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第一章 男装王子誕生
第三話 イケメン執事 カツラギ
しおりを挟む第三話 イケメン執事 カツラギ
ぼんやりとした意識の中でラベンダーの香りだけがハッキリと脳裏に漂っていた。
気がつくと私はレースの天蓋に囲まれたお姫様ベットに戻って来ていた。
どうやら謎の男性シフォンの突然のキスによって一時的に呪いが解けたようだった。
(私、不思議な夢から目覚めたんだ。)
ふと気配に気づきこっそりと薄目を開ける。
見ると今日もまた昼休憩の時間に二人のイケメンに囲まれていた。
一人は王宮の親衛隊隊長をしている兄のタフタ。
もう一人は私の事を昔からずっと守ってくれている幼馴染のニット。
悲しそうな顔の二人に私は切なくなった。
思わず声をかけようとしてシフォンの言葉を思い出す。
「これで君は十二時まで目覚める事が出来るはずだ。
でも気をつけてっ、
君が目覚めたと知れると今度は命を狙われるかもしれない。」
(もし私が声をかけたら兄達まで巻き込んでしまうかも……)
そう思い声をかける事を躊躇していると二人は名残惜しそうに部屋を出て行った。
バタン
部屋のドアが閉まり独りになると私はそっと起き上がった。
(うんっ、本当に動ける。
シフォンのキスが効いたんた。)
私は顔を赤らめながら、そっと指で唇に触れた。
彼の情熱的なキスの感触が今もそこには残っていた。
(ブロード様ともこんなキスした事ないのに……)
少し後ろめたい気持ちになりながらも何故か唇の感触が忘れられない。
兄や幼馴染に声をかける事を躊躇った理由。
それは大切な彼らを危険に晒したくないという事もある。
でももう一つはシフォンとのキスの事を話す事になるからだ。
(も~、突然キスするなんて恥ずかしいよ。)
私はそっと廊下の様子を窺うと隠れて屋敷を抜け出した。
私は両手を伸ばしてう~んと伸びをした。
暫く体が動かなかったからだろうか全身がなんだか固くなっていた。
少しずつ感覚を取り戻しながら歩いて行く。
爽やかな風が吹いていて気持ちいい。
見ると歴史ある佇まいが通り沿いに続いていた。
このエリアは王宮を守る様に配置された限定エリア。
王族や貴族、それに使える関係者しか出入りを許されない場所だった。
世界の人口の半数がこの世界の三パーセント程の地域に密集している。
それは一重にクラウド王国の繁栄がもたらす富と栄光ゆえだった。
その中心エリアにリプルの住まいはあった。
もっとも私が王族や貴族だからという訳ではない。
王宮親衛隊隊長の兄の元で居候しているからだ。
ここへ来るまではこのエリアをドーナッツ状に取り囲んでいる一般エリアに居た。
だから兄に呼ばれて
「これからは我慢しなくていい。
俺にはいっぱい甘えていいからな。」
そう言われて抱きしめられた時は嬉しかった。
幼い頃に兄と別れて暮らしていた為、兄の記憶はあまりない。
噂では王国親衛隊の鬼隊長。
規律に厳しい天才剣士だと聞いていた。
確かに周りに部下さん達がいる時には威厳があったが二人きりの時は別人だ。
王国親衛隊の鬼隊長も私からすれば美味しいスイーツをくれるお兄ちゃん。
妹を溺愛するあまりデレ感全開だけどそれも含めて嬉しかった。
夢の中で会った不思議な男性シフォンの言葉を頼りに街を歩く。
「そうだっ、彼を訊ねて助けを求めるといい。
奴ならきっと力になってくれるだろう。」
私は何者かに毒を盛られて死にかけた。
多分、今も命を狙われているかもしれなかった。
だから誰かの助けが必要だ。
貴族限定エリアと言えども油断は出来ない。
それは私を殺そうとした犯人が貴族の可能性があるからだ。
森を抜けた先にその屋敷はあった。
立派な門を潜ると一面に花畑。
ふぁっとした良い香り。
どこからかラベンダーの香りが漂っていた。
「どちら様ですか?」
花に水をやっていた男性が私に気づいて顔を上げて声をかけた。
見ると赤毛の東洋風なイケメンが立っている。
小柄ながらも小顔で切れ長な瞳。
でも突然の不審者の侵入に少し眉間にしわが寄っていた。
「あっ、あの、怪しい者ではありませんっ」
(あ~、そう言っている時点で私、怪しい~。)
そう自分で思いながらもあたふたしていると彼がジョウロを置いて近づいて来た。
(やばいっ、どうしよう?)
