31 / 73
第五章
いざ、ヴァレーへ
しおりを挟む
ここには、カラオケ、ゲーセン、カフェ、ジャンク・フード、絶叫マシーンなどのアトラクション……遊びたくなるものがいくらでもあった。それもすべて無料で利用できた。まさに、若者たちにとっては夢の世界だった。
四人はさんざん遊びまくった。まるで旧知の仲のように……。遊んでいる間は楽し過ぎて、時間の感覚が薄れながらも、それでもランは心のどこかに不安を抱えていた。確かにこれが現実だったら、どれほど楽しいか……。
遊び疲れた四人は、再び空いている庵の一つに戻った。手にはハンバーガーとジュースを持っている。
四人はソファに飛び込んだ。そして、各々が深々と体を預け、今を満喫した。
「うわー、楽しかった!」四人は口々にそう漏らした。
「ねぇ、これって本当に全部タダなの? 会員制とかじゃないの?」
ランは手に持っているものと庵を眺めて言った。
「タダよ。会員でもなんでもないわ」
「でもね、タバコやお酒は有料なのよ。それにクスリもね」
「そんなものまであるの? 一体ここは?」
「難しく考えないで、ここはそういうフィールドなの」
またお喋りが始まりかけたその時、ユイが均衡を破った。
「ねえ、エリカ」
ユイは慎重な口ぶりだった。
「なに?」
「ランちゃんをヴァレーに連れて行ってあげたら?」
「……」
エリカとリホの表情が凍りついた。
「どうせ、ここにいるほとんどが選ぶ道でしょ。それに行けば、無料で飲み食いできて、遊ばせてもらえる理由が、ランちゃんにも分かるんじゃない」
「ランちゃんは、違うかも知れないワ」
「でも、ここに来た理由を教えてもらってないんでしょ?」
ランは目の前で自分自身のことが話されていることに妙な気分になったのだが、一体何を話しているのか見当もつかなかった。
エリカはしばらく思案していたが、やがて深く頷いた。
「分かったわ。行きましょう、ヴァレーに……」
四人はさんざん遊びまくった。まるで旧知の仲のように……。遊んでいる間は楽し過ぎて、時間の感覚が薄れながらも、それでもランは心のどこかに不安を抱えていた。確かにこれが現実だったら、どれほど楽しいか……。
遊び疲れた四人は、再び空いている庵の一つに戻った。手にはハンバーガーとジュースを持っている。
四人はソファに飛び込んだ。そして、各々が深々と体を預け、今を満喫した。
「うわー、楽しかった!」四人は口々にそう漏らした。
「ねぇ、これって本当に全部タダなの? 会員制とかじゃないの?」
ランは手に持っているものと庵を眺めて言った。
「タダよ。会員でもなんでもないわ」
「でもね、タバコやお酒は有料なのよ。それにクスリもね」
「そんなものまであるの? 一体ここは?」
「難しく考えないで、ここはそういうフィールドなの」
またお喋りが始まりかけたその時、ユイが均衡を破った。
「ねえ、エリカ」
ユイは慎重な口ぶりだった。
「なに?」
「ランちゃんをヴァレーに連れて行ってあげたら?」
「……」
エリカとリホの表情が凍りついた。
「どうせ、ここにいるほとんどが選ぶ道でしょ。それに行けば、無料で飲み食いできて、遊ばせてもらえる理由が、ランちゃんにも分かるんじゃない」
「ランちゃんは、違うかも知れないワ」
「でも、ここに来た理由を教えてもらってないんでしょ?」
ランは目の前で自分自身のことが話されていることに妙な気分になったのだが、一体何を話しているのか見当もつかなかった。
エリカはしばらく思案していたが、やがて深く頷いた。
「分かったわ。行きましょう、ヴァレーに……」
0
あなたにおすすめの小説
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
大賢者アリアナの大冒険~もふもふパラダイス~
akechi
ファンタジー
実の親に殺されそうになっていた赤子は竜族の長に助けられて、そのまま竜の里で育てられた。アリアナと名付けられたその可愛いらしい女の子は持ち前の好奇心旺盛さを発揮して、様々な種族と出会い、交流を深めていくお話です。
【転生皇女は冷酷な皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!】のスピンオフです👍️アレクシアの前世のお話です🙋
※コメディ寄りです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる