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動揺と衝突
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翌朝もぎこちない時間が流れた。ヴィーネは疲れ切った表情を浮かべ、グラントは私の目を合わせようとしない。私もどう接していいのかわからない。三人の心はもはや収拾がつかないほどに乱れていた。昨日の台所での衝突が契機となり、家の中には張り詰めた空気が満ちている。
「ねえ、グラント」
思い切って声をかけた。彼は居間の窓辺で外を見つめている。振り返ったその顔はやはり疲弊しきっていた。
「なんだ、リリアナ……」
「しばらく、ヴィーネさんと少し距離を置いてみない? 一緒に寝るのも……。もちろん、あなたがそれじゃ眠れないかもしれないしヴィーネさんも不安だろうけど、今のままではお互いを傷つけるだけだわ」
私の提案にグラントは歯を食いしばったように口を結ぶ。きっと彼自身もそんなことはわかっているのだろう。けれど頭が理解していても、心が追いつかない状態なのだ。
「検討はする。けど、正直今の俺には夜になるとヴィーネの存在が必要なんだ。彼女を抱かないと……」
「それが“共依存”なのよ。お互いがいなくちゃ生きられないって思い込んでいる限りいつか破綻がくる。神父さまが言ってたわ」
グラントはその言葉に眉をひそめる。
「共依存、か……。でも、どうやって断ち切ればいい? ヴィーネは両親を亡くした孤独感を抱え、俺は戦火の悪夢に苦しみ続けている。お互いを抱きしめ合うことでしか安定を得られない状態なんだよ」
「そうかもしれない。でも、このままでは私たち夫婦の関係どころか、あなた自身も……。いつまでたっても悪夢から逃れられなくなるわ」
私は強い口調で言い切った。決して責めたいわけではない。ただ、もう黙っていられなかった。グラントは私から視線をそらし、窓の外の遠い空を見つめる。沈黙が痛々しい。
「……まずは、少しずつでもいい。これから先、いきなり全部を断ち切れとは言わない。あなたがまず一人で寝てみるとか、日中はヴィーネさんと距離を置くとか……何か手を打たないと」
「……わかった。考えてみる」
しばらく経ってようやく、グラントは小さくうなずいた。成果を期待していいのかはわからない。何もしないままでは、私たちの家族は完全に崩壊してしまう。それだけは避けたい――そう強く思いながら、私はグラントに背を向けて台所へ向かう。
心はすり減る一方だが、今やらなければ何も変わらない。その覚悟だけは私にもあるのだから。
いつか、この葛藤や痛みが解きほぐされる日は来るのだろうか。戦争が終わってもなお、私たちの中には争いの火種が燻り続けているような気がする。ほんの些細な衝突がいつか大きな悲劇に繋がるのではないか――そんな不安が頭を支配する。
それでも私は歩みを止められない。私の夫はグラントであり、私の家はここにある。この歪んだ三人の関係をどのようにしても正さなければ誰も救われない。私の心は激しく揺れながら狂おしいほどの思いで、“次に進む道”をもがき探し続けた。
「ねえ、グラント」
思い切って声をかけた。彼は居間の窓辺で外を見つめている。振り返ったその顔はやはり疲弊しきっていた。
「なんだ、リリアナ……」
「しばらく、ヴィーネさんと少し距離を置いてみない? 一緒に寝るのも……。もちろん、あなたがそれじゃ眠れないかもしれないしヴィーネさんも不安だろうけど、今のままではお互いを傷つけるだけだわ」
私の提案にグラントは歯を食いしばったように口を結ぶ。きっと彼自身もそんなことはわかっているのだろう。けれど頭が理解していても、心が追いつかない状態なのだ。
「検討はする。けど、正直今の俺には夜になるとヴィーネの存在が必要なんだ。彼女を抱かないと……」
「それが“共依存”なのよ。お互いがいなくちゃ生きられないって思い込んでいる限りいつか破綻がくる。神父さまが言ってたわ」
グラントはその言葉に眉をひそめる。
「共依存、か……。でも、どうやって断ち切ればいい? ヴィーネは両親を亡くした孤独感を抱え、俺は戦火の悪夢に苦しみ続けている。お互いを抱きしめ合うことでしか安定を得られない状態なんだよ」
「そうかもしれない。でも、このままでは私たち夫婦の関係どころか、あなた自身も……。いつまでたっても悪夢から逃れられなくなるわ」
私は強い口調で言い切った。決して責めたいわけではない。ただ、もう黙っていられなかった。グラントは私から視線をそらし、窓の外の遠い空を見つめる。沈黙が痛々しい。
「……まずは、少しずつでもいい。これから先、いきなり全部を断ち切れとは言わない。あなたがまず一人で寝てみるとか、日中はヴィーネさんと距離を置くとか……何か手を打たないと」
「……わかった。考えてみる」
しばらく経ってようやく、グラントは小さくうなずいた。成果を期待していいのかはわからない。何もしないままでは、私たちの家族は完全に崩壊してしまう。それだけは避けたい――そう強く思いながら、私はグラントに背を向けて台所へ向かう。
心はすり減る一方だが、今やらなければ何も変わらない。その覚悟だけは私にもあるのだから。
いつか、この葛藤や痛みが解きほぐされる日は来るのだろうか。戦争が終わってもなお、私たちの中には争いの火種が燻り続けているような気がする。ほんの些細な衝突がいつか大きな悲劇に繋がるのではないか――そんな不安が頭を支配する。
それでも私は歩みを止められない。私の夫はグラントであり、私の家はここにある。この歪んだ三人の関係をどのようにしても正さなければ誰も救われない。私の心は激しく揺れながら狂おしいほどの思いで、“次に進む道”をもがき探し続けた。
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