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Interlude1 アレクサンドラのその後
公爵嫡男セシリオの求婚(前)
■Side セシリオ
アレクサンドラが情緒不安定になったのはセシリオ達が学園を卒業してからおおよそ二年後のことだった。
調べれば学園に突如として現れた男爵令嬢ルシアによって王太子アルフォンソや彼の側近達が尽く篭絡されたことが原因と判明。婚約者の心を奪われた嫉妬からアレクサンドラは苛立ちを抑えきれず、セナイダに八つ当たりするようになった。
その間、セシリオはセナイダを助けなかった。
これは我関せずを貫いたからではなく、セナイダをよく知っているが故だった。
彼女だったら我慢しきれなくなれば例えまだ持参金とやらがたまりきっていなくてもとっとと辞表を提出し、出ていく立ち回りが出来る。むしろ今まで散々虐げられた恨みをアレクサンドラに果たす可能性すら考えられる。
だがそう割り切るのと彼の心情はまた違った話。本当ならすぐにでもセナイダに駆け寄って声をかけたい。セナイダを苦しめる相手がいくら妹のアレクサンドラだろうとぶん殴って止めさせたい。そんな衝動と日々戦う毎日だった。
ある日、セナイダが頭にかけられたティーポットに入った沸騰したてのお湯を拭いているのを目にした時、セシリオはとうとう我慢出来なくなって彼女に駆け寄った。しかしセナイダはそんな彼を無言のまま手で制した。手出し無用、と言わんばかりに。
アレクサンドラ付きの執事ヘラルドが男爵令嬢ルシアの毒牙にかかり、密かに主人を破滅させようと目論んでいることは把握していた。そして、その恐ろしい計画にセナイダが乗っかり、妹に見切りをつけたことも。
「らしいっちゃらしいんだが……些か出来すぎな気もするな」
ともあれセシリオは公爵家を継ぐ者として何とかアレクサンドラ一人の問題として片付けられるよう話を進めた。更には万が一セナイダ達の反逆が失敗に終わっても彼女に咎が及ばないよう根回しも行った。
――だが、そんな無難な立ち回りは、アレクサンドラが台無しにした。
他でもなくセナイダを懐柔し、王太子達を返り討ちにした挙げ句、王太子妃の座を確固たるものとしたからだ。
その結果を父親から聞いたセシリオは衝撃を受けた。
たった一日で状況を覆した手並みもさることながら、そのために奔走した大胆な立ち回りも彼の常識から外れていた。アレクサンドラは公爵家の令嬢でありならその枠から外れた選択で逆境を覆し、勝利をもぎ取ったのだ。
対して自分は一体どんな体たらくだった?
学園を卒業してから三年が経ち、後継者としての教育も順調。いい加減身を固めるべく公爵家の嫡男に相応しい令嬢の選定を進めているし、社交界での繋がりも良好。アレクサンドラが王妃になれば人生の成功は約束されたようなものだ。
セシリオ、それでいいのか?
否。そんなのでは不十分だ。
アレクサンドラが出来て俺に出来ない筈がない。
これまで家に尽くしてきたのだから、一つぐらい我儘は貫かせろ。
俺は、セナイダと共に生きる――!