焦った私はシフォンの伝言を思い出す。
「困ったらこの話をすればいい。
きっとリプルの力になってくれる筈だよ。」
そう言って彼は悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。
私にはよく意味が分からなかったが取り敢えず教わった通りに言ってみる。
「あっ、あのっ
私、知ってます。
貴方が子供の時、肝試しでお漏らししたコト。」
「えっ、何故それを?」
赤毛のイケメンは赤面しながら明らかに動揺していた。
そして周りに人が居ないかをキョロキョロと確認し始めた。
「とっ、取り敢えずこちらへ。」
そう言うと彼は私を脇のガーデンハウスへ連れ込んだ。
(どうしてこうなった?
あれ? 私、話す順番間違えた?)
気がつくと私は赤毛のイケメンとガーデンハウスで紅茶を飲んでいた。
訊けば彼の名前はカツラギと言いこのお屋敷の執事をしているらしい。
私は第一王子プロード様との婚約発表直前で毒殺された事。
夢の中で不思議な男性シフォンと出会った事。
そのシフォンにカツラギ様を紹介された事など全てを話した。
(シフォンと熱いキスをしたコトだけは内緒にして……)
彼はうんうんと頷きながら最後にこう言った。
「で……、その夢の中の彼が私が肝試しでお漏らししたと言ったんですね。」
私がぎこちない笑顔で頷くと深いため息をついた。
「はぁ~、いつまで経ってもヤンチャで好奇心旺盛。
自分のコトにしか興味がない。
あの人は昔と全く変わらないのですね。
分かりました。
私が出来る事は全面的に協力いたしましょう。
ただし私がお漏らしした事は御内密に。」
そう耳元で囁くと私の唇に指を当てた。
ドキッ
(ちょっとキサラギ様っ……近すぎるんですけど)
「あのっ、私はどうすれば……」
「う~ん、まずはリプル様へ毒を盛った犯人を捕まえる事ですね。
そうでなければ今後一生、貴女に危険が及びますから。
心当たりはおありですか?」
困った。
正直心当たりがアリまくりだった。
乙女ゲームにハマりまくって一年。
遂に神ゲーとも言える作品『シンデレラ プリンセス』に出会い。
推しの王子を攻略する為にあらゆるイケメンに対して塩対応をして来た。
思い返せばあらゆるイケメンに恨まれている気がした。
(こんなコトなら少しは他のイケメンにも優しくしていればよかった。)
思わず苦笑いを浮かべているとカツラギ様が不思議そうな顔をしていた。
私は慌ててにやけ顔を手で隠す。
「一般的に考えればリプル様が婚約しては都合の悪い方。
または第一王子プロード様が行方不明になって得する方が怪しいですね。」
「プロード様が居なくなって得する人?」
「ええ、例えば王位継承権第二位のフライス王子とか。」
(フライス王子?
あぁ、あのチャライ人たらし王子か)
私は攻略対象一覧のコメントを思い出していた。
確かに王位ともなれば、なりふり構わずに邪魔者を潰しにかかるのかもしれない。
それに失踪したという愛しのプロード王子の行方も気になった。
(でもどうやって調べるの?)
パンッ
思い悩んでいるとキサラギが手を叩いた。
「取り敢えずその恰好で街をうろつくのは非常に危険です。
令嬢達の噂話ネットワークを見くびってはいけませんよ。
直ぐに貴女が目覚めた事が知れ渡るでしょう。
リプル様は少し警戒心が足りないようですね。
仕方がありません。
私が教えて差し上げましょう。
さあ、こちらへ。」
そう言って私の手を取ってガーデンハウスを連れ出した。
そしてクローゼットルームへ押し込むといきなり服を脱がされた。
(え~、ちょっとちょっと
いきなり何?
キサラギ様?)
いきなりのシュチュエーションに激しく動揺し頭が真っ白になる。
そして気がつけば鏡の前に立たされ肩に両手を置かれていた。
「うんっ、やっぱり美しい。
貴女のような美しい方と出会えて光栄です。
でもこちらの姿も凛々しく研ぎ澄まされた色気があり素敵ですよ。」
(うわぁぁ、私、男前……)
そこには髪を後ろで縛り黒いタキシードを着た男装の私が居た。
キサラギ様のセンスと化粧が良いのだろうか。
まるで宝塚の男役。
自分で見ても惚れ惚れするような男前だった。
だが私はその時はまだキサラギ様の闇を知らなかった。
完璧を求める彼はそれから数時間もの間、私に男の仕草のレッスンを始めた。
目線や仕草、髪の撫で方からウインクの仕方まで……
やっと形になった頃には夕日が落ちかけていた。
「まぁ、いいでしょう。
明日またこちらへ御出で下さい。」
やっと解放されて家路につく。
(だぁ~、疲れた。
いたたたぁぁ、もう足がパンパンだよ。
キサラギ様。レッスン鬼過ぎなんだよ。
途中から楽しくなってノリノリで決め顔を連発した私も悪いけどさ。)
そう言いながらレッスンを思い出して軽やかにステップを踏む。
そして振り向き様に決め顔を作り、フッと手をかざしてみせる。
「あの夕日が落ちるまで君の時間をくれないか?
