降格処分寸前の人間嫌い淫魔ちゃん♂は頑張って働くことになりました

おさかな

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フェロモンの誘惑

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「ただい……ま?」
「おかえりなさい、たかいさん」
「おかえりなさーい♡」

 帰宅した田加井がただいまの挨拶を言いながら戸惑ったのは、部屋で待っているはずの悪魔がひとり増えていたからだ。

「お邪魔してます」
「ああ、君がミリーの言ってた友達かな?」
「そうです、ラビって言います」

 突然の登場だったが、ミリーから話を聞いていたからさほど驚かずに済んだ。家に悪魔がいるなんて非現実的だと思っていたが、またも目の当たりにするともう受け入れる他なかった。

「人間界に悪魔っていうのはそんなに居るものなのか」
「人が見えていないだけで結構居ますよ。メインの仕事場ですからね」
 確かに、人の心や精気を食べて生きるものたちならば、人間の世界のそこらじゅうに居たっておかしくはない。田加井は納得した。
「人に擬態している悪魔たちも居ますし、色々ですよ。こっちにあまり来たことがない悪魔なんてミリーくらいのものです」
「そ、そんなことないよう」

 悪魔たちはもちろん悪魔なので、そんなに勤勉に働く者は多くなかった。魔界がまだエネルギーに溢れ豊かだった時期は、仕事を面倒くさがったりして積極的に人間界へは行かない者たちもたくさん居た。
 しかしここ数年の間でそうも言ってられなくなり、ほとんどの悪魔たちは働きに出ているし、働かない者たちは降格処分を受けたり、処分を待たずしてその命を落とす者まで居るのだ。

「あんたみたいのが居たのは不況になる前の話でしょ。今ほんとやばいんだから」
「悪魔の世界にも不況なんてものがあるのか」
「エネルギー資源の枯渇は深刻なんだそうです。だから僕も働かなきゃいけなくなって……」
「どこも世知辛いな……」

 改めてミリーの境遇を理解した田加井。退勤後の夕飯を食べながらするそんな会話は、まるで普通の会社員同士の飲み会トークのようだった。話し相手は悪魔だというのに、そんなこともあるものかと少ししんみりとする。


「お疲れでしょうから、おれのことは気にせずいつも通りゆったりしてください。お風呂も用意してありますよ」
 ラビがそう言うのでそのままいつも通り夕飯を済ませ、促されるまま既に準備されていた風呂も済ませた。

 風呂から上がると、ふたりの悪魔は田加井のベッドの上でじゃれあい、もつれあっていた。かわいい喘ぎ声が時折あがり、くすくすと笑い合うその様子はとてもいやらしい。いつもの自分の部屋の空気がすっかりピンク色になり、田加井はくらりと目眩がするような気分だった。

「あ、たかいさん……っ」
「お湯は気持ち良かったですか? こっちもほら、おいしそうになってきてますよ」
「あんっ、らびちゃ……んぅっ♡」

 どうやら田加井が風呂に入っている間にラビがミリーをすっかり『そういう状態』にまで仕上げてくれていたらしい。もともと露出の多い服装だからそれが乱れているということはないが、身体中をまさぐられてミリーはすっかり敏感になっているらしい。ラビの細い指先がつう、とつま先をなぞるだけでぴくぴくと震えている。

「……っ、これは」
 田加井にとっては視覚的な刺激だけではない。はあはあと息を乱したミリーから醸し出される濃いフェロモンの香りが部屋に満ちていて、抗うことは難しい。

 そうか、と田加井は気づく。ラビがなんのためにここへ来たのかわからなかったが、そのときになってようやく理解した。要するに、まだセックスができていないふたりに発破をかけに来たのだ。
 ミリーをすっかりその気にさせて、据え膳として田加井の前に用意する。それが手っ取り早かったのだと、田加井は自らの身を持って実感する。

「ね、すごいでしょ? 淫魔のフェロモンの誘惑って、ほんの少しこうしてスイッチ入れてあげるだけでこんなになっちゃうの」
「あっ……う、んぅ……♡♡」

 ラビはそう話しながらミリーの耳元にちゅっとキスをする。それだけでミリーは身動ぎ、小さな喘ぎ声を漏らす。

「たかい、さん……?♡」
「……ミリー、かわいいな」

 田加井はもう自分を抑えられる気がしなかった。理性のタガに、ミリーの手がかかっている。その頼りなく細い指だけで、簡単に外されそうになっているのがわかる。
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