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大不況 2
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「まあ、週五でセックスしてれば一ヶ月で貯まるよ!」
「無茶言うなぁ! ぼくの気も知らないで!」
ラビは簡単に言ってのけるが、ミリーは人間とセックスをしたことがない。
「ていうか、ミリーってよくそれで元気に動けるよね。おれ、三日も出して貰えなかったらフラフラだよ」
「それはほら、今はサプリとかもあるし……ほんとにキツかったらちょっとだけ人間界行ったりはするし……」
「そんなんじゃ持たないでしょ」
一応淫魔用に開発された栄養補給サプリもあり、ミリーはそれを愛用している。それでは足りなくなって限界になると、人間界へ行って眠ってる人間にこっそりキスをしたり、歓楽街へ赴いて人間同士の営みを覗いて精気の受動喫煙をキメていた。
精気というのは、性交渉そのもの以外でもかろうじて摂取することはできる。ただ、カラカラに喉が渇いた状態で蛇口からぽたぽたとこぼれる水滴を舐めているようなものだ。
「効率わっっる! そんなこと頑張るより人間嫌い克服したほうがいいじゃん」
「ムリ! だって人間ってなんか生あったかくてしっとりしてて気持ち悪いし……汗かくのも苦手だし……とにかく無理なんだよぉ……」
淫魔は人間よりも基礎体温が低く、肌は陶器のようにさらりとしている。ミリーはとにかく人肌というものが苦手だった。
「セックスであっつくなっていくのが気持ちいいんだよ、ミリーもそのうちわかるよ」
「わからなくていい……」
とにかく、こんな辞令は無茶だ。けど、このまま自分の姿を変えられて使い捨てられて死ぬのも嫌だ。ミリーはどうしよう、と頭を抱えた。
ふたりが掲示の前で話していると、その辞令を出した本人が通りかかった。
「おやミリーさん、ちょうどいいところに。探していたんですよ」
「司令官」
その男性とも女性ともつかない中性的な見た目の悪魔は、皆から司令官と呼ばれていた。魔界の上層部でもかなり立場のある存在で、するりと上に向かって伸びたツノとクールな性格、物腰の柔らかさの中に潜むサディスティックさで人気の悪魔だ。
「その辞令ですけどね、指定の人物についての資料をお渡ししておきます。あなたがなかなか来ないものですから、遅くなってしまいました」
「確かに、指定の人間からって書いてありますね」
そこはミリーもラビも気になっていたところだった。渡された何枚かの紙には、とある人間の詳細な情報が記載されていた。ふたりがそれをまじまじと覗き込む。
「この人に会うんですか?」
ミリーがそう聞くと、司令官は眼鏡をくいっと上げ、自信ありげに頷いた。
「ええ。このたび怠惰な淫魔たちを効率的に働かせるべく開発された『百発百中☆運命のヒト選出システム』が算出した、人間界で最もミリーさんとのカラダの愛称バッチリ・エネルギー回収効率バツグンのお相手です」
「なんかちょいちょいバカっぽい単語入ってくるな……」
魔界はたびたびこういう知性の欠けたワードが飛び交うが、いちいち気にしてはならない。ラビのボヤキは聞こえていないという勢いで司令官は語る。
「この画期的なシステムによって選び抜かれた人間ですから、ミリーさんも大満足間違いなしですよ」
「うう……そうは言っても、苦手なものは苦手なんですよぉ……」
「その苦手を克服し得る運命のヒトなのです! さあ、そうと決まればサッサと行ってらっしゃい! 明日には出発しないとアナタ使い魔に降格ですよ!」
「あ、明日!? ほんとだ、掲示日から三日後って明日までじゃん! ど、どうしようラビちゃん」
「どうしようも何もないでしょ。淫魔が一度も人間とセックスできずに降格されて使い捨ての魔力として消費されるなんて、笑い話にもなりゃしないよ」
そう言葉にされてしまうと、ラビの言う通りである。多様性の世の中であるが、根本的な生き物としての生き方は変えられないのだ。
ミリーだって死にたくはない。本当はラビのようになれたらと思うところもあるし、ミリーはラビが友達として大好きで、自分がダメダメなせいで死に別れるなんて悲しすぎる。
