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Interlude1 アレクサンドラのその後
第一王女ダリアの選択(後)
「ここからは私が引き継ごう。ダリアに今日打ち明けた理由は成長以外にもう一つあって、今から話すことは来る日まで内緒にしておいてほしい」
「はい、お父様」
「実は数年後、父のカルロス国王陛下は私に譲位する意向を示している。おそらくダリアとヒルベルトが学園に入学する頃だろう」
「……!」
そう、もう一つの理由はコレよ。
私も少し前にお義母様からその旨を打ち明けられた。びっくりしたしまだ早いのでは、と自分の意見を述べたのだけれど、私達はもう一人前と判断した上での決断だと語ってくれた。ならまだ健康なうちに引き継ぎたい、とのお考えだそうだ。
「そう、でしたか……」
「王位継承にあたり過去の慣習に従って罪人に恩赦を与える予定だ。その中にはダリアの生みの親、ルシアも含まれている」
「成程。だからわたしが伯父様のところに戻るって選択肢もあったんですね」
「そういうことだ。それを分かったうえでアルベルト達の姉のままでいてくれるか?」
「はい、勿論です。だってわたしはお姉ちゃんですから」
「……ありがとう。ダリアはこれからも私達の娘だ」
あのルシアを恩赦の対象にするか否かは凄くもめた。何しろ王太子だったアルフォンソ様を拐かし、バルタサルやロベルトを初めとした将来有望な若者を誘惑、王弟殿下方大人まで篭絡する始末。あんな魔女を釈放して良いのか、ってね。
そんな反対意見を退けて押し切ったのは他でもない、当事者だったこの私よ。
別にルシアやアルフォンソ様の為なんかじゃない。一度ぐらいはダリアは生みの親に会うべきだって考えもあるし、そして何より……『彼』の存在が大きかった。
「もしかしてお母様がルシア伯母さんの釈放を望んだのって、エドガー君の為だったりしますか?」
「ええ、そうね。戸籍上はダリアのいとこで、血縁上はダリアの弟ってことになるわ」
『彼』、エドガーはアルフォンソ様とルシアとの間に出来た第二子にあたる。厳格な修道院に缶詰め状態なルシアにいつそんな暇があったか、と思ったら、なんと面会日に仕込んだらしい。一体何やってんだが……。
エドガーが生まれた頃には謹慎から解放されてたアルフォンソ様が彼を引き取り、男で一つで育てている最中になる。元王太子かつ公爵って肩書のおかげで乳母や使用人を雇えていたのが救いかもね。
そんなエドガーはアルフォンソ様に連れられて何度か王宮に来ている。
ルシアの子ってことで渋い顔してたお義母様も、いざエドガーに会えば頬ずりするぐらい思いっきり可愛がった。それとうちの子、特に同い年のレオンとはかなり仲良くなったみたいね。ダリアは一番年長だからエドガーのことも面倒見が良かったわ。
「エドガー君、たまにレオンとお母様のこと羨ましそうに見ていたもの。やっぱ母親がいなくて寂しかったんじゃないかな?」
「あの芋女がエドガーが望む母親になれるかはかなり疑問だけれどね」
「でもお母様だってルシア伯母様なら大丈夫、って判断して恩赦を与えようとしてるんじゃないですか?」
「ヘマはしないでしょうね、って謎の信用があるだけよ」
あのルシア命な真ルシアがきちんとアルフォンソ様の妻かつエドガーの母を出来るか、は演じきれると断言出来る。『どきエデ2』のルシアの出番を台無しにするような下手を打つとはとても思えないし。
ただ、エドガーが真ルシアの本性に気付く可能性は大いにある。そうなったら彼が密かに抱いていた母親の幻想を完膚なきまでに打ち壊すかもしれない。反面教師にして強く生きるかもしれない。それはもう私には分からない。
「ダリアはルシアに会ってみたい?」
「え? ううん、生んでくれたことには感謝するけど、わたしにはお母様がいるもん」
「……そう。分かったわ」
くぅっ。この年になって泣かされるなんて思ってもいなかったわよ。
この調子だとダリアが嫁いだら涙で前が見えなくなっちゃうんじゃないかしらね。
気を取り直して、私は再び愛娘を見つめた。彼女も素直に私を見つめてくる。
「話はこれで終わりだけれど、ダリアからは何かある?」
「ありません。大丈夫です」
「そう、なら下がっていいわ。今日はこの後ピアノのお稽古だったかしら?」
「はい。お母様も是非聴きに来てください。結構上手いって褒められてますから」
ダリアは優雅にお辞儀すると、そのまま何故か早足で扉に向かうと思いっきり開く。すると向こうには私の息子達がいるじゃないの。
ダリアに睨まれたレオンはごまかし笑いを、グラシエラは縮こまって、アルベルトは開き直ったのか腕を組んでふんぞり返った。
「あの、お姉ちゃん……。お姉ちゃんじゃなくなるの?」
「は? どうして?」
「伯父上達のところに行くんじゃないよな? 駄目だダリア。俺が許さないからな」
「姉さんがいてくれないと、その、寂しいよ。いてくれないと嫌だ」
「……馬鹿ね。わたしはお姉ちゃんなんだから、ここがわたしの家よ。貴方達を置いてはどこにも行かないわ」
「お……お姉ちゃん……!」
ダリアは心配していた弟達を抱きしめた。グラシエラは安心したのか泣き出してしまい、レオンは恥ずかしがって慌てて、アルベルトは笑みがあふれた。
そんな光景を目にした私は言わずもがなで涙をこぼしてしまう。
