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Interlude1 アレクサンドラのその後
王妃アレクサンドラの茶会④
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「それで、アレクサンドラの過去が聞きたいわ。どんな感じだったの?」
うぐっ。やっぱり私にその話題を振ってくる?
いくらアレクサンドラとしての自我が勝っていても前世の情けない自分を暴露するのは正直気がひけるのだけれど……。
「どうせ私は貴女達のような華やかな人生は歩んでないわよ。ただのしがない社畜OLで、推定死因は過労死。何か文句ある?」
「あー……そうだったんですね。ご愁傷さまでした」
「社会の歯車、といったところね。成程」
「典型的な喪女オタクだったんですね」
散々な言われように腹が立った私は、こんな事もあろうかと準備していた紙にとあるものを描き始める。技術が衰えないように、と続けていたけれど、こんな形で披露することになるなんてね。
下書き無しにしては上出来に仕上がった作品、アレクサンドラの立ち絵ををルシア達に見せびらかせると、三人共目の色が変わった。そして哀れみがこもった眼差しは鳴りを潜め、尊敬に輝かせて私を見つめてくる。ふっ、もっと崇めなさい讃えなさい。
「絵師だったんですか! しかもこの絵柄、どっかで見たことありますよ」
「凄いじゃないの。見直したわ」
「そう言ってくれると少しは前世も報われるってものだわ」
その後も前世について色々と語り合った。例えば『どきエデ』シリーズの推しキャラは誰だったか、とか。
ルシアは当然ながら自分が演じたルシアが一番愛着がある、と豪語してみせた。
意外にもコンスタンサは賢い年下、つまりマティアスが好みだったらしい。
アンヘラは義叔父やイサーク、つまり年上の男性が好きだとか。父親代わりか……。
私は……あえて口を閉ざした。理由はお察しください。
久しぶりに『どきエデ』について楽しく喋ったものだから、あっという間にお開きの時間になってしまった。名残惜しいけれど、もうじき私達は前世とはさようならをして元の生活に戻っていかなきゃいけない。
だって、私達は今この世界を生きているんだもの。『どきエデ』の世界。けれどもう『どきエデ』から解き放たれた世界。私達は今後は誰の脚本の上でもない、自分達の足で歩んでいかなきゃいけないんだから。
「え、と……何を言っているの?」
みたいなことをしんみりとルシアと一緒に語ったら、コンスタンサが眉をひそめて正気を疑ってきたんだけれど。私とルシアの反応を窺ったコンスタンサは更に混乱するばかりで話にならない。アンヘラはそんな私達三人を見渡して……、
「もしかして……ルシアもアレクサンドラも、『どきエデ3』のこと知らない?」
「……は?」
なんて耳を疑う発言をしてきた。
『どきエデ』……『3』、ですって……?
そんな作品は知らない。製作開始したって情報も無かった筈。
ルシアは……知らないみたいね。焦りながら顔を横に振っているし。
「もしかして、ですけれど……わたしとコンスタンサ様って、アレクサンドラ達と転生の時期が違ってたりします?」
「それなら納得ね。二人が私達より数年前に転生したのなら知らなくて当然よ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。何よその『どきエデ3』って!」
たまらなくなったルシアが唾を吐く勢いで大声を上げて立ち上がった。せっかく大団円を迎えた筈なのに先があるって知らされたら愕然とするのも納得ね。初代悪役令嬢として退場済みのアレクサンドラはともかく、初代ヒロインのルシアならなおさら。
「ああ、『どきエデ3』は――」
「止めて。やっぱ聞きたくない。どうせ1から2に移った時にみたいに年代飛んでるんでしょうし、何年後かだけ教えて」
「今からだと……四十年ぐらい後の時代かしら?」
四十年後となったら私達は八十歳前後。医学があまり発達していないこの世界においては充分な長寿といえる領域だ。いかに最高権力者である王妃になったからって、その場に立ち会うのは絶望的と言う他無いでしょう。
ルシアも同じことを思ったらしく、安堵で胸をなでおろしていた。
「良かった。これならわたし達は無関係そうね」
「止めなさいよ。フラグなんて立てないで頂戴」
結局、私達二人はアンヘラ達から『どきエデ3』とやらについてはこの先も聞くことはなかった。長生きしたらその時はその時。目撃者になる可能性が高いのはアンヘラ達の方でしょうからね。
大体、『どきエデ2』を再現出来たのだって私とルシアがあれこれ画策したおかげだったもの。『どきエデ3』が素直に始まるなんて思っちゃいないし。そんな深く考える必要は無いわ。
「今日は楽しかったわ。次の機会があったらまた楽しく語り合いましょう」
「ええ、今度は私共が貴女様方を招待致しましょう」
「じゃあね二人共。今度はもっとマニアックな話題で盛り上がりたいわ」
「お二人に会えて良かったです。ファン冥利に尽きました」
こうして奇妙なお茶会は幕を下ろした。
私は悪役令嬢の役目を終えた王妃アレクサンドラへと戻る。
そして今を生きる大切な人達のために頑張っていくのよ。
だから『どきエデ』はおしまい。
楽しかった思い出として胸に刻み、前を進みましょう。
□□□
これにてInterlude 1は終了になります。
お読み頂きありがとうございました。
うぐっ。やっぱり私にその話題を振ってくる?