俺はこの出会いを探していたのかもしれない。」
(なんてね。てへっ)
すると背後から声が聞こえた。
「えっ、私ですか?」
驚いて振り向くとそこにはウットリとした瞳をした令嬢が立っていた。
(えっ、イライザ?)
そう、彼女は乙女ゲーム『シンデレラ プリンセス』に出て来る悪役令嬢。
『知っておきなさいっ、
私の名前と貴族制度をね。』
が決めセリフの悪役令嬢イライザだった。
ブロード王子攻略の際には第一王子を取り合いバトルを繰り広げた仲だった。
確かラストは悪事を追求され社交界を抹殺された筈だったけど。
(でもどうしてこんな所に?)
不思議に思いながらも怪しまれない様にその場を取り繕う。
「勿論、貴女のコトですよ。
いきなり失礼した。
余りの美しさについ心の声が出てしまいました。
それでは……。」
ガシッ
(えっ?)
その場を逃げようとする私は腕をムンズと掴まれる。
「いきなり私に愛の告白をしておいて名前も聞かずに失礼ですわ。
いいコトっ、
知っておきなさいっ、
私の名前と貴族制度をね。」
(知っておきなさいっ、
私の名前と貴族制度をね。
……はぁぁ、やっぱり出たよ決めセリフ。
やばっ、何か変な女にロックオンされちゃったみたい。
う~ん、でも正体ばれると面倒くさい事になるしな。)
どうしたものかと男の色気たっぷりに髪をかき上げながら思い悩やむ。
するとその仕草がドストライクらしく瞳をキュンキュンさせながら見つめられた。
『令嬢達の噂話ネットワークを見くびってはいけませんよ。
直ぐに貴女が目覚めた事が知れ渡るでしょう。』
カツラギ様の言葉を思い出す。
(とにかく正体がバレない内に逃げなきゃ)
私は捕まれた腕を逆に引っ張ると悪役令嬢イライザを抱きしめた。
「ボクは追われている。
君を巻き込みたくないからもう行かなきゃ。」
そう言って逃げ出そうとするがイライザは手を放さない。
「あぁ、忘れ物だ。」
そう言って私はイライザへ強引にキスをした。
「えっ、なんですの?」
イライザは驚いて思わず手を放す。
スタスタッ
私はその隙にそそくさと逃げ出した。
(うわぁぁ、女子とキスしちゃったよ。
今夜シフォンに何て報告しよう。)
赤面しながらも急いで屋敷へ向かう。
十二時までにベットに戻らなければ再び眠りの呪いが発動してしまう。
(初めての男装と悪役令嬢との再会。
犯人捜しの始まりは前途多難だったな。)
そんな事を考えながら屋敷の廊下を音を立てないように駆け抜けて部屋へ入る。
時間ぎりぎりにベットに飛び込むと再び眠りの呪いが発動した。
十二時の鐘が鳴る中で意識が飛ぶ。
気がつくとラベンダーの香りに包まれて私はあの海へ戻って来ていた。
巨大な月が浮かぶ碧い海辺。
碧く光る粒子が辺り一面に漂っている。
(シフォンは?)
