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第七章
ビジター? ダスター?
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ランは諦めたようにベンチに腰かけていた。夕日が沈みかけている。世界がオレンジ色に染まりだした。美しい海岸の風景……さっきまでは疲れた心を癒してくれるはずの眺めだったが……一体……これから夜を迎える。このままここにいるのであろうか?
「ここには夜があるのね……」
独り言をポツリと呟いた。
あらためて周りを見た。空には桁はずれに大きい宇宙船。そして、よく見ると海には大きな船が浮かんでいる。戦争映画に出てくような大砲がたくさんついた戦艦だ。
もういちいち驚く気にもならない。戦艦が夕日に映える。そして、変な人たち。そう、変なのだ。何がと言われても困るが、ドラム缶のようなロボット、金や銀に輝いているロボットが何体も右往左往しているし、見るからにグロテスクな怪物のようなものまでいる。こちらに危害を加えるようなことは無さそうなのだが、何とも奇妙な風景だった。
ランはあらためて空を眺めた。やはりあの大きな宇宙船が浮かんでいる。数日の間に、おかしな体験をたくさんしてきたが、ここは最もおかしな所なのかも知れない。まず、人間ではないものがウロウロしているから、声を掛けることもできない。それよりも、それらに近づくことさえもできなかった。できれば視界に入れることもイヤだった。
「こんばんは!」
不意に声を掛けられて、ランは飛び上がった。
ランはすぐに声がしたベンチの横に体を向けた。しかし、そこには怪物ではなく、満面の笑顔の若い男が見下ろすように立っていた。
「いらっしゃい!」
また、ランの思考の中にいくつもの? が浮かんだ。「いらっしゃい」とはどんな意味で言ったのだ。その若い男は腰からの上をベージュの布を巻いたような服を纏い、スパッツのようなものを履いていた。
「ようこそ! 僕はルーク・スカイウォーカー!」
「ルーク? スカイ?……日本人じゃないの?」
若者の顔はどう見てみも東洋人……いや、日本人の顔だった。
「日本人だよ。そんなことより、すごいでしょ? エンタープライズ号だよ」
そう言って自慢げに空を見上げて、空に浮かぶ大型宇宙船を指した。
「それに宇宙戦艦ヤマト!」
そして、今度は海に浮いている大きな戦艦を指さした。するとランの方に振り向いて講釈が始まった。
「このフィールドは気付いたと思うけどチャルマンの酒場を意識しているんだ。乾燥地帯のイメージがあるから、いきなり海沿いにチャルマンって気付かない人もいると思うけど、よく見るとキャストのメンバーがマニアのツボをついていると思うんだよね。分かる人には分かるっていう設定なんだ。それに、本物のC3―POやR2―D2もいるんだけど、わざと同じ型式のロボットをたくさん配置しているから、ここにくるビジターは結構必死になって探してるんだ。本物に出会えたらラッキーだよ。僕だって年に数回しか会えないくらいだからね。結構、彼らを探しに訪れるビジターもいるんだ。みんな出会うと大喜びで記念写真を撮っているよ。それにあのエンタープライズ号もヤマトもすごいだろう? 日米の代表的な宇宙船機が同時に見ることができるなんて、ここだけだと思うよ。すごいアイディアだろ? 因みにあの中には実際に入ることもできるんだよ。でも、それは有料にしているんだ。だって、これ買うの、結構高かったんだぜ。それに、このあともパーツを増やしたいから、その資金にしようと思ってね。実は今度はジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』の月を浮かべようと思ってるんだ。知っていると思うけど、あの目にロケットの刺さった月さ! これはレアだろう? ここに目をつけるヤツってなかなかいないと思うよ。それと『宇宙戦争』のテトラポットも検討中なんけど、ただ、師匠の話しだと、これは意外に持っている人も多いらしくて、あまりレアじゃないって言うんだよ。知っての通り、作りは単純っぽいからね。意外と個人で作っちゃうような人もいるかもね。まあ、取りあえず、それをさ、今師匠に頼んでいるところなんだ。そうそう、師匠っていうのはね、これらのパーツを作っている僕の相談役みたいな人なんだけど、何でも二千三十六年の未来から来たって言うんだけどね。それで、じゃあ、未来のことを教えてって頼むんだけど、あまり教えると未来が変わってしまい、自分が存在しなくなるおそれがあるから、あまり言えないってさ、ふふん、本当かどうか……」
ランはルークといった男の話しの十分の一も理解できなかった。そして、返事に困った。正直、そんなものに興味もなく、どうでもよかった。
「あの~」
「なに?」
男性はあくまでも笑顔を崩さずにいた。
「ここはどこですか?」
予想外の言葉に、さすがに男は困惑の表情を見せた。
「えっ? どこって?知らないのにいるの? 僕のフィールドのビジターじゃないの?」
ランは苦笑いで首を傾けた。
「じゃあ、どうしてここにいるの?」
「分かんない。いろんなことがあり過ぎて、何が何だか……」