いくらアレクサンドラとしての自我が勝っていても前世の情けない自分を暴露するのは正直気がひけるのだけれど……。
「どうせ私は貴女達のような華やかな人生は歩んでないわよ。ただのしがない社畜OLで、推定死因は過労死。何か文句ある?」
「あー……そうだったんですね。ご愁傷さまでした」
「社会の歯車、といったところね。成程」
「典型的な喪女オタクだったんですね」
散々な言われように腹が立った私は、こんな事もあろうかと準備していた紙にとあるものを描き始める。技術が衰えないように、と続けていたけれど、こんな形で披露することになるなんてね。
下書き無しにしては上出来に仕上がった作品、アレクサンドラの立ち絵ををルシア達に見せびらかせると、三人共目の色が変わった。そして哀れみがこもった眼差しは鳴りを潜め、尊敬に輝かせて私を見つめてくる。ふっ、もっと崇めなさい讃えなさい。
「絵師だったんですか! しかもこの絵柄、どっかで見たことありますよ」
「凄いじゃないの。見直したわ」
「そう言ってくれると少しは前世も報われるってものだわ」
その後も前世について色々と語り合った。例えば『どきエデ』シリーズの推しキャラは誰だったか、とか。
ルシアは当然ながら自分が演じたルシアが一番愛着がある、と豪語してみせた。
意外にもコンスタンサは賢い年下、つまりマティアスが好みだったらしい。
アンヘラは義叔父やイサーク、つまり年上の男性が好きだとか。父親代わりか……。
私は……あえて口を閉ざした。理由はお察しください。
久しぶりに『どきエデ』について楽しく喋ったものだから、あっという間にお開きの時間になってしまった。名残惜しいけれど、もうじき私達は前世とはさようならをして元の生活に戻っていかなきゃいけない。
だって、私達は今この世界を生きているんだもの。『どきエデ』の世界。けれどもう『どきエデ』から解き放たれた世界。私達は今後は誰の脚本の上でもない、自分達の足で歩んでいかなきゃいけないんだから。
「え、と……何を言っているの?」
みたいなことをしんみりとルシアと一緒に語ったら、コンスタンサが眉をひそめて正気を疑ってきたんだけれど。私とルシアの反応を窺ったコンスタンサは更に混乱するばかりで話にならない。アンヘラはそんな私達三人を見渡して……、
「もしかして……ルシアもアレクサンドラも、『どきエデ3』のこと知らない?」
「……は?」
なんて耳を疑う発言をしてきた。
『どきエデ』……『3』、ですって……?
そんな作品は知らない。製作開始したって情報も無かった筈。
ルシアは……知らないみたいね。焦りながら顔を横に振っているし。
「もしかして、ですけれど……わたしとコンスタンサ様って、アレクサンドラ達と転生の時期が違ってたりします?」
「それなら納得ね。二人が私達より数年前に転生したのなら知らなくて当然よ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。何よその『どきエデ3』って!」
たまらなくなったルシアが唾を吐く勢いで大声を上げて立ち上がった。せっかく大団円を迎えた筈なのに先があるって知らされたら愕然とするのも納得ね。初代悪役令嬢として退場済みのアレクサンドラはともかく、初代ヒロインのルシアならなおさら。
「ああ、『どきエデ3』は――」
「止めて。やっぱ聞きたくない。どうせ1から2に移った時にみたいに年代飛んでるんでしょうし、何年後かだけ教えて」
「今からだと……四十年ぐらい後の時代かしら?」
四十年後となったら私達は八十歳前後。医学があまり発達していないこの世界においては充分な長寿といえる領域だ。いかに最高権力者である王妃になったからって、その場に立ち会うのは絶望的と言う他無いでしょう。
ルシアも同じことを思ったらしく、安堵で胸をなでおろしていた。
「良かった。これならわたし達は無関係そうね」
「止めなさいよ。フラグなんて立てないで頂戴」
結局、私達二人はアンヘラ達から『どきエデ3』とやらについてはこの先も聞くことはなかった。長生きしたらその時はその時。目撃者になる可能性が高いのはアンヘラ達の方でしょうからね。
大体、『どきエデ2』を再現出来たのだって私とルシアがあれこれ画策したおかげだったもの。『どきエデ3』が素直に始まるなんて思っちゃいないし。そんな深く考える必要は無いわ。
「今日は楽しかったわ。次の機会があったらまた楽しく語り合いましょう」
「ええ、今度は私共が貴女様方を招待致しましょう」
「じゃあね二人共。今度はもっとマニアックな話題で盛り上がりたいわ」
「お二人に会えて良かったです。ファン冥利に尽きました」
こうして奇妙なお茶会は幕を下ろした。
私は悪役令嬢の役目を終えた王妃アレクサンドラへと戻る。
そして今を生きる大切な人達のために頑張っていくのよ。
だから『どきエデ』はおしまい。
楽しかった思い出として胸に刻み、前を進みましょう。
□□□
これにてInterlude 1は終了になります。
お読み頂きありがとうございました。
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