V3

第八章

背の高い白人の男性

　ルークと名乗る青年が消えてから、どれくらい時間が経ったのであろう。
　ベンチに座ったままランは海を眺めていた。なんでこんなことになってしまったのであろう？
　おかしなことばかりが続く。夢の世界？　パラレル・ワールド？　死後の世界……？　もしくは、ＵＦＯにさらわれてどこかの別の惑星に……？　どれでもいいから早くこの状況から抜け出したい。その一心だった。
　朝日に照らされる『ヤマト』と呼んでいた戦艦が眩しい。ランは目をすぼめた。
「おはようございます」
　また、不意に声を掛けられた。後ろを振り向くと背の高い白人の男性が立っていた。
「如月ランさんですね」
　ランは黙って頷いた。男は一人だった。ルークの姿がない。
「隣、いいかですか？」
　その白人男性はベンチの端に目を向けた。
「はい。どうぞ」
　男性は静かに腰を掛けた。
「いやあ、それにしても、すごい眺めだなぁ」
　彼は海に浮かぶヤマト、空に浮かぶエンタープライズを仰いだ。
「あのぉ、ルークさんの相談役の方ですか」
「そうです。彼は多分マスターが寝ちゃって、わたしのフィールドで右往左往しているはずです」
「何を言っているか、まったく分かんないですけど……」
「そのようみたいですね。驚かないように……ゆっくりと話しをしましょう」