『Pâtisserie Hina 〜夢と絆のスイーツ物語〜』

ユキワラシ

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第2章:「揺らぐ心と選択」

第22話:沈む夕陽と落ちる影

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屋上から去った蓮の姿を見送りながら、俺は胸の奥に得体の知れない焦燥感を覚えていた。

陽菜の「分からない」という答えが、俺たちの関係を揺るがせていることは分かっていた。でも、それ以上に、蓮の言葉や態度が気にかかる。

あいつは、昔から冷静で、何を考えているのか分かりにくい男だった。だが、今日の蓮はどこか違っていた。

まるで、何かを決意しているような目をしていた。

俺は屋上のフェンスの方をぼんやりと眺めていた。ふと、風に乗って微かに聞こえた声が耳に届く。

「……全部、終わらせるしかないのか……?」

その声が、蓮のものだと気づいた瞬間――

心臓が凍りついた。

「蓮……?」

フェンスの向こう側、ぎりぎりのところに立っている彼の姿が目に飛び込んできた。

両手を広げ、まるで風に身を預けるかのように、静かに空を見つめていた。

「おい、やめろ!!」

俺は全力で駆け出した。

「蓮! 何をしてるの!? やめて!」

陽菜の悲鳴のような声が響く。

蓮は、ゆっくりと振り返った。その顔は、どこか遠くを見ているようで、いつもの冷静な表情とは違っていた。

「……俺さ、ずっと考えてたんだ。俺は誰にも必要とされてないんじゃないかって」

「何を言ってる!? そんなわけないだろ!」

俺は必死に叫ぶが、蓮は薄く笑った。

「陽菜のこと、好きだった。でも、俺がいなくなったって、何も変わらない。お前がそばにいる。陽菜は、お前を選ぶだろうから」

「そんな勝手なことを言うな!」

俺はフェンスに手をかけ、蓮の腕を掴もうとした。だが、蓮は一歩、後ろへ下がる。

その瞬間、心臓が止まりそうになった。

「蓮!! やめて!!!」

陽菜の叫びが響く。蓮の体が、ゆっくりと後ろへ傾いた――

――その時だった。

俺は全力でフェンスを乗り越え、蓮の腕を掴んだ。

「……っ! 和真!?」

「ふざけるな、こんなことで終わらせてたまるか……!!」

俺は全力で蓮を引き寄せた。だが、バランスを崩した俺も、一緒に落ちそうになる。

「朝倉くん!!」

陽菜が必死に俺の腕を掴む。

「バカ野郎……っ!! こんなことで、何を証明するつもりだ!?」

俺の叫びに、蓮の瞳が揺れる。

「俺は……俺はどうすればいいんだ……?」

その問いに、俺は歯を食いしばって答えた。

「生きろ……!!」

蓮の腕を全力で引き戻す。陽菜の力も加わり、俺たちはようやく屋上へと引き上げられた。

蓮は地面に崩れ落ち、荒い息をついていた。

「……なんで助けた」

「当たり前だろ……お前は俺の幼馴染で、友達なんだよ……!」

俺の言葉に、蓮は目を見開いた。そして、初めて感情をあらわにして――

「……俺は……俺はずっと、誰かにそう言ってほしかったのかもしれない……」

そう呟くと、静かに涙を流した。
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