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一期一会は大スクープの予感~続報
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※この体験談がフィクションかノンフィクションかは、ご自身でご判断ください。
私からは、実体験のご報告……としか申し上げられません。
* * *
スターゲート建設現場を目撃してからというもの、私は心のどこかで“もう一度、あの世界と繋がりたい”と感じていました。例の金属片――あの、裏にキャスパーのような顔が描かれたヤツ――を、私は引き出しに入れておいた……はずなんです。
ところが、ある朝、目が覚めたとき――左耳の裏に違和感を覚えたのです。うん? なんか虫でも付いているのか? 気になって恐る恐る触れてみました。硬い金属状の感触……なんじゃこれ? 洗面台の鏡と手鏡を駆使して左耳の裏を映してみました。
「あっ?」
なんと、金属片のようなものが左耳の裏にくっついいるではありませんか!
(……は? なんで? これって、もしかしたら、あの金属片?)
鏡にはうっすらと赤い斑点が耳の裏に浮かんでいるのが映っている。そして、その中心に、金属片が“皮膚の中に少し埋まっている”ように見えたんです。触ると少し熱を帯びている。そして、外れない。
(なんてこった! 病院……行くか……? いや、下手に話すと、変な人扱いされるかな……)
そして、スマホを駆使して耳の裏の撮影に挑む。
自分の耳の裏をスマホで撮影する……こんな人間は、世界初かもしれない……多分。
写った画像を見てまた愕然としました。
あのキャスパーの顔が描かれた金属片だ……それも、キャスパーの顔が上下逆さになっている! どうせなら、ちゃんと上下を合わせろよ!
これで病院に行くことをあきらめることにしました。だって、病院で「眠っている間に、耳の裏にキャスパーの顔が上下逆さになった謎の金属片が埋められました」なんて言えないでしょ……。
気を確かにして、パジャマ姿のまま、例の引き出しを開ける。やはり、キャスパーの金属片はない。いつの間にかテレポーテーションして、俺の耳の裏に埋まった……。もう、もう……思考の限界をはるかに越えてしまっていたので、事実を受け入れるしか術はありませんでした。
まあ、とりあえず痛みもないし、いったん放置することに決め、変化を観測しつつ日常生活を過ごすことにしました。
それからも、特に生活に支障はなく、そのまま放置して数日が経ち、左耳の裏の違和感もなくなり、存在すら忘れかけたころでした。
ある夜、寝入りばなに、無意識に左耳の裏を撫でたのです。すると、頭の中に……「ザー…ッ」という音……が流れ込んできました。そう、テレビの砂嵐のようなノイズ……当然、テレビはもちろん、スマホの電源も落としてあります。
(おいおい、これって、もしかして……まさか、また“脳内に直接”来てる?)
そして、そのノイズ音の中から、かすかに女性の声が聞こえてきました。
『…ャチ…ケー……リンク成功。ID確認中……』
聞き取れない。けれど、はっきりと“誰か”が何かを送ってきているようです。それも……こちらの言語ではない“音素” ……で。
寝入りだった私は飛び起きて、慌ててパソコンを立ち上げました。そして、普段あまり使うことのない周波数アプリを立ち上げて、ヘッドホンで確認してみたのです。すると、そこには**“見たこともないスペクトル波形”**が映し出されていました。しかも、金属片に触れた瞬間にだけに、その波形が現れるのです――。
これは何か大変なことが起きている!
そう直観したのですが、もう深夜遅い時刻……何をすればいいやら、途方に暮れるだけでした。
まぁ、触れなきゃ、音もしないようだし、まず、寝ようかぁ。
翌朝、私は意を決して、某出版社の編集部に連絡を入れることにしました。
今思えば、この編集部からの依頼で、ある民宿にゲテモノ料理の潜入取材に行ったことがことの発端でした。あの取材の帰り、寂れた駅から乗った電車の中……目の前に座ったグレイとの出会い……。
あれが沼に足を突っ込んでしまったきっかけでした。それも泥沼に……。
「あぁ、佐野さん? 前に提出しかけた“例のネタ”なんですけど……続報です。とうとう僕の身体に変化が……」
“提出しかけた”というのは、正式に提出するには、確証が乏しく、佐野さんと飲み屋で盛り上がっただけだったからです。佐野さん本人は興味津々で対応してくれたんもですが、上に上げるには荒唐無稽過ぎる内容だったので、現在は佐野さんのところで止まっている状態でした。
撮影画像もあるのですが、もうハッキリ写りすぎて、むしろAIの作成画像とか、コスプレ集団の工事現場のように思われてもしかたないほどハッキリだったのです。ぼやけた画像でも疑われ、ハッキリした画像でも疑われ、まったく報われない……。
電話で対応してくれた担当・佐野さんは、電話口でやや食い気味に言ってきました。それは、思いもよらぬ、斜め上の内容でした。
「いや、むしろ、君のPCのほうが、我々に連絡をしてきたよ」
「は?」
もう第一声で、僕の理解を越えました『君のPCのほうが、我々に連絡をしてきたよ』……この人は、何言ってんだ?
