『Pâtisserie Hina 〜夢と絆のスイーツ物語〜』

ユキワラシ

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第2章:「揺らぐ心と選択」

第23話:沈んだ心と差し出された手

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屋上の冷たいコンクリートの上で、蓮は静かに涙を流していた。

俺と陽菜は、ただその場に座り込んでいた。心臓はまだ早鐘のように鳴っている。

「……ずっと、誰かに止めてほしかったのかもしれない」

蓮の声は、いつもの冷静なものではなく、どこか壊れかけたように震えていた。

俺はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「なら、なぜ最初から誰かに頼らなかった?」

「頼れるわけ、ないだろ……」

蓮は苦笑した。

「俺はずっと一人だった。お前は分かってるだろ、朝倉」

「……ああ。お前は昔から、一人で全部抱え込む癖があった」

「そうだよ。でも、気づいたらもうどうしようもなくて……何もかもがどうでもよくなったんだ」

蓮の拳が震えている。

俺は大きく息を吸い込んだ。

「お前がどれだけ辛かったかは、俺には分からない。でも――」

俺は蓮の肩に手を置く。

「俺たちはここにいる。お前を一人にはしない」

蓮は驚いたように俺を見つめた。

「……本当に、そう思ってくれるのか?」

「当たり前だろ」

俺はそう言い切った。

その時、隣にいた陽菜がそっと蓮の手を握った。

「蓮くん、私も……心配だったよ」

蓮は目を見開いた。

「お前が……?」

「うん。中学の頃は、あんまり話す機会なかったけど、それでも蓮くんが私たちといる時、どこか寂しそうに見えてた」

陽菜の言葉に、蓮はかすかに唇を震わせた。

「俺なんかが……?」

「俺なんか、って言うなよ」

俺は強めの口調で言った。

「お前がどんな奴だろうと、俺たちの前ではそういうこと言うな」

蓮は俯き、そして小さく笑った。

「……お前、本当に昔から変わらないな」

「お前もな」

沈黙が落ちた。

けれど、その沈黙は、さっきまでのものとは違っていた。

少しだけ、温かさを含んでいた。

──そして、この出来事を境に、俺たちの関係はまた少しずつ変わっていくことになる。
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