残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.

福留しゅん

文字の大きさ
88 / 88
Interlude1 アレクサンドラのその後

王妃アレクサンドラの茶会④

しおりを挟む
「それで、アレクサンドラの過去が聞きたいわ。どんな感じだったの?」

 うぐっ。やっぱり私にその話題を振ってくる?
 いくらアレクサンドラとしての自我が勝っていても前世の情けない自分を暴露するのは正直気がひけるのだけれど……。

「どうせ私は貴女達のような華やかな人生は歩んでないわよ。ただのしがない社畜OLで、推定死因は過労死。何か文句ある?」
「あー……そうだったんですね。ご愁傷さまでした」
「社会の歯車、といったところね。成程」
「典型的な喪女オタクだったんですね」

 散々な言われように腹が立った私は、こんな事もあろうかと準備していた紙にとあるものを描き始める。技術が衰えないように、と続けていたけれど、こんな形で披露することになるなんてね。

 下書き無しにしては上出来に仕上がった作品、アレクサンドラの立ち絵ををルシア達に見せびらかせると、三人共目の色が変わった。そして哀れみがこもった眼差しは鳴りを潜め、尊敬に輝かせて私を見つめてくる。ふっ、もっと崇めなさい讃えなさい。

「絵師だったんですか! しかもこの絵柄、どっかで見たことありますよ」
「凄いじゃないの。見直したわ」
「そう言ってくれると少しは前世も報われるってものだわ」

 その後も前世について色々と語り合った。例えば『どきエデ』シリーズの推しキャラは誰だったか、とか。

 ルシアは当然ながら自分が演じたルシアが一番愛着がある、と豪語してみせた。
 意外にもコンスタンサは賢い年下、つまりマティアスが好みだったらしい。
 アンヘラは義叔父やイサーク、つまり年上の男性が好きだとか。父親代わりか……。
 私は……あえて口を閉ざした。理由はお察しください。

 久しぶりに『どきエデ』について楽しく喋ったものだから、あっという間にお開きの時間になってしまった。名残惜しいけれど、もうじき私達は前世とはさようならをして元の生活に戻っていかなきゃいけない。

 だって、私達は今この世界を生きているんだもの。『どきエデ』の世界。けれどもう『どきエデ』から解き放たれた世界。私達は今後は誰の脚本の上でもない、自分達の足で歩んでいかなきゃいけないんだから。

「え、と……何を言っているの?」

 みたいなことをしんみりとルシアと一緒に語ったら、コンスタンサが眉をひそめて正気を疑ってきたんだけれど。私とルシアの反応を窺ったコンスタンサは更に混乱するばかりで話にならない。アンヘラはそんな私達三人を見渡して……、

「もしかして……ルシアもアレクサンドラも、『どきエデ3』のこと知らない?」
「……は?」

 なんて耳を疑う発言をしてきた。

 『どきエデ』……『3』、ですって……?
 そんな作品は知らない。製作開始したって情報も無かった筈。
 ルシアは……知らないみたいね。焦りながら顔を横に振っているし。

「もしかして、ですけれど……わたしとコンスタンサ様って、アレクサンドラ達と転生の時期が違ってたりします?」
「それなら納得ね。二人が私達より数年前に転生したのなら知らなくて当然よ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。何よその『どきエデ3』って!」

 たまらなくなったルシアが唾を吐く勢いで大声を上げて立ち上がった。せっかく大団円を迎えた筈なのに先があるって知らされたら愕然とするのも納得ね。初代悪役令嬢として退場済みのアレクサンドラはともかく、初代ヒロインのルシアならなおさら。

「ああ、『どきエデ3』は――」
「止めて。やっぱ聞きたくない。どうせ1から2に移った時にみたいに年代飛んでるんでしょうし、何年後かだけ教えて」
「今からだと……四十年ぐらい後の時代かしら?」

 四十年後となったら私達は八十歳前後。医学があまり発達していないこの世界においては充分な長寿といえる領域だ。いかに最高権力者である王妃になったからって、その場に立ち会うのは絶望的と言う他無いでしょう。

 ルシアも同じことを思ったらしく、安堵で胸をなでおろしていた。

「良かった。これならわたし達は無関係そうね」
「止めなさいよ。フラグなんて立てないで頂戴」

 結局、私達二人はアンヘラ達から『どきエデ3』とやらについてはこの先も聞くことはなかった。長生きしたらその時はその時。目撃者になる可能性が高いのはアンヘラ達の方でしょうからね。

 大体、『どきエデ2』を再現出来たのだって私とルシアがあれこれ画策したおかげだったもの。『どきエデ3』が素直に始まるなんて思っちゃいないし。そんな深く考える必要は無いわ。

「今日は楽しかったわ。次の機会があったらまた楽しく語り合いましょう」
「ええ、今度は私共が貴女様方を招待致しましょう」
「じゃあね二人共。今度はもっとマニアックな話題で盛り上がりたいわ」
「お二人に会えて良かったです。ファン冥利に尽きました」

 こうして奇妙なお茶会は幕を下ろした。
 私は悪役令嬢の役目を終えた王妃アレクサンドラへと戻る。
 そして今を生きる大切な人達のために頑張っていくのよ。

 だから『どきエデ』はおしまい。
 楽しかった思い出として胸に刻み、前を進みましょう。



 □□□

 これにてInterlude 1は終了になります。
 お読み頂きありがとうございました。
しおりを挟む
感想 249

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(249件)

Koh
2025.02.11 Koh

1から2へ繋がる間のお話、深くは語られなかった1の登場人物のその後、色々読んでて感慨深さもありましたが、転生者4人が一堂に会するという見てみたかった場面が出てきた時には涙腺が緩んでしまいました。

解除
なのはなこ
2024.08.21 なのはなこ

漫画版から来ました。ノベル版の単行本もシーズン1,2双方購入させていただきました。
私は登場人物の中ではレティシア様が一番好きで、後日談があってとても嬉しかったです。漫画版ではフェリペとの結婚後子宝に恵まれている様子が描かれていましたが、公式でもそうですか?

解除
k
2024.05.04 k

なかなか面白いヒロインと悪役令嬢ですねー

普通、転生者と目覚めたら転生者の人格でキャラが動く作品が多いのに、キャラの心が残ったままで、転生者が動く作品は初めてです。

1-5.ヒロインの心と転生者の会話が面白かった。
悪役令嬢も転生者の記憶が入っても、24hでよく挽回できるなー、と感心しました。

2024.05.05 福留しゅん

読了ありがとうございました。
悪役令嬢が悪役令嬢のままざまぁする、がコンセプトだったので、それを評価していただけて嬉しいです。

解除

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。