そう決心してからのセシリオの行動は速かった。
真っ先に彼は父親、公爵のトリスタンにセナイダと婚姻する意向を告げた。そして聞き入れないなら家を出る覚悟がある、とも伝えた。
「うん、いいよ」
「……は?」
そんな一大決心はセシリオが想定するよりはるかに簡単に聞き入れられた。思わず間の抜けた声が口から出てくるほどに。トリスタンの傍らで彼の仕事を手伝っていた妻のクラウディアはそんな息子を見て頭を押さえながら深くため息を漏らす。
「何を呆けているの。貴方とセナイダが互いに好意を抱いていることは私達も把握しています。時折貴方達が屋敷内で互いを見つめる眼差し、気付かないとでも?」
「まさかその年になってまで婚約者の選定をもたもたしていて疑問に思っていなかったのか?」
「うぐっ」
クラウディアとトリスタンの両方から非難され、セシリオはたじろいだ。何いってんだコイツ、と言わんばかりの冷たい眼差しを浴びるなんて初めての経験で、戸惑いも酷かった。
「し、しかし、私がセナイダを迎え入れても公爵家にとっては……」
「家同士の結び付きは考えなくて良い。既に我が公爵家は盤石だ。お前が子爵家の娘と添い遂げようと揺らぐものではない」
「それに、セナイダは貴方とも張り合えるほど優秀なお嬢さんだもの。礼儀正しいし、強かだし、私の好みの娘ね。教育のしがいがあるわぁ」
自分がひた隠しにしていたつもりだった恋心を悟られていた恥ずかしさもあったし、いともたやすく許可を出されて今までの我慢は一体何だったんだ、との馬鹿らしさも覚える。ともあれ、今この時は障害が一つ無くなったことを素直に喜ぼうではないか。
「なら話は早い。この婚姻届に署名をして頂きたい」
セシリオは懐から取り出した書類をトリスタンの前に差し出した。さすがの公爵も目を丸くする。横から公爵夫人が覗き込み、王宮より正式に発行された書類だと確認すると目元を抑えて眉間にシワを寄せた。
「……随分と用意が早いじゃないか。予め準備していたのか?」
「全く、それほどまでに恋い焦がれていたならもっと早くに言って頂戴」
「小言は明後日にまとめて聞く。とにかく一刻を争いたい」
「どうしてかな? 三年間もお互い意識しまいと心がけていたんだ。数日遅くなったところで今更だろう」
「そうもいかない。アレクサンドラのことだ、セナイダを引き連れて王宮入りするだろう。そうなる前に俺に繋ぎ止めたい」
「成程。手の届かぬ所に行ってしまう焦りもあったか」
トリスタンは机の引き出しからペンとインクを取り出し、セシリオの保証人として署名を行った。それから公爵家の正式な決定だと証明する印鑑を押す。それから薄紙をあてて余分なインクを除去してセシリオへと差し戻した。
「書面上は許可しておくけれど、正式な婚姻にまつわる話は追ってする。いいね?」
「感謝する。父上、母上、これまで育てて頂きありがとう」
「行ってきなさい。まだ最初の一歩を踏んだだけだろう?」
「はい」
セシリオは婚姻届を筒にしまって部屋を飛び出していった。その背中を見届けたクラウディアは一筋の涙を流す。そんな彼女のトリスタンは優しく抱き寄せる。
「子供だ、とばかり思っていた子があんなに大きくなって」
「そうでなければ困るんだが、寂しいのは確かだな」
「アレクサンドラとセシリオが立て続けだなんて。これでビビアナ達まで巣立ってしまったら私、どうなるのかしら?」
「その時は沢山の孫に囲まれて更に賑やかになるだろうさ」
二人はそのまま仕事を止め、秘蔵のワインを開けて乾杯した。
アレクサンドラが情緒不安定になったのはセシリオ達が学園を卒業してからおおよそ二年後のことだった。
調べれば学園に突如として現れた男爵令嬢ルシアによって王太子アルフォンソや彼の側近達が尽く篭絡されたことが原因と判明。婚約者の心を奪われた嫉妬からアレクサンドラは苛立ちを抑えきれず、セナイダに八つ当たりするようになった。
その間、セシリオはセナイダを助けなかった。
これは我関せずを貫いたからではなく、セナイダをよく知っているが故だった。
彼女だったら我慢しきれなくなれば例えまだ持参金とやらがたまりきっていなくてもとっとと辞表を提出し、出ていく立ち回りが出来る。むしろ今まで散々虐げられた恨みをアレクサンドラに果たす可能性すら考えられる。
だがそう割り切るのと彼の心情はまた違った話。本当ならすぐにでもセナイダに駆け寄って声をかけたい。セナイダを苦しめる相手がいくら妹のアレクサンドラだろうとぶん殴って止めさせたい。そんな衝動と日々戦う毎日だった。
ある日、セナイダが頭にかけられたティーポットに入った沸騰したてのお湯を拭いているのを目にした時、セシリオはとうとう我慢出来なくなって彼女に駆け寄った。しかしセナイダはそんな彼を無言のまま手で制した。手出し無用、と言わんばかりに。
アレクサンドラ付きの執事ヘラルドが男爵令嬢ルシアの毒牙にかかり、密かに主人を破滅させようと目論んでいることは把握していた。そして、その恐ろしい計画にセナイダが乗っかり、妹に見切りをつけたことも。
「らしいっちゃらしいんだが……些か出来すぎな気もするな」
ともあれセシリオは公爵家を継ぐ者として何とかアレクサンドラ一人の問題として片付けられるよう話を進めた。更には万が一セナイダ達の反逆が失敗に終わっても彼女に咎が及ばないよう根回しも行った。
――だが、そんな無難な立ち回りは、アレクサンドラが台無しにした。
他でもなくセナイダを懐柔し、王太子達を返り討ちにした挙げ句、王太子妃の座を確固たるものとしたからだ。
その結果を父親から聞いたセシリオは衝撃を受けた。
たった一日で状況を覆した手並みもさることながら、そのために奔走した大胆な立ち回りも彼の常識から外れていた。アレクサンドラは公爵家の令嬢でありならその枠から外れた選択で逆境を覆し、勝利をもぎ取ったのだ。
対して自分は一体どんな体たらくだった?
