降格処分寸前の人間嫌い淫魔ちゃん♂は頑張って働くことになりました

おさかな

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もっと知りたい

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「まあ白宝石はすごいものだけど、ノルマにはまだ足りてないのは事実なので。あとはお二人でどうぞ励んでくださいね♡」
「えっ、ラビちゃん帰っちゃうの?」
 ラビはそのままフワッと浮かび、去ろうとしていた。
「いつまでもおれが居てもしょうがないでしょ。おれが居なくても頑張るんだよ~」
「……っ、うん!」
「お、いい返事。それじゃ田加井さん、ミリーをよろしくお願いしますね。たまに様子見に来るので」
「ああ。色々とありがとう、ラビくん」

 たくさん二人の背中を押してくれたラビはひらひらと手を振り魔界へと帰っていった。ラビにはラビの仕事があるし、ミリーのことを報告する必要もあった。優秀で忙しいのに手助けしてくれるラビにミリーは感謝しかなかった。

 協力してくれるラビのためにも、そして何より自分のために、これからもっともっと頑張ろうと気合いを入れ直すミリー。そんなミリーの横顔を、田加井は愛おしそうに見つめていた。

「綺麗だな、真珠みたいだ」
「しんじゅ?」
 ミリーが持ったままの白い宝石を見て、田加井が言った。
「人間の世界では宝石に名前があるんだよ。真珠は海にいる貝からできるんだ」
「海は知ってます! 見たことはないけど」
「そうか。初めて見たら驚くかもしれないな」

 人間と悪魔では生きている環境が全然違うということに、話せば話すほどに気づかされる。それが楽しくて、知らないことにわくわくして輝く紫色の瞳が綺麗でかわいくて、田加井はもっとたくさんのことを教えてあげたくなる。

「……もっと知りたいです。人間のことも、たかいさんのことも」

 ミリーも田加井の気持ちに寄り添っていた。怖くても苦手でも、それでも触れたくなる、不思議な人。
 想い合う、なんてことはよくわからない。この不思議な感覚がもしそうなのだとしたら。想い合うことができてずっとそれが続くとしたら。

 それはきっと幸せなのかもしれない。そんな風に思った。

「ミリーの流した涙が、これになったんだよな」
「はい、そうみたいです」
「……綺麗だ」
 そっと頬に触れようと伸ばされた手にミリーはやはりぴくっと小さく反応してしまうが、それでもじっと田加井の目を見つめて、触れられることを受け入れる。
「……ごめん、急に触って」
「い、いいんです。たかいさんなら。反射でびくってなっちゃいますけど、こわく、ないから」
 長年苦手としてきたものが急に平気になることはない。頭では田加井をもう怖くないと理解していても、身体が反応してしまう。

「もっと触れて、慣れて、いきたいです。たかいさんと、もっとちゃんと、したいから……」
「……ミリー」
 一度抱いた後だからなのか、田加井はミリーがどうしようもなく愛おしい。冷静に見るとミリーはわ田加井の好みからはかけ離れているというのに、素直な物言いも、それに恥じらって染まるピンクの頬も、かわいくてたまらない。

 田加井の無骨な手でミリーが昨日涙を流した目元を優しく撫でると、誘うように長いまつげが伏せられる。目を閉じたまま僅かに顔を上げて待っているミリーは、そんなことをしているのにドキドキとひどく緊張しているのが目で見てわかるくらいだった。

「ミリー、かわいい」
「ん、ん……っ♡」
 あまり煽るような声をあげないでほしい。田加井は切にそう思う。
 相変わらず身体は重くてだるくて、下半身は今日はどうにもなりそうにない。それでもキスは止められなかった。

「……腹は減っているのか?」
「いいえ。昨日たくさん、もらいましたから……」
「ミリーが満たされているなら、それでいい」
 求められている必要なものがあげられないのは辛いけれど、今がそうではないのならそれでいい。田加井はセックスは出来ないかわりに、ミリーの細い身体をぎゅっと抱き締めた。

「……はーー、こんなに身体が追いつかない自覚があるのに、それでも抱きたいなんて思うことがあるんだな……」
 田加井はミリーの肩に頭を預けて項垂れて、そうぼやいた。
「無理させちゃって、ごめんなさい。でも……そう思ってくれるのは、なんだか嬉しいです」
 ミリーは優しく田加井の広い背中をよしよしと撫でる。求められるのはまだ照れくさいけれど、嬉しい。
 ミリーはこれでようやく淫魔らしくなれたのだとじんわり思えた。

 田加井はひとり、ミリーを抱き締めながら今日からもっと精のつくものを摂ろうと、頭の中で計画するのだった。
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