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葵と二人の二週間
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「もちださーん♡エッチしよ♡♡」
「享さん、もう次のスケジュールまであまり時間が……」
「え~~、じゃあせめてイチャイチャしよーよ♡」
「少しだけなら、いいですよ」
持田と享は元々ファンで享推しだったことを告白させられてからというもの、より親密…と言っていいものか、距離感の近い関係になっていた。
特別親しくなったというより、享が持田の反応を面白がっている面が大きい。享は新しいオモチャを得たように持田に構う。
「ねえ、葵もする?」
「……僕は、いい。ちょっとスタッフさんのところ行ってくるから、二人はゆっくりしてて。移動の時間までには戻るから」
「ふーん?わかったよー」
一方の葵は、享に声をかけられてもこんな調子で、初めてした日からセックスはしていない。時折控えめにキスはねだるものの、気まぐれに顔を背けて切り上げて、何処かへ居なくなってしまう。
(……したくはないのなら、私も無理にしようとは言わない。享さんに葵さん、どちらの望むことも叶えてやりたいのだから)
そう思いながらも、葵のことを気にかけていた。元気でハキハキと言いたいことを言う享に比べ、葵は控えめでいつも一歩後ろに見を引いているような子だ。もしもうまくしたいことを求められずにいるのなら、それをうまく引き出してやりたいとも思う。
そんな風に考えているうちに、すぐに葵と二人きりになるタイミングがやってきた。享が海外で催されるダンスライブイベントへ出演する日程が迫っているのだ。
アメリカでの仕事は経験豊富で英語が話せる前マネージャーの草野が対応することになっている。
「海外でのサポートなんかは僕に任せてね!イベント後も現地メディアの取材とかちょっとした撮影とかもガンガン入ってるから」
「はーい、大忙しだな~。ちゃんと美味しいご飯連れて行ってくださいね~?」
「あはは、それもちゃんと予定に入れてあるよ」
なんやかんやと仲が良さそうな享と草野は当然うまくやるだろう。問題は自分たちのほうだと持田は考えた。
「葵くんのほうも、享くんが居ない間はコンサートのゲスト出演やソロでの歌番組収録が入ってるからね。持田さんにはもういちいち確認しなくても大丈夫だとは思うけど」
「いえ、ありがとうございます、草野さん」
享が居ない間もソロでの仕事が各々目白押しだ。いつもよりは緩やかにスケジュールが組まれているものの、きちんとしたオフは一日程度だった。
「じゃ、二週間楽しんでくるよー!いってきまーす」
「お気をつけて」
そうして準備は着々と進み、享は海外仕事に旅立っていった。
「二週間、二人ですね。よろしくお願いします」
「……はい、マネージャー」
葵は何か考えているようだったが、何も言わなかった。
まるで普通のアイドルとマネージャーのような仕事の日々が続いたある日。これはこれで、というか、これこそが正しいかたちだと持田は思考を切り替えて仕事に励んでいたところだった。
その日はある有名なジャズバンドとのコラボコンサートの本番で、葵自身も新しいジャンルの曲に挑戦して評判もとても良いコンサートだった。仕事の合間にレッスンに通ったりと熱心に取り組んでいた葵も大成功に安心していたようだった。
「お疲れ様でした、葵さん。とても素敵でしたよ」
「ありがとうございます、マネージャー。頑張って良かったです」
労う言葉をかければ、ずいぶん久しぶりに葵が微かに笑いかけてくれたような気がする。持田は帰りに家まで送り届ける車の中で、助手席に座る葵を見てそんな風に思った。
「明日は久々のオフですから、ゆっくり休んでくださいね」
「……はい。そう、ですね……」
しかし、持田の言葉に葵はまた少し声を落としてしまう。どうかしたのかと様子を見ていると葵は少しもじもじとしていて、暗い車内ではよく見えなかったが、ほんのりと頬が赤く染まっているようだった。
「……葵さん……?どうか、しましたか?」
「……ねえ、マネージャー……キスしてください……」
「こ、ここで、ですか?」
持田は葵のおねだりに驚く。運転している車はもう施設の駐車場を出ていて、周りには同じく信号待ちしている他の車もあるし、歩行者も多く居る。暗い夜の車の中ではあるが、どこで誰が見ているとも限らない。
「…………ここでは、ダメですよね」
「は、はい……人の目があるところでは……」
葵のためにもお願いを聞くわけにはいかないが、明らかに落ち込んでいる葵のことを、持田は放ってはおけなかった。
「少し待っていただければ……葵さんさえよければ、うちに来ますか?ここからなら、葵さんたちの家よりも近いですが」
「……え、マネージャーの、おうちに?」
「お嫌でしょうか」
「い、嫌じゃないです。でも、ご迷惑じゃないでしょうか?僕、こんな……急ですし……」
嫌がってはいない様子の葵を確認すると、持田はすぐに葵を家に帰すためのカーナビを止めて自宅へと向かう。
「葵さんの望むことで、迷惑なことなどありませんよ。私は享さんと葵さん、二人のために存在しているのですから」
「……そう、でしたね」