学園を卒業してから三年が経ち、後継者としての教育も順調。いい加減身を固めるべく公爵家の嫡男に相応しい令嬢の選定を進めているし、社交界での繋がりも良好。アレクサンドラが王妃になれば人生の成功は約束されたようなものだ。
セシリオ、それでいいのか?
否。そんなのでは不十分だ。
アレクサンドラが出来て俺に出来ない筈がない。
これまで家に尽くしてきたのだから、一つぐらい我儘は貫かせろ。
俺は、セナイダと共に生きる――!
そう決心してからのセシリオの行動は速かった。
真っ先に彼は父親、公爵のトリスタンにセナイダと婚姻する意向を告げた。そして聞き入れないなら家を出る覚悟がある、とも伝えた。
「うん、いいよ」
「……は?」
そんな一大決心はセシリオが想定するよりはるかに簡単に聞き入れられた。思わず間の抜けた声が口から出てくるほどに。トリスタンの傍らで彼の仕事を手伝っていた妻のクラウディアはそんな息子を見て頭を押さえながら深くため息を漏らす。
「何を呆けているの。貴方とセナイダが互いに好意を抱いていることは私達も把握しています。時折貴方達が屋敷内で互いを見つめる眼差し、気付かないとでも?」
「まさかその年になってまで婚約者の選定をもたもたしていて疑問に思っていなかったのか?」
「うぐっ」
クラウディアとトリスタンの両方から非難され、セシリオはたじろいだ。何いってんだコイツ、と言わんばかりの冷たい眼差しを浴びるなんて初めての経験で、戸惑いも酷かった。
「し、しかし、私がセナイダを迎え入れても公爵家にとっては……」
「家同士の結び付きは考えなくて良い。既に我が公爵家は盤石だ。お前が子爵家の娘と添い遂げようと揺らぐものではない」
「それに、セナイダは貴方とも張り合えるほど優秀なお嬢さんだもの。礼儀正しいし、強かだし、私の好みの娘ね。教育のしがいがあるわぁ」
自分がひた隠しにしていたつもりだった恋心を悟られていた恥ずかしさもあったし、いともたやすく許可を出されて今までの我慢は一体何だったんだ、との馬鹿らしさも覚える。ともあれ、今この時は障害が一つ無くなったことを素直に喜ぼうではないか。
「なら話は早い。この婚姻届に署名をして頂きたい」
セシリオは懐から取り出した書類をトリスタンの前に差し出した。さすがの公爵も目を丸くする。横から公爵夫人が覗き込み、王宮より正式に発行された書類だと確認すると目元を抑えて眉間にシワを寄せた。
「……随分と用意が早いじゃないか。予め準備していたのか?」
「全く、それほどまでに恋い焦がれていたならもっと早くに言って頂戴」
「小言は明後日にまとめて聞く。とにかく一刻を争いたい」
「どうしてかな? 三年間もお互い意識しまいと心がけていたんだ。数日遅くなったところで今更だろう」
「そうもいかない。アレクサンドラのことだ、セナイダを引き連れて王宮入りするだろう。そうなる前に俺に繋ぎ止めたい」
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トリスタンは机の引き出しからペンとインクを取り出し、セシリオの保証人として署名を行った。それから公爵家の正式な決定だと証明する印鑑を押す。それから薄紙をあてて余分なインクを除去してセシリオへと差し戻した。
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「感謝する。父上、母上、これまで育てて頂きありがとう」
「行ってきなさい。まだ最初の一歩を踏んだだけだろう?」
「はい」
セシリオは婚姻届を筒にしまって部屋を飛び出していった。その背中を見届けたクラウディアは一筋の涙を流す。そんな彼女のトリスタンは優しく抱き寄せる。
「子供だ、とばかり思っていた子があんなに大きくなって」
「そうでなければ困るんだが、寂しいのは確かだな」
「アレクサンドラとセシリオが立て続けだなんて。これでビビアナ達まで巣立ってしまったら私、どうなるのかしら?」
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