ショート×ショート

一番目の被害者は、これが連続殺人だとは思わない

　暗闇から、ブラウン管テレビの砂嵐の音が聞こえた。
ーー違う。蛇口から水を出している音だ、目蓋をうっすらと持ち上げると浴槽と床のタイルが視界に映る。

　冷たいタイルに張り付いく様に床に寝そべっているのだなと寝ぼけた事を考えていたら、なぜ風呂場で倒れているのだという状況に、頭が混乱した

「うっ……」

　意識が段々とハッキリしだしたとたん、髪を掴まれ、浴槽に張った水面に勢いよく、顔を打ち付けられた。

ーーバシャッ！「ガボッ！ボボホ！」

　顔から痛みを感じ、口から大量の空気が吐き出す

　苦しくて、呼吸がしようとすると、水が胃や肺に入いり、余計に苦しい、上体を起こしたいが、誰かが後ろから物凄い力で、頭を押さえつけられ、髪がブチブチと千切れていくのがわかった

　手足を縛られ、抵抗出来ないよう足を踏みつけられて固定されている

「……！……!!」

　“また”死ぬのか、旅行でサークルの友達と離島に来て、着いてその日の夜、殺され、死んだと思ったら船に乗り込む直前に戻される。
　ずっとこれの繰り返し、今回は浴槽で溺死、俺が水にトラウマがあるって知っていて、殺ってるんだよなこの犯人、どんだけ俺の事恨んでんだよ！

　でも、前のトイレの水よりましな殺され……。

　……いやいや！ましとかじゃねぇ！死に過ぎて、感覚麻痺ってやがる！

　俺だって死を免れ様と、頭の鋭い探偵ような速水にアドバイス貰い、部屋に全部鍵かけて、扉の前に家具を置いて侵入出来ない様にした、でも破られてる！

　何回目かの死の時だって、部屋に隠し扉見つけて塞い……しまった！塞ぐの忘れてた！やだもう！

　なんだよ！ミステリーハウスって！行こうって言ったの誰だよ！俺だよ！ちくしょう！

　次は戻った時点で腹痛を訴えて離島に行くのをやめよう！それしか……

※※※※

「は、腹がいてぇ！今回の辞め……」
「急にどうした？池田、もう、本土はあんなに離れてんだ今さら引き返せないぞ、待ってろ、今痛み止めの薬……お、おい！」

　海に飛び込みカナヅチだけど全力で泳いだ