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35・・・噂話

悠が街に来てから一週間がたった頃、街ではとある噂が広まっていた。

その事件の噂は街中でささやかれるように始まり警備隊、商人、農民、冒険者そしてついには城周辺の貴族区に住む貴族たちにまで広がりその話で街は持ちきりになっていた。その、広まった噂というのはスラム街で人が次々に人が死んでいく、というありきたりなものだった。

本来スラムでは人が死ぬのは日常的な事で、街の規模が大きくなればスラムも大きくなる。ましてやここはクラストル国最大の領土を誇るシュベール領、その主都テアリスだ周りの村、町からつぎつぎにスラム住民は集まってくる。スラムが大きく人口が増えれば死ぬ人間が出るのは当たり前だ。
なら、なぜこんなにも貴族区でまで噂されるほど広がったのかといえば。それは死んだ言われている人間とその人数が異常だったためだ。

その死んでいった人間とは・・・とある大きな組織の幹部達とその構成員、合わせて２００人以上、しかもそれがここ一週間ほどで行われ・・・たった一人の少女の手によるものだと言う噂だったからだ。

そしてその噂は今夜も。

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とある部屋の中、時間は真夜中過ぎの深夜、辺りは真っ暗だ。部屋には一本のろうそくの明かりしかない。その部屋に男と女二つの人影。
　しかしこのふたり、両方が異なる雰囲気を醸し出していた。男の方はその筋肉で盛り上がった巨体を窮屈そうに椅子に収め、腰かけた状態から微動だにさせない。しかし口だけはしきりに動かし喋り続けている。
女の方は見た目どう見ても１０歳ほどの少女にしか見えない。その少女は男の目の前に立ち、手にもった短剣を相手の首に軽く添えている。
そして少女は一切喋らずに相手を見ているだけだ。周りに動く者は誰もいない。

「はい、私がこの館の主ドグルです。はい、ここは組織のスラム街支部です。はい、私は今までの騒動を上へ報告しました。はい、この主都テアリスには国の中での本部が有ります。いいえ、私はその場所までは知りません。。。で、ですが、必ず本部は街の中枢とつながっています。そして本部には組織の一角そ担うお方が取り仕切っているはずです。・・・・それが我ら裏ギルド『メフィスト』はそれほど巨大な各国に散らばっている組織です。」

俺の名前はドグル、国最大のスラムを仕切り、『メフィスト』の支部長をやっている。そんな俺がなぜこんなにもべらべらと組織に付いて口を開いているかといえば。
それは・・恐怖だ俺は、怖がってしまった。

それも目の前の少女にでは無い、少女は何にもしない、最初から何もしゃべらない。ただ館に居た護衛を皆殺しにしここまでたどり着き俺を座らせ、首に短剣を添える。ただそれだけだ。確かにその間一切の反撃も自らの行動できない、いやしようと思わせない。しかもその添えているだけの短剣がまるで水車で使われるギアの様すっぽりとはまり、体の一部張り付いてしまったようにそこにある。恐らく俺が動いて短剣が離れれは首から動体も離れてしまうだろう。そう実感させられているのは恐ろしい確かに恐怖に値する。

だがそんなのは今俺の頭の中で喋っているモノに比べたらかわいいものだ。
そう俺の頭の中で話しているこの不気味な女よりは。。。

そして俺は持っている情報をすべて吐き出した。すると少女が俺に背を向けて歩いて行く。ぐるん　少女が急に天井を歩きだした・・・ああそうか俺が動かなくてもそっちが動けば、
ギアは回るんだ。。。

どさっ

首が落ちる。

〈うふ、落とした首は誰のモノ？赤い足跡たどって行くと、手招きしている体が迎える。うふふふ〉

フッ

部屋の唯一の明かりが消える。

その翌日街では。

「またスラムで人が死んだらしいぞ。」「なんでも屋敷の中の人間皆殺しにされたらしいぞ」「全員喉を斬られていたらしいぞ」「これで何人になるんだ？」「街にまで来るんじゃ。」「無差別なのか？」「いやこれは何でも『メフィス「おい！！それ以上はやめておけ」

とさまざまな噂が広がって行った。

そして一方では逆に

「物騒になったねぇ、もうすぐで領主様が主催する剣闘祭が始まるっていうのにねぇ」
「ええ毎年のお祭りだからね、近くの村や街から勝ち上がった人達が一堂に集まって主都で一番の強者を決める。大会だからねぇ」

今街はこれから始まるお祭りに向け盛り上がっていた。

「まあ一般人の優勝は難しいだろうけどねぇ」
「ああ優勝は今回も守護騎士団、団長のグリムド様だろうからね」
「あの巨体で大斧と魔法まで使うんだテアリス最強はだてじゃないよ」
「貴族様がたも参加されるんで街も潤うし領主さまの眼にとまれば王都へ栄転が叶うって話だし」
「ただ何でも王都は忙しいらしくて全く帰ってこれないし手紙も帰ってこないって話だよ」

どうやら優秀な者はこの大会で引き抜かれ王都に行けるらしい。

「でもその分領主さまから毎年報償金が貰えるんだろ？うらやましいねぇ内のバカ息子も領主様のお眼鏡に叶ってみせると言ってたけど、結局予選の落ちよ？」
「うちのも一緒だよ！」
「「アハハハハハ」」


とこれから始まる祭りにの話でスラムの噂は薄れて行った。