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12.予定
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「やっぱり、あの一回だけじゃ諦めてくれなかったんですね」
「あぁ。でも以前と比べると、かなり大人しくなってきてると思う」
「らぶらぶ恋人作戦、効果ありですか?」
「想像以上に」
バイトを休んだり、大学で過ごす時間を増やしたりと、智明の過ごし方が変わったというところもあるが、一番はやはりシマの存在である事は疑いようがない。
何より、いつでも頼れる存在がいてくれるという安心感で、智明の心に余裕が出来た。
たまたま近くに居ただけだとはわかっているが、実際に今だって駆けつけてくれた訳で、シマはまるで物語のヒーローである。
感謝を込めてもう一度「ありがとう」と伝えると、ようやく密着していた身体が離れた。
もう少しくっついていたい気もしたが、ストーカー女性を追い返せたのだから、これ以上の接触は本来必要ない。
むしろ、女性が立ち去ってからも、智明が落ち着くまで抱きしめてくれていたという事実に、感謝すべきだろう。
小さく笑っているシマに、名残惜しそうな顔をしていたのがバレた気がして、誤魔化すように「もっと離れろ」というようにぐっとシマの胸に手を当てて押しのけようとすると、逆にその手をぎゅっと握られた。
「せっかくなんで、デートしましょう」
「は?」
「トモさん、今日時間あるんですよね? 俺も今日はフリーなんです。この間のキッチンカーまだ居るみたいなんで、前に迷った方のドーナツ食べません?」
「でも……」
ストーカー女性は既に追い払っている。
恋人デートを見せつける必要はどこにもないはずで、シマの貴重な時間をこれ以上拘束するのは忍びない。
「嫌ですか?」
「全然嫌じゃない!」
だがシマの考えは違う様子で、躊躇う智明を覗き込むその目が、お預けを食らった大型犬の様に見えてしまって、咄嗟に否定してしまった時点で智明の負けである。
嬉しそうなシマの笑顔に、これ以上拒否できるはずがなかった。
智明だって、本当はシマとデートしたいに決まっているのだから。
「良かった! じゃあ、行きましょう」
「あ……職場に連絡とか、しなくて良いのか? 今からでも予約入れる?」
「そんなの良いですって」
「そういう訳には……」
どんなに恋人のように振る舞ってくれていても、シマは「レンタル彼氏」である。
金銭が発生する以上、ある程度きちんとした節度は守るべきだろう。
毎日のやり取りや、今日駆けつけてくれたのだって、シマの好意による所が大きいのだ。
せめて収入面だけでも、力にならなければ落ち着かない。
「じゃあ、今からどんなデートがしたいかメッセ送って下さい」
「サイトの方に?」
「プライベートの方に」
「それって意味ある……?」
「証拠が残るじゃないですか」
プライベートで使っている通信アプリにデートプランの希望を入れても、シマを予約したことにはならないんじゃないかと疑問が沸いたが、自信満々で「証拠が残る」というシマの言葉に「なるほど」と納得する。
智明とのやり取りを職場に見せることで、突発的な契約に対応出来ると言うことなら、大丈夫なのだろう。
「そっか、確かに。わかった、じゃあ送るな」
「……素直すぎて、心配だなぁ」
「何か言った?」
「いーえ、なんでも。ほら、早く早く」
シマの登場と共にポケットにしまい込んでいたスマホを再び取り出し、いつものアプリを疑いなく開く智明を見て、シマがぼそりと何かを呟く。
上手く聞き取れなくて再度要求をしたが、何故かとても良い笑顔で「なんでもない」と首を横に振られてしまった。
同時にデートプランの入力を急かされたので、それ以上の応酬は遮られてしまう。
仕方なく諦めて、前回「レンタル彼氏」のサイトに何を入力したかを思い出しながら、今日の日時と場所、シマを指名した事を打ち込んでいく。
「あぁ。でも以前と比べると、かなり大人しくなってきてると思う」
「らぶらぶ恋人作戦、効果ありですか?」
「想像以上に」
バイトを休んだり、大学で過ごす時間を増やしたりと、智明の過ごし方が変わったというところもあるが、一番はやはりシマの存在である事は疑いようがない。
何より、いつでも頼れる存在がいてくれるという安心感で、智明の心に余裕が出来た。
たまたま近くに居ただけだとはわかっているが、実際に今だって駆けつけてくれた訳で、シマはまるで物語のヒーローである。
感謝を込めてもう一度「ありがとう」と伝えると、ようやく密着していた身体が離れた。
もう少しくっついていたい気もしたが、ストーカー女性を追い返せたのだから、これ以上の接触は本来必要ない。
むしろ、女性が立ち去ってからも、智明が落ち着くまで抱きしめてくれていたという事実に、感謝すべきだろう。
小さく笑っているシマに、名残惜しそうな顔をしていたのがバレた気がして、誤魔化すように「もっと離れろ」というようにぐっとシマの胸に手を当てて押しのけようとすると、逆にその手をぎゅっと握られた。
「せっかくなんで、デートしましょう」
「は?」
「トモさん、今日時間あるんですよね? 俺も今日はフリーなんです。この間のキッチンカーまだ居るみたいなんで、前に迷った方のドーナツ食べません?」
「でも……」
ストーカー女性は既に追い払っている。
恋人デートを見せつける必要はどこにもないはずで、シマの貴重な時間をこれ以上拘束するのは忍びない。
「嫌ですか?」
「全然嫌じゃない!」
だがシマの考えは違う様子で、躊躇う智明を覗き込むその目が、お預けを食らった大型犬の様に見えてしまって、咄嗟に否定してしまった時点で智明の負けである。
嬉しそうなシマの笑顔に、これ以上拒否できるはずがなかった。
智明だって、本当はシマとデートしたいに決まっているのだから。
「良かった! じゃあ、行きましょう」
「あ……職場に連絡とか、しなくて良いのか? 今からでも予約入れる?」
「そんなの良いですって」
「そういう訳には……」
どんなに恋人のように振る舞ってくれていても、シマは「レンタル彼氏」である。
金銭が発生する以上、ある程度きちんとした節度は守るべきだろう。
毎日のやり取りや、今日駆けつけてくれたのだって、シマの好意による所が大きいのだ。
せめて収入面だけでも、力にならなければ落ち着かない。
「じゃあ、今からどんなデートがしたいかメッセ送って下さい」
「サイトの方に?」
「プライベートの方に」
「それって意味ある……?」
「証拠が残るじゃないですか」
プライベートで使っている通信アプリにデートプランの希望を入れても、シマを予約したことにはならないんじゃないかと疑問が沸いたが、自信満々で「証拠が残る」というシマの言葉に「なるほど」と納得する。
智明とのやり取りを職場に見せることで、突発的な契約に対応出来ると言うことなら、大丈夫なのだろう。
「そっか、確かに。わかった、じゃあ送るな」
「……素直すぎて、心配だなぁ」
「何か言った?」
「いーえ、なんでも。ほら、早く早く」
シマの登場と共にポケットにしまい込んでいたスマホを再び取り出し、いつものアプリを疑いなく開く智明を見て、シマがぼそりと何かを呟く。
上手く聞き取れなくて再度要求をしたが、何故かとても良い笑顔で「なんでもない」と首を横に振られてしまった。
同時にデートプランの入力を急かされたので、それ以上の応酬は遮られてしまう。
仕方なく諦めて、前回「レンタル彼氏」のサイトに何を入力したかを思い出しながら、今日の日時と場所、シマを指名した事を打ち込んでいく。
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