「ありがとうアレクサンドラ。私達の子をあんなにいい子に育ててくれて」
私はジェラールがそう優しくかけてくれた声が何よりも嬉しかった。
「はい、お父様」
「実は数年後、父のカルロス国王陛下は私に譲位する意向を示している。おそらくダリアとヒルベルトが学園に入学する頃だろう」
「……!」
そう、もう一つの理由はコレよ。
私も少し前にお義母様からその旨を打ち明けられた。びっくりしたしまだ早いのでは、と自分の意見を述べたのだけれど、私達はもう一人前と判断した上での決断だと語ってくれた。ならまだ健康なうちに引き継ぎたい、とのお考えだそうだ。
「そう、でしたか……」
「王位継承にあたり過去の慣習に従って罪人に恩赦を与える予定だ。その中にはダリアの生みの親、ルシアも含まれている」
「成程。だからわたしが伯父様のところに戻るって選択肢もあったんですね」
「そういうことだ。それを分かったうえでアルベルト達の姉のままでいてくれるか?」
「はい、勿論です。だってわたしはお姉ちゃんですから」
「……ありがとう。ダリアはこれからも私達の娘だ」
あのルシアを恩赦の対象にするか否かは凄くもめた。何しろ王太子だったアルフォンソ様を拐かし、バルタサルやロベルトを初めとした将来有望な若者を誘惑、王弟殿下方大人まで篭絡する始末。あんな魔女を釈放して良いのか、ってね。
そんな反対意見を退けて押し切ったのは他でもない、当事者だったこの私よ。
別にルシアやアルフォンソ様の為なんかじゃない。一度ぐらいはダリアは生みの親に会うべきだって考えもあるし、そして何より……『彼』の存在が大きかった。
「もしかしてお母様がルシア伯母さんの釈放を望んだのって、エドガー君の為だったりしますか?」
「ええ、そうね。戸籍上はダリアのいとこで、血縁上はダリアの弟ってことになるわ」
『彼』、エドガーはアルフォンソ様とルシアとの間に出来た第二子にあたる。厳格な修道院に缶詰め状態なルシアにいつそんな暇があったか、と思ったら、なんと面会日に仕込んだらしい。一体何やってんだが……。
エドガーが生まれた頃には謹慎から解放されてたアルフォンソ様が彼を引き取り、男で一つで育てている最中になる。元王太子かつ公爵って肩書のおかげで乳母や使用人を雇えていたのが救いかもね。
そんなエドガーはアルフォンソ様に連れられて何度か王宮に来ている。
ルシアの子ってことで渋い顔してたお義母様も、いざエドガーに会えば頬ずりするぐらい思いっきり可愛がった。それとうちの子、特に同い年のレオンとはかなり仲良くなったみたいね。ダリアは一番年長だからエドガーのことも面倒見が良かったわ。
「エドガー君、たまにレオンとお母様のこと羨ましそうに見ていたもの。やっぱ母親がいなくて寂しかったんじゃないかな?」
「あの芋女がエドガーが望む母親になれるかはかなり疑問だけれどね」
「でもお母様だってルシア伯母様なら大丈夫、って判断して恩赦を与えようとしてるんじゃないですか?」
「ヘマはしないでしょうね、って謎の信用があるだけよ」
あのルシア命な真ルシアがきちんとアルフォンソ様の妻かつエドガーの母を出来るか、は演じきれると断言出来る。『どきエデ2』のルシアの出番を台無しにするような下手を打つとはとても思えないし。
ただ、エドガーが真ルシアの本性に気付く可能性は大いにある。そうなったら彼が密かに抱いていた母親の幻想を完膚なきまでに打ち壊すかもしれない。反面教師にして強く生きるかもしれない。それはもう私には分からない。
「ダリアはルシアに会ってみたい?」
「え? ううん、生んでくれたことには感謝するけど、わたしにはお母様がいるもん」
「……そう。分かったわ」
くぅっ。この年になって泣かされるなんて思ってもいなかったわよ。
この調子だとダリアが嫁いだら涙で前が見えなくなっちゃうんじゃないかしらね。
気を取り直して、私は再び愛娘を見つめた。彼女も素直に私を見つめてくる。
「話はこれで終わりだけれど、ダリアからは何かある?」
「ありません。大丈夫です」
「そう、なら下がっていいわ。今日はこの後ピアノのお稽古だったかしら?」
「はい。お母様も是非聴きに来てください。結構上手いって褒められてますから」
ダリアは優雅にお辞儀すると、そのまま何故か早足で扉に向かうと思いっきり開く。すると向こうには私の息子達がいるじゃないの。
ダリアに睨まれたレオンはごまかし笑いを、グラシエラは縮こまって、アルベルトは開き直ったのか腕を組んでふんぞり返った。
「あの、お姉ちゃん……。お姉ちゃんじゃなくなるの?」
「は? どうして?」
「伯父上達のところに行くんじゃないよな? 駄目だダリア。俺が許さないからな」
「姉さんがいてくれないと、その、寂しいよ。いてくれないと嫌だ」
「……馬鹿ね。わたしはお姉ちゃんなんだから、ここがわたしの家よ。貴方達を置いてはどこにも行かないわ」
「お……お姉ちゃん……!」
ダリアは心配していた弟達を抱きしめた。グラシエラは安心したのか泣き出してしまい、レオンは恥ずかしがって慌てて、アルベルトは笑みがあふれた。
そんな光景を目にした私は言わずもがなで涙をこぼしてしまう。
「ありがとうアレクサンドラ。私達の子をあんなにいい子に育ててくれて」
私はジェラールがそう優しくかけてくれた声が何よりも嬉しかった。
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