはなかっただろう。この御恩は決して忘れぬ」
「ヴェルフェン伯爵。私はアトランシア市長の意志を尊重し、お供したまでのことです」
家族の温もりに触れ、私はこれから成し遂げねばならないことへの決意をさらに固くした。彼らにしばしの別れを告げ、私たちは再び王宮へと向かった。
王宮に到着すると、一人の侍従が私たちを待っていた。彼の案内で通されたのは謁見の間ではなく応接室。そこには窓の外を眺めながら一人佇むヴォルフの姿があった。一年ぶりに見る彼は以前よりもやつれ、その横顔には苦悩が刻み付けられていた。
「……よく来てくれた、ルティア市長。そしてアトランシア使節団の皆様方。王国皇太子として心から歓迎する」
彼は振り返り、私たちを正式な賓客として迎えた。その声にはかろうじて王族としての威厳が保たれていたが、その瞳は助けを求めるように揺らいでいた。
「すまなかった……。アトランシアで約束したというのに……私の進言はことごとく退けられ……『正式な要請』は父上、国王陛下によって阻まれた。親書も私の独断で受け入れたものだ。父上は君の力を借りることなど王家の恥だと聞く耳を持たない」
ヴォルフは自嘲するように唇の端を歪め、己の無力さを告白した。
「もう手段を選んでいる時間はない。君たちがこの王都で見たものが今の全てだ。これ以上、父上の強情のために民が苦しむのを黙って見ているわけにはいかない」
彼は真っ直ぐに私を見据え、そして私だけでなくシオンやオドネルにも視線を移した。
「これから父上に謁見していただく。私が全ての責任を負う。だが、心してほしい。父上は君を賓客などとは思わないだろう。理不尽な要求を突き付けられるかもしれない。……それでも、この都を見捨てないでくれるだろうか」
それは懇願だった。私は静かに彼の姿を見つめ、
「そのためにここに来たのです。ご案内ください、殿下」
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