その言葉を聞いた葵の顔は前を向いていたからよく見えなかったけれど、少し安心したような声だった。
「享さん、もう次のスケジュールまであまり時間が……」
「え~~、じゃあせめてイチャイチャしよーよ♡」
「少しだけなら、いいですよ」
持田と享は元々ファンで享推しだったことを告白させられてからというもの、より親密…と言っていいものか、距離感の近い関係になっていた。
特別親しくなったというより、享が持田の反応を面白がっている面が大きい。享は新しいオモチャを得たように持田に構う。
「ねえ、葵もする?」
「……僕は、いい。ちょっとスタッフさんのところ行ってくるから、二人はゆっくりしてて。移動の時間までには戻るから」
「ふーん?わかったよー」
一方の葵は、享に声をかけられてもこんな調子で、初めてした日からセックスはしていない。時折控えめにキスはねだるものの、気まぐれに顔を背けて切り上げて、何処かへ居なくなってしまう。
(……したくはないのなら、私も無理にしようとは言わない。享さんに葵さん、どちらの望むことも叶えてやりたいのだから)
そう思いながらも、葵のことを気にかけていた。元気でハキハキと言いたいことを言う享に比べ、葵は控えめでいつも一歩後ろに見を引いているような子だ。もしもうまくしたいことを求められずにいるのなら、それをうまく引き出してやりたいとも思う。
そんな風に考えているうちに、すぐに葵と二人きりになるタイミングがやってきた。享が海外で催されるダンスライブイベントへ出演する日程が迫っているのだ。
アメリカでの仕事は経験豊富で英語が話せる前マネージャーの草野が対応することになっている。
「海外でのサポートなんかは僕に任せてね!イベント後も現地メディアの取材とかちょっとした撮影とかもガンガン入ってるから」
「はーい、大忙しだな~。ちゃんと美味しいご飯連れて行ってくださいね~?」
「あはは、それもちゃんと予定に入れてあるよ」
なんやかんやと仲が良さそうな享と草野は当然うまくやるだろう。問題は自分たちのほうだと持田は考えた。
「葵くんのほうも、享くんが居ない間はコンサートのゲスト出演やソロでの歌番組収録が入ってるからね。持田さんにはもういちいち確認しなくても大丈夫だとは思うけど」
「いえ、ありがとうございます、草野さん」
享が居ない間もソロでの仕事が各々目白押しだ。いつもよりは緩やかにスケジュールが組まれているものの、きちんとしたオフは一日程度だった。
「じゃ、二週間楽しんでくるよー!いってきまーす」
「お気をつけて」
そうして準備は着々と進み、享は海外仕事に旅立っていった。
「二週間、二人ですね。よろしくお願いします」
「……はい、マネージャー」
葵は何か考えているようだったが、何も言わなかった。
まるで普通のアイドルとマネージャーのような仕事の日々が続いたある日。これはこれで、というか、これこそが正しいかたちだと持田は思考を切り替えて仕事に励んでいたところだった。
その日はある有名なジャズバンドとのコラボコンサートの本番で、葵自身も新しいジャンルの曲に挑戦して評判もとても良いコンサートだった。仕事の合間にレッスンに通ったりと熱心に取り組んでいた葵も大成功に安心していたようだった。
「お疲れ様でした、葵さん。とても素敵でしたよ」
「ありがとうございます、マネージャー。頑張って良かったです」
労う言葉をかければ、ずいぶん久しぶりに葵が微かに笑いかけてくれたような気がする。持田は帰りに家まで送り届ける車の中で、助手席に座る葵を見てそんな風に思った。
「明日は久々のオフですから、ゆっくり休んでくださいね」
「……はい。そう、ですね……」
しかし、持田の言葉に葵はまた少し声を落としてしまう。どうかしたのかと様子を見ていると葵は少しもじもじとしていて、暗い車内ではよく見えなかったが、ほんのりと頬が赤く染まっているようだった。
「……葵さん……?どうか、しましたか?」
「……ねえ、マネージャー……キスしてください……」
「こ、ここで、ですか?」
持田は葵のおねだりに驚く。運転している車はもう施設の駐車場を出ていて、周りには同じく信号待ちしている他の車もあるし、歩行者も多く居る。暗い夜の車の中ではあるが、どこで誰が見ているとも限らない。
「…………ここでは、ダメですよね」
「は、はい……人の目があるところでは……」
葵のためにもお願いを聞くわけにはいかないが、明らかに落ち込んでいる葵のことを、持田は放ってはおけなかった。
「少し待っていただければ……葵さんさえよければ、うちに来ますか?ここからなら、葵さんたちの家よりも近いですが」
「……え、マネージャーの、おうちに?」
「お嫌でしょうか」
「い、嫌じゃないです。でも、ご迷惑じゃないでしょうか?僕、こんな……急ですし……」
嫌がってはいない様子の葵を確認すると、持田はすぐに葵を家に帰すためのカーナビを止めて自宅へと向かう。
「葵さんの望むことで、迷惑なことなどありませんよ。私は享さんと葵さん、二人のために存在しているのですから」
「……そう、でしたね」
その言葉を聞いた葵の顔は前を向いていたからよく見えなかったけれど、少し安心したような声だった。
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