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17.友愛
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シマとの「彼氏」としてではなく、「友人」としてのデートは、思いの外楽しかった。
彼氏を演じてくれている時の、キザでくすぐったくなるような甘い綿毛で包み込む様な台詞や行動は控えめだが、優しくて世話焼きなのはシマの元々の性格らしく、演技をしていないのに友人と言うよりは恋人同士の距離感に近い。
カフェで甘い物を食べるのが一番の目的ではあったが、食べ終わった後感想を言い合いながら、腹ごなしに街中や公園などを散歩するまでがルーティンとなり、なんだかんだで結構な時間を一緒に過ごしている。
土日のデートではもちろん、友人同士の関係であるはずの平日にも、シマは「髪に花びら付いてるよ」と、自然と智明の頭に触れるだけでなく、チュっと軽いキスまでしてくるし、事あるごとに肩や腰に手が回る。
頻繁に会うようになっても、毎日のメッセージのやり取りは続いているし、土日だけでなく平日もその調子で会っているとなると、どう考えても「らぶらぶカップル」でしかない。
ストーカー女性の視線が消えたわけではないので、作戦は続行されているという事もあって、智明の指定したオプションを忠実に守ってくれているだけかもしれない。
だが、正直それは土日の「レンタル彼氏」の時だけで十分なのである。
平日の、「友人」としての外出にまで持ち込むのはサービス過多で、智明の心臓が持たない。
シマのいう「友達」と、智明の思う「友人」の概念には、かなりの乖離があるように思われた。
ただ、シマには想う相手がいるとわかっていても、どうしても惹かれてしまう智明に、それを強く拒否する事もできない。
加えて、長く一緒に居ればいるほど、見た目の印象は真反対であるはずのシマと、大好きだった幼馴染みの和志が、やけに重なる機会が増えていた。
いつもなら、何度か会って話す内に「違う人間だ」と落胆する事ばかりだったのに、シマと一緒に居ると和志の傍に居た頃の、あの心地よさが増すばかりで戸惑う。
忘れようと思って地元を離れたのに、シマに会うたびに和志の事ばかり思い出してしまっている。
(好きになっちゃダメなヤツほど、好きになっちゃう傾向があるのかな……不毛過ぎる)
シマを好きになっても、報われることはない。
だってシマがカフェを巡っているのは、想い人をいつか楽しませるための、下準備でしかないのだから。
智明と一緒にいてくれるのは、単に顧客を超えて話が合う友人として付き合っても良いと思える程度のものであり、決して恋人に昇格する可能性があるからではない。
優しいシマの事だ。ストーカー被害に遭っている智明を、哀れんでくれている所も大きいだろう。
自分から離れる選択が出来た和志の時より、恋人を演じ続けながらも絶対に好きになってはならないシマの方が、更に智明にとって辛い状況なのかもしれなかった。
(勘違いは、しない)
デートを重ねる度に、そう自分に言い聞かせる機会がどんどん増えてきていて、笑い話にもならない。
カフェでケーキを頬張る智明を見て、シマが優しい表情で「好き?」と、まるで自分への愛情を強請る様に聞いてくる姿に、平静を装うのが精一杯なのだ。
シマのその愛おしいものを見る様な目は、きっと智明を通り抜けた先に居る「いつか一緒に来たい好きな人」に向けられているのだとわかっていても、胸が高まってしまうのを止められない。
だが、智明ばかりが翻弄される日々は、長くは続かなかった。
いや、この幸せな日々が一ヶ月弱続いただけで、十分だったと言えるだろう。
幸せすぎたから、ダメだったのかもしれない。
もっと警戒して然るべきだったのに、気を緩めてしまった。
彼氏を演じてくれている時の、キザでくすぐったくなるような甘い綿毛で包み込む様な台詞や行動は控えめだが、優しくて世話焼きなのはシマの元々の性格らしく、演技をしていないのに友人と言うよりは恋人同士の距離感に近い。
カフェで甘い物を食べるのが一番の目的ではあったが、食べ終わった後感想を言い合いながら、腹ごなしに街中や公園などを散歩するまでがルーティンとなり、なんだかんだで結構な時間を一緒に過ごしている。
土日のデートではもちろん、友人同士の関係であるはずの平日にも、シマは「髪に花びら付いてるよ」と、自然と智明の頭に触れるだけでなく、チュっと軽いキスまでしてくるし、事あるごとに肩や腰に手が回る。
頻繁に会うようになっても、毎日のメッセージのやり取りは続いているし、土日だけでなく平日もその調子で会っているとなると、どう考えても「らぶらぶカップル」でしかない。
ストーカー女性の視線が消えたわけではないので、作戦は続行されているという事もあって、智明の指定したオプションを忠実に守ってくれているだけかもしれない。
だが、正直それは土日の「レンタル彼氏」の時だけで十分なのである。
平日の、「友人」としての外出にまで持ち込むのはサービス過多で、智明の心臓が持たない。
シマのいう「友達」と、智明の思う「友人」の概念には、かなりの乖離があるように思われた。
ただ、シマには想う相手がいるとわかっていても、どうしても惹かれてしまう智明に、それを強く拒否する事もできない。
加えて、長く一緒に居ればいるほど、見た目の印象は真反対であるはずのシマと、大好きだった幼馴染みの和志が、やけに重なる機会が増えていた。
いつもなら、何度か会って話す内に「違う人間だ」と落胆する事ばかりだったのに、シマと一緒に居ると和志の傍に居た頃の、あの心地よさが増すばかりで戸惑う。
忘れようと思って地元を離れたのに、シマに会うたびに和志の事ばかり思い出してしまっている。
(好きになっちゃダメなヤツほど、好きになっちゃう傾向があるのかな……不毛過ぎる)
シマを好きになっても、報われることはない。
だってシマがカフェを巡っているのは、想い人をいつか楽しませるための、下準備でしかないのだから。
智明と一緒にいてくれるのは、単に顧客を超えて話が合う友人として付き合っても良いと思える程度のものであり、決して恋人に昇格する可能性があるからではない。
優しいシマの事だ。ストーカー被害に遭っている智明を、哀れんでくれている所も大きいだろう。
自分から離れる選択が出来た和志の時より、恋人を演じ続けながらも絶対に好きになってはならないシマの方が、更に智明にとって辛い状況なのかもしれなかった。
(勘違いは、しない)
デートを重ねる度に、そう自分に言い聞かせる機会がどんどん増えてきていて、笑い話にもならない。
カフェでケーキを頬張る智明を見て、シマが優しい表情で「好き?」と、まるで自分への愛情を強請る様に聞いてくる姿に、平静を装うのが精一杯なのだ。
シマのその愛おしいものを見る様な目は、きっと智明を通り抜けた先に居る「いつか一緒に来たい好きな人」に向けられているのだとわかっていても、胸が高まってしまうのを止められない。
だが、智明ばかりが翻弄される日々は、長くは続かなかった。
いや、この幸せな日々が一ヶ月弱続いただけで、十分だったと言えるだろう。
幸せすぎたから、ダメだったのかもしれない。
もっと警戒して然るべきだったのに、気を緩めてしまった。
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