キョロキョロと辺りを見回すが見つからない。
ザッ、ザッ、ザッ、
誰も居ない永遠に続く海岸線。
かなり心細い気持ちになりながら足早に砂を踏みしめ先を急ぐ。
すると倒木に腰掛けシフォンが優しい眼差しで手を振り微笑んでいた。
(いたっ、シフォンっ)
「おかえり」
一日しか経っていないのに彼の顔を見ると懐かしさが込み上げる。
彼は私を抱きしめると有無を言わさずに膝枕をした。
(何だか少し照れるけど安心する。)
私は頭を撫でられながら今日の出来事を報告した。
「フフッ、じゃあ その悪役令嬢イライザにキスしたんだ。」
「はい。」
「しかもリプルから?」
「も~、そうですっ、
何度も訊かないで下さい。
恥ずかしいです。」
そう言って私は顔を赤らめた。
(乙女一生の不覚)
その場を逃げ出す為だとはいえ、自分から女の子にキスをするなんて……。
あの時の私は少しテンションが変だった。
男装は私を行動的な理想のイケメンに変えてしまうのだ。
「でも無事にカツラギに会えてよかった。
相変わらす奴は花が好きなんだな。
あの頃と何一つ変わらない。」
そう言うとシフォンは懐かしそうに遠い瞳をした。
シフォンとカツラギ様がどんな関係なのかは分からない。
でもきっと幼馴染で彼とのコトは大切な思い出なんだろう。
記憶を消されても忘れない位に……。
「はい。
それでカツラギ様が言ったんです。
私に毒を盛ったのはフライス第二王子だろうって。」
「あのチャラ王子か。
すまない。
俺が動ければいいんだが。」
「シフォンは、まだこの世界から出られないの?」
リプルは心配顔でシフォンの顔を覗き込んだ。
「ああ、あれから出口を探したが閉じ込められたままのようだ。
断片的な記憶しかなくて何も思い出せない。
覚えているのは一部の記憶と君を愛する気持ちだけ。
君とどこで出会ったのかも思い出せない。
服装からして俺はどこかの王族か貴族の様なんだが……。」
私は悲しそうな瞳をしたシフォンを見つめた。
こんなイケメンに会っていたら忘れるはずはないのだけど。
私も彼に見覚えは無かった。
乙女ゲーム『シンデレラ プリンセス』の攻略対象リストにも無かった気がする。
私はシフォンの捨てられた子犬の様なしょげた顔に母性本能をくすぐられた。
思わず彼の体をギュッと抱きしめて頭を撫でる。
「大丈夫。
きっと私がシフォンを助ける方法を見つけるから。
まずはカツラギ様と協力してフライス王子を調べてみる。
だからもう一度、私に目覚めのキスをして。」
そう言うと私は瞳を閉じて唇を差し出した。
彼は私の頭をポンポンと叩くと子供の様にモジモジし始めた。
「……っ?
どうしたの?」
「今日はリプルからしてみてよ。」
(えっ、私から?)
どうやら私が悪役令嬢イライザへキスした話で私のキスに興味が沸いたらしい。
彼は少年の様なワクワク顔でキスをおねだりしていた。
普段クールなイケメンの甘え顔。ブンブンと振るしっぽが見えるようだ。
そのギャップに萌えが止まらない。
気がつくと私は吸い込まれる様に彼へキスをしていた。
……何も起こらなかった。
(あれっ、何で?)
私は昨日のシフォンの目覚めのキスを思い出す。
どうやらかなりの情熱的なキスでなければ発動しないらしい。
やっぱりシフォンにして貰おうと彼を見る。
彼は目をつぶりウブな少年のように唇を突き出して待っている。
(も~。シフォンたらされる気満々じゃないの。
乙女かっ)
「ゴホンッ」
(頑張れ私っ、
これは目覚める為の儀式だから。
リラックスしてサラッとさり気なく。)
私は自分に言い聞かせた。
元はモテない乙女ゲーマー。
こう言うコトには慣れていない。
だから時間を置けば置く程に意識して出来なくなる。
(あぁぁぁ、悪役令嬢イライザにはサラッと出来たのに。)
私はぎこちなくシフォンの両肩に手を置くと叫んだ。
「え~っと、行きますっ。
やぁぁぁ。」
私は無我夢中で彼の唇を貪った。
それはもう必死である。
恥ずかしさで意識が朦朧とする中、気がつくとベットの上へ戻っていた。
その夜、私は男装して夜会の入口に居た。
私を殺そうとした犯人を捜す為である。
今の所、一番怪しいのはチャラ王子ことフライス第二王子だ。
夜会に潜入して何とか手掛かりを掴もうと会場まで来たが大事な事を忘れていた。
それは貴族の夜会とは常にパートナーを伴って参加すると言う事だった。
無理やり突入出来なくもないが偽名の不審者等、入れて貰えないだろう。
どうしたものかと困っていると見慣れた令嬢が入口で何やら騒いで揉めていた。
悪役令嬢イライザだ。
「いいから私を通しなさいっ。
私を誰だと思っているの失礼ね。
いいコトっ、
知っておきなさいっ、
私の名前と貴族制度をね。」
「しかし流石に夜会にエスコートなしでは……。」
執事が困り顔でオロオロしていた。
イライザはイライザで視線を何やら怪し気にウロチョロしていた。
(利用できるかも……)
私は二人の間に割って入った。
「暗闇に灯る美の輝き。
余りの美しさに見惚れて声をかけるのが遅くなりました。
遅れて申し訳ありません。
何を着ても貴女の輝きに霞んでしまう。
そう心配