これは自分を変えるチャンスだと、ミリーは覚悟を決めて人間界へ飛び込むことを決意するのだった。
「無茶言うなぁ! ぼくの気も知らないで!」
ラビは簡単に言ってのけるが、ミリーは人間とセックスをしたことがない。
「ていうか、ミリーってよくそれで元気に動けるよね。おれ、三日も出して貰えなかったらフラフラだよ」
「それはほら、今はサプリとかもあるし……ほんとにキツかったらちょっとだけ人間界行ったりはするし……」
「そんなんじゃ持たないでしょ」
一応淫魔用に開発された栄養補給サプリもあり、ミリーはそれを愛用している。それでは足りなくなって限界になると、人間界へ行って眠ってる人間にこっそりキスをしたり、歓楽街へ赴いて人間同士の営みを覗いて精気の受動喫煙をキメていた。
精気というのは、性交渉そのもの以外でもかろうじて摂取することはできる。ただ、カラカラに喉が渇いた状態で蛇口からぽたぽたとこぼれる水滴を舐めているようなものだ。
「効率わっっる! そんなこと頑張るより人間嫌い克服したほうがいいじゃん」
「ムリ! だって人間ってなんか生あったかくてしっとりしてて気持ち悪いし……汗かくのも苦手だし……とにかく無理なんだよぉ……」
淫魔は人間よりも基礎体温が低く、肌は陶器のようにさらりとしている。ミリーはとにかく人肌というものが苦手だった。
「セックスであっつくなっていくのが気持ちいいんだよ、ミリーもそのうちわかるよ」
「わからなくていい……」
とにかく、こんな辞令は無茶だ。けど、このまま自分の姿を変えられて使い捨てられて死ぬのも嫌だ。ミリーはどうしよう、と頭を抱えた。
ふたりが掲示の前で話していると、その辞令を出した本人が通りかかった。
「おやミリーさん、ちょうどいいところに。探していたんですよ」
「司令官」
その男性とも女性ともつかない中性的な見た目の悪魔は、皆から司令官と呼ばれていた。魔界の上層部でもかなり立場のある存在で、するりと上に向かって伸びたツノとクールな性格、物腰の柔らかさの中に潜むサディスティックさで人気の悪魔だ。
「その辞令ですけどね、指定の人物についての資料をお渡ししておきます。あなたがなかなか来ないものですから、遅くなってしまいました」
「確かに、指定の人間からって書いてありますね」
そこはミリーもラビも気になっていたところだった。渡された何枚かの紙には、とある人間の詳細な情報が記載されていた。ふたりがそれをまじまじと覗き込む。
「この人に会うんですか?」
ミリーがそう聞くと、司令官は眼鏡をくいっと上げ、自信ありげに頷いた。
「ええ。このたび怠惰な淫魔たちを効率的に働かせるべく開発された『百発百中☆運命のヒト選出システム』が算出した、人間界で最もミリーさんとのカラダの愛称バッチリ・エネルギー回収効率バツグンのお相手です」
「なんかちょいちょいバカっぽい単語入ってくるな……」
魔界はたびたびこういう知性の欠けたワードが飛び交うが、いちいち気にしてはならない。ラビのボヤキは聞こえていないという勢いで司令官は語る。
「この画期的なシステムによって選び抜かれた人間ですから、ミリーさんも大満足間違いなしですよ」
「うう……そうは言っても、苦手なものは苦手なんですよぉ……」
「その苦手を克服し得る運命のヒトなのです! さあ、そうと決まればサッサと行ってらっしゃい! 明日には出発しないとアナタ使い魔に降格ですよ!」
「あ、明日!? ほんとだ、掲示日から三日後って明日までじゃん! ど、どうしようラビちゃん」
「どうしようも何もないでしょ。淫魔が一度も人間とセックスできずに降格されて使い捨ての魔力として消費されるなんて、笑い話にもなりゃしないよ」
そう言葉にされてしまうと、ラビの言う通りである。多様性の世の中であるが、根本的な生き物としての生き方は変えられないのだ。
ミリーだって死にたくはない。本当はラビのようになれたらと思うところもあるし、ミリーはラビが友達として大好きで、自分がダメダメなせいで死に別れるなんて悲しすぎる。
これは自分を変えるチャンスだと、ミリーは覚悟を決めて人間界へ飛び込むことを決意するのだった。
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