「ど、どういうことですか?」
「実はね、君のPCが、昨日の夜中二時十五分に編集部宛てに自動でメールを送ってきたんだ。添付ファイル付きで」
「ふぁ?」
思わず、自分の人生で経験のない感嘆の声が出てしまった。
「え、なにそれ……その江頭っぽい時刻は! 俺、寝てましたけど……」
「だろうね、で、そのファイル、開こうとしたら、**"誰かの顔"**が一瞬だけ画面に映って、消えたんだよ。解析にかけてるけど、正直ちょっと……気味が悪くてさ」
「どんな顔でした?」
「なんか白っぽい、オバケのような……」
「オバケ……もしかして、オバケのキャスパーみたいな?」
「そうそう、そんな感じ」
(キャスパー、お前、何がしたいんだよ……会ったことはないけど……)
電話を切って、私はすぐに仕事部屋へ戻りました。そしてPCを開くと、勝手に立ち上がったソフトがひとつあるではありませんか!
そのタイトルは――《リンク同期:0% → 1%…》
(なにこれ……まさか、俺、誰かと繋がれようとしてる?)
次の瞬間、ディスプレイに表示されたのは、
『ようやく繋がりましたね。次は、あなたの番です』
(はっ? 俺の番? なんの?)
さらにメッセージが届きます。
『グレイNo.08より、指示をお待ちください』
(……えっ? えっ? なんで俺が、指示を待つの? っていうか、俺、仲間入りなの!?)
そして、そのメッセージの奥の背景には、頭が炎の男の後ろ姿が、映っています。頭部炎男だ……。
奴は、こちらを振り向いて、ゆっくりと近づいてきます。炎に包まれているため表情は分かりません。怒っているのか? 笑っているのか? それとも泣いているのか? ただ、熱を帯びて周りの空気がメラメラと揺らめいているのだけは分かりました。
「君に話があるん……」
そこまで言うと、画面はフィルムが燃えたときのように映像が曲がり始めた。どうやら、頭部炎男が近づきすぎて向こうのカメラが溶けだしたようでした。
結局、何を伝えたかったのか、通信はそこで途絶えたのです。
私はディスプレイを前に口をぽかんと開けたまま、
「バカじゃね?」
もう、その言葉しか出てきませんでした。
私からは、実体験のご報告……としか申し上げられません。
* * *
スターゲート建設現場を目撃してからというもの、私は心のどこかで“もう一度、あの世界と繋がりたい”と感じていました。例の金属片――あの、裏にキャスパーのような顔が描かれたヤツ――を、私は引き出しに入れておいた……はずなんです。
ところが、ある朝、目が覚めたとき――左耳の裏に違和感を覚えたのです。うん? なんか虫でも付いているのか? 気になって恐る恐る触れてみました。硬い金属状の感触……なんじゃこれ? 洗面台の鏡と手鏡を駆使して左耳の裏を映してみました。
「あっ?」
なんと、金属片のようなものが左耳の裏にくっついいるではありませんか!
(……は? なんで? これって、もしかしたら、あの金属片?)
鏡にはうっすらと赤い斑点が耳の裏に浮かんでいるのが映っている。そして、その中心に、金属片が“皮膚の中に少し埋まっている”ように見えたんです。触ると少し熱を帯びている。そして、外れない。
(なんてこった! 病院……行くか……? いや、下手に話すと、変な人扱いされるかな……)
そして、スマホを駆使して耳の裏の撮影に挑む。
自分の耳の裏をスマホで撮影する……こんな人間は、世界初かもしれない……多分。
写った画像を見てまた愕然としました。
あのキャスパーの顔が描かれた金属片だ……それも、キャスパーの顔が上下逆さになっている! どうせなら、ちゃんと上下を合わせろよ!
これで病院に行くことをあきらめることにしました。だって、病院で「眠っている間に、耳の裏にキャスパーの顔が上下逆さになった謎の金属片が埋められました」なんて言えないでしょ……。
気を確かにして、パジャマ姿のまま、例の引き出しを開ける。やはり、キャスパーの金属片はない。いつの間にかテレポーテーションして、俺の耳の裏に埋まった……。もう、もう……思考の限界をはるかに越えてしまっていたので、事実を受け入れるしか術はありませんでした。
まあ、とりあえず痛みもないし、いったん放置することに決め、変化を観測しつつ日常生活を過ごすことにしました。
それからも、特に生活に支障はなく、そのまま放置して数日が経ち、左耳の裏の違和感もなくなり、存在すら忘れかけたころでした。
ある夜、寝入りばなに、無意識に左耳の裏を撫でたのです。すると、頭の中に……「ザー…ッ」という音……が流れ込んできました。そう、テレビの砂嵐のようなノイズ……当然、テレビはもちろん、スマホの電源も落としてあります。
(おいおい、これって、もしかして……まさか、また“脳内に直接”来てる?)
