【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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59.次なる手は経済封鎖

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『アトラ・ワークスⅡ』の鮮烈なデビューはアトランシアに大勝利をもたらした。ガレリア帝国の経済的攻勢を退けただけでなく、私たちの技術力を大陸全土に証明する結果になったのだ。それでも私の心は休まることはなかった。

「帝国がこのまま黙って引き下がるとは思えない」

私の呟きに、隣で報告書に目を通していたシオンが静かに顔を上げた。

「ああ。奴らの面子をつぶしたも同然。金と物量で築いた牙城を市民の知恵という力で崩されたのだからな。次はもっと狡猾で、大規模な手を打ってくるだろう」

その予感は数日も経たずに現実のものとなった。オドネルがもたらした緊急報告は大陸の勢力図を一夜にして塗り替える衝撃的な内容。

「お嬢様、帝国が動きました!周辺諸国に対し強力な圧力をかけ、新たな経済連携協定『大陸経済連合』の設立を宣言したとのことです!」

広げられた地図の上には帝国を中心に巨大な円が描かれている。そして、その円から弾き出されるように、ヴェリタス王国だけが孤立していた。

「加盟国間での関税を引き下げ、物資や人の移動を自由化する……聞こえはいいですが、その実態は他国を意のままに操り、我々を締め出すための巨大な壁ですな」

オドネルが深刻な顔で説明を続ける。連合に加盟しなければ、アトランシアの製品には法外な関税がかけられる。帝国は私たちを経済的に孤立させ、窒息させる戦略に切り替えた。

さすがは大陸の覇権国家、腐っても帝国というべきか。技術で負けた恥をなりふり構わぬ政治力でねじ伏せに来るとは。

「武力を用いない経済封鎖……。力ずくでルールそのものを変えてきたというわけね」
「大国が威信をかなぐり捨てて、鎖国じみた真似をする。それだけ我々を恐れているんだ」

地図上の包囲網を見据える。壁は厚いが決して崩せないものではない。決意を固め、傍らに立つシオンへ、

「シオン、あなたに頼みがあるの」
「言わなくても分かっているつもりだ。……外交だろ?」

私の心を読んだかのような彼の言葉に嬉しさがこみ上げる。

「ええ。帝国の圧力に屈している各国の指導者たちを説得し、こちらの陣営に引き込みたい。そのためにはアトランシア市長としての私だけでは力が足りないの。……シオン、あなたも一緒に『ヴェリタス王国代表』として各国を回ってほしい」
「君が指し示す道なら、地の果てだろうと供にする。行こう、ルティア。反撃の狼煙を上げに!」
「ありがとう……! あなたがいれば、きっと包囲網にも風穴を開けられるわ」

逆境こそが好機。帝国の築いた分厚い壁を今度は私たち二人の足で、世界を繋ぐ新たな架け橋へと変えてみせる。私はシオンの手を力強く握り返し、次なる戦場となる大陸全土へと目を向けた。
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