「もしかして……」
次の言葉が出るまで一息あった。
「ビジターじゃなくて……もしかして、ダスター?」
「ビジター? ダ、ダスター?」
ランにとっては、結局は謎が増えるだけだった。
「ここには夜があるのね……」
独り言をポツリと呟いた。
あらためて周りを見た。空には桁はずれに大きい宇宙船。そして、よく見ると海には大きな船が浮かんでいる。戦争映画に出てくような大砲がたくさんついた戦艦だ。
もういちいち驚く気にもならない。戦艦が夕日に映える。そして、変な人たち。そう、変なのだ。何がと言われても困るが、ドラム缶のようなロボット、金や銀に輝いているロボットが何体も右往左往しているし、見るからにグロテスクな怪物のようなものまでいる。こちらに危害を加えるようなことは無さそうなのだが、何とも奇妙な風景だった。
ランはあらためて空を眺めた。やはりあの大きな宇宙船が浮かんでいる。数日の間に、おかしな体験をたくさんしてきたが、ここは最もおかしな所なのかも知れない。まず、人間ではないものがウロウロしているから、声を掛けることもできない。それよりも、それらに近づくことさえもできなかった。できれば視界に入れることもイヤだった。
「こんばんは!」
不意に声を掛けられて、ランは飛び上がった。
ランはすぐに声がしたベンチの横に体を向けた。しかし、そこには怪物ではなく、満面の笑顔の若い男が見下ろすように立っていた。
「いらっしゃい!」
また、ランの思考の中にいくつもの? が浮かんだ。「いらっしゃい」とはどんな意味で言ったのだ。その若い男は腰からの上をベージュの布を巻いたような服を纏い、スパッツのようなものを履いていた。
「ようこそ! 僕はルーク・スカイウォーカー!」
「ルーク? スカイ?……日本人じゃないの?」
若者の顔はどう見てみも東洋人……いや、日本人の顔だった。
「日本人だよ。そんなことより、すごいでしょ? エンタープライズ号だよ」
そう言って自慢げに空を見上げて、空に浮かぶ大型宇宙船を指した。
「それに宇宙戦艦ヤマト!」
そして、今度は海に浮いている大きな戦艦を指さした。するとランの方に振り向いて講釈が始まった。
「このフィールドは気付いたと思うけどチャルマンの酒場を意識しているんだ。乾燥地帯のイメージがあるから、いきなり海沿いにチャルマンって気付かない人もいると思うけど、よく見るとキャストのメンバーがマニアのツボをついていると思うんだよね。分かる人には分かるっていう設定なんだ。それに、本物のC3―POやR2―D2もいるんだけど、わざと同じ型式のロボットをたくさん配置しているから、ここにくるビジターは結構必死になって探してるんだ。本物に出会えたらラッキーだよ。僕だって年に数回しか会えないくらいだからね。結構、彼らを探しに訪れるビジターもいるんだ。みんな出会うと大喜びで記念写真を撮っているよ。それにあのエンタープライズ号もヤマトもすごいだろう? 日米の代表的な宇宙船機が同時に見ることができるなんて、ここだけだと思うよ。すごいアイディアだろ? 因みにあの中には実際に入ることもできるんだよ。でも、それは有料にしているんだ。だって、これ買うの、結構高かったんだぜ。それに、このあともパーツを増やしたいから、その資金にしようと思ってね。実は今度はジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』の月を浮かべようと思ってるんだ。知っていると思うけど、あの目にロケットの刺さった月さ! これはレアだろう? ここに目をつけるヤツってなかなかいないと思うよ。それと『宇宙戦争』のテトラポットも検討中なんけど、ただ、師匠の話しだと、これは意外に持っている人も多いらしくて、あまりレアじゃないって言うんだよ。知っての通り、作りは単純っぽいからね。意外と個人で作っちゃうような人もいるかもね。まあ、取りあえず、それをさ、今師匠に頼んでいるところなんだ。そうそう、師匠っていうのはね、これらのパーツを作っている僕の相談役みたいな人なんだけど、何でも二千三十六年の未来から来たって言うんだけどね。それで、じゃあ、未来のことを教えてって頼むんだけど、あまり教えると未来が変わってしまい、自分が存在しなくなるおそれがあるから、あまり言えないってさ、ふふん、本当かどうか……」
ランはルークといった男の話しの十分の一も理解できなかった。そして、返事に困った。正直、そんなものに興味もなく、どうでもよかった。
「あの~」
「なに?」
男性はあくまでも笑顔を崩さずにいた。
「ここはどこですか?」
予想外の言葉に、さすがに男は困惑の表情を見せた。
「えっ? どこって?知らないのにいるの? 僕のフィールドのビジターじゃないの?」
ランは苦笑いで首を傾けた。
「じゃあ、どうしてここにいるの?」
「分かんない。いろんなことがあり過ぎて、何が何だか……」
「もしかして……」
次の言葉が出るまで一息あった。
「ビジターじゃなくて……もしかして、ダスター?」
「ビジター? ダ、ダスター?」
ランにとっては、結局は謎が増えるだけだった。
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