そして、そのノイズ音の中から、かすかに女性の声が聞こえてきました。
『…ャチ…ケー……リンク成功。ID確認中……』
聞き取れない。けれど、はっきりと“誰か”が何かを送ってきているようです。それも……こちらの言語ではない“音素” ……で。
寝入りだった私は飛び起きて、慌ててパソコンを立ち上げました。そして、普段あまり使うことのない周波数アプリを立ち上げて、ヘッドホンで確認してみたのです。すると、そこには**“見たこともないスペクトル波形”**が映し出されていました。しかも、金属片に触れた瞬間にだけに、その波形が現れるのです――。
これは何か大変なことが起きている!
そう直観したのですが、もう深夜遅い時刻……何をすればいいやら、途方に暮れるだけでした。
まぁ、触れなきゃ、音もしないようだし、まず、寝ようかぁ。
翌朝、私は意を決して、某出版社の編集部に連絡を入れることにしました。
今思えば、この編集部からの依頼で、ある民宿にゲテモノ料理の潜入取材に行ったことがことの発端でした。あの取材の帰り、寂れた駅から乗った電車の中……目の前に座ったグレイとの出会い……。
あれが沼に足を突っ込んでしまったきっかけでした。それも泥沼に……。
「あぁ、佐野さん? 前に提出しかけた“例のネタ”なんですけど……続報です。とうとう僕の身体に変化が……」
“提出しかけた”というのは、正式に提出するには、確証が乏しく、佐野さんと飲み屋で盛り上がっただけだったからです。佐野さん本人は興味津々で対応してくれたんもですが、上に上げるには荒唐無稽過ぎる内容だったので、現在は佐野さんのところで止まっている状態でした。
撮影画像もあるのですが、もうハッキリ写りすぎて、むしろAIの作成画像とか、コスプレ集団の工事現場のように思われてもしかたないほどハッキリだったのです。ぼやけた画像でも疑われ、ハッキリした画像でも疑われ、まったく報われない……。
電話で対応してくれた担当・佐野さんは、電話口でやや食い気味に言ってきました。それは、思いもよらぬ、斜め上の内容でした。
「いや、むしろ、君のPCのほうが、我々に連絡をしてきたよ」
「は?」
もう第一声で、僕の理解を越えました『君のPCのほうが、我々に連絡をしてきたよ』……この人は、何言ってんだ?
「ど、どういうことですか?」
「実はね、君のPCが、昨日の夜中二時十五分に編集部宛てに自動でメールを送ってきたんだ。添付ファイル付きで」
「ふぁ?」
思わず、自分の人生で経験のない感嘆の声が出てしまった。
「え、なにそれ……その江頭っぽい時刻は! 俺、寝てましたけど……」
「だろうね、で、そのファイル、開こうとしたら、**"誰かの顔"**が一瞬だけ画面に映って、消えたんだよ。解析にかけてるけど、正直ちょっと……気味が悪くてさ」
「どんな顔でした?」
「なんか白っぽい、オバケのような……」
「オバケ……もしかして、オバケのキャスパーみたいな?」
「そうそう、そんな感じ」
(キャスパー、お前、何がしたいんだよ……会ったことはないけど……)
電話を切って、私はすぐに仕事部屋へ戻りました。そしてPCを開くと、勝手に立ち上がったソフトがひとつあるではありませんか!
そのタイトルは――《リンク同期:0% → 1%…》
(なにこれ……まさか、俺、誰かと繋がれようとしてる?)
次の瞬間、ディスプレイに表示されたのは、
『ようやく繋がりましたね。次は、あなたの番です』
(はっ? 俺の番? なんの?)
さらにメッセージが届きます。
『グレイNo.08より、指示をお待ちください』
(……えっ? えっ? なんで俺が、指示を待つの? っていうか、俺、仲間入りなの!?)
そして、そのメッセージの奥の背景には、頭が炎の男の後ろ姿が、映っています。頭部炎男だ……。
奴は、こちらを振り向いて、ゆっくりと近づいてきます。炎に包まれているため表情は分かりません。怒っているのか? 笑っているのか? それとも泣いているのか? ただ、熱を帯びて周りの空気がメラメラと揺らめいているのだけは分かりました。
「君に話があるん……」
そこまで言うと、画面はフィルムが燃えたときのように映像が曲がり始めた。どうやら、頭部炎男が近づきすぎて向こうのカメラが溶けだしたようでした。
結局、何を伝えたかったのか、通信はそこで途絶えたのです。
私はディスプレイを前に口をぽかんと開けたまま、
「バカじゃね?」
もう、その言葉しか出てきませんでした。
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