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第五章
自由の丘
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「あなたみたいな子はたくさんいるから、心配しなくていいわよ。ここは迷子がいっぱいなの。みんな初めは戸惑うのよ」
エリカが言った。
外の喧騒が嘘のように静かだった。三人はそれぞれソファでくつろいでいる。しかし、ランはまだ緊張が継続していた。
「それよりも、せっかくここに来たんだから、楽しもうよ!」
リホが口を挟む。
「で、ここは一体どこなんですか? わたし、もうなにが、なんだか……」
「ここは『自由の丘』」
「自由の丘?」
「そう。だいたいわたしたちみたいな高校生がメインだけど、中学生の子も結構いるかな。それにおませな小学生も少し。あとはここがお気に入りで卒業できない二十歳前後くらいの人もね」
「ほとんどは時を待つ、待ち人……」
意味深な言葉をユイが放った。ランがそれに対して突っ込もうとすると、それをリホが遮った。
「たまに変なこと目当てのキモイ中年のおじさんが来るけど、みんなシカトするから、大抵知らない間に消えちゃうけどね」
「あなたも高校生でしょ?」
エリカはランの格好を見て言った。
「は、はい。二年生です」
「じゃあ、一緒ね。そんな敬語やめなさいよ」
「で、ここでみんな何してるの?」
「何もしてないわ。ただ、集まっているだけ。お喋りしたり、音楽聞いたり、歌って、踊って、騒いで、遊んで……それだけ」
「ここにはルールは、何もないの。若い人たちの溜まり場よ」
「いや、一つだけあるわ」エリカが話しを制した。
ランは次の言葉を待った。
「ここでは暴力だけは禁止なの。何年か前に、自由を無秩序と履き違えた男がいで、機関銃を乱射した男がいるんだけど、取り押さえられ、みんなからフルボッコにされたらしいわ。それで一時はここが閉鎖されたらしいんだけど、あまりに要望が多くて、また再開したらしいの。だけど、それ以来、暴力だけはご法度になってるんだってさ。だから、見た目は悪そうな溜まり場に見えるけど、結構安全なのよ、ここは!」
その話しを聞いて、ランはひと安心した。いくらここが夢の中でも、暴力がはびこるようなアナーキズムな社会には関わりたくなかった。
「ところで、だれが、ここの責任者なんですか?」
「勿論、オーナーとマスターよ」
「オーナー? マスター?……マスターってだれですか?」
「そんなの知らないわよ」
三人そろって首を横に振った。
「じゃあ、どうして、わたしはここにいるの?」
「ダスターでしょ」ユイが答えた。
「ユイ!」
エリカが強い口調でそれを制した。ユイは肩をすぼめた。
「さっきも言ったけど、あなたみたいな子はここには結構いるのよ」
「あなたみたいに知らない間に来ている子、楽しそうだからって来る子、そして、永遠にティーンエィンジャーでいたい子……いろいろよ」
「あの、もっと根本的なことを知りたいんですが……」
ランは自分の質問に対して、的確な答えが返ってこないことに苛立ちを隠しきれなかった。
「いいわ。でも、一旦外に出て遊ぼうよ。そして、もっと仲良くなってから話しましょう。話しはそれからでもいいじゃない。せっかく来たんだし!」
「でも、わたし家に帰りたいの」
「そのうち帰れるわよ」
リホはドアを開けた。また耳をつんざくような喧騒が始まった。
四人は外に出た。
ランは空を見上げた。「おや?」と、ランの表情が曇った。さきほどと明るさが変わっていない。
「心配ないわよ。ここは永遠に午後六時なの。天気も永遠にこのままよ。それがみんなの希望だから」
エリカはランの肩をポンと叩いた。
「それより、ゲーセン行こうよ。カラオケもあるわよ」
リホとユイがランの手を引っ張って雑踏の中に連れていった。そのあとをエリカが小走りでついた。
エリカが言った。
外の喧騒が嘘のように静かだった。三人はそれぞれソファでくつろいでいる。しかし、ランはまだ緊張が継続していた。
「それよりも、せっかくここに来たんだから、楽しもうよ!」
リホが口を挟む。
「で、ここは一体どこなんですか? わたし、もうなにが、なんだか……」
「ここは『自由の丘』」
「自由の丘?」
「そう。だいたいわたしたちみたいな高校生がメインだけど、中学生の子も結構いるかな。それにおませな小学生も少し。あとはここがお気に入りで卒業できない二十歳前後くらいの人もね」
「ほとんどは時を待つ、待ち人……」
意味深な言葉をユイが放った。ランがそれに対して突っ込もうとすると、それをリホが遮った。
「たまに変なこと目当てのキモイ中年のおじさんが来るけど、みんなシカトするから、大抵知らない間に消えちゃうけどね」
「あなたも高校生でしょ?」
エリカはランの格好を見て言った。
「は、はい。二年生です」
「じゃあ、一緒ね。そんな敬語やめなさいよ」
「で、ここでみんな何してるの?」
「何もしてないわ。ただ、集まっているだけ。お喋りしたり、音楽聞いたり、歌って、踊って、騒いで、遊んで……それだけ」
「ここにはルールは、何もないの。若い人たちの溜まり場よ」
「いや、一つだけあるわ」エリカが話しを制した。
ランは次の言葉を待った。
「ここでは暴力だけは禁止なの。何年か前に、自由を無秩序と履き違えた男がいで、機関銃を乱射した男がいるんだけど、取り押さえられ、みんなからフルボッコにされたらしいわ。それで一時はここが閉鎖されたらしいんだけど、あまりに要望が多くて、また再開したらしいの。だけど、それ以来、暴力だけはご法度になってるんだってさ。だから、見た目は悪そうな溜まり場に見えるけど、結構安全なのよ、ここは!」
その話しを聞いて、ランはひと安心した。いくらここが夢の中でも、暴力がはびこるようなアナーキズムな社会には関わりたくなかった。
「ところで、だれが、ここの責任者なんですか?」
「勿論、オーナーとマスターよ」
「オーナー? マスター?……マスターってだれですか?」
「そんなの知らないわよ」
三人そろって首を横に振った。
「じゃあ、どうして、わたしはここにいるの?」
「ダスターでしょ」ユイが答えた。
「ユイ!」
エリカが強い口調でそれを制した。ユイは肩をすぼめた。
「さっきも言ったけど、あなたみたいな子はここには結構いるのよ」
「あなたみたいに知らない間に来ている子、楽しそうだからって来る子、そして、永遠にティーンエィンジャーでいたい子……いろいろよ」
「あの、もっと根本的なことを知りたいんですが……」
ランは自分の質問に対して、的確な答えが返ってこないことに苛立ちを隠しきれなかった。
「いいわ。でも、一旦外に出て遊ぼうよ。そして、もっと仲良くなってから話しましょう。話しはそれからでもいいじゃない。せっかく来たんだし!」
「でも、わたし家に帰りたいの」
「そのうち帰れるわよ」
リホはドアを開けた。また耳をつんざくような喧騒が始まった。
四人は外に出た。
ランは空を見上げた。「おや?」と、ランの表情が曇った。さきほどと明るさが変わっていない。
「心配ないわよ。ここは永遠に午後六時なの。天気も永遠にこのままよ。それがみんなの希望だから」
エリカはランの肩をポンと叩いた。
「それより、ゲーセン行こうよ。カラオケもあるわよ」
リホとユイがランの手を引っ張って雑踏の中に連れていった。そのあとをエリカが小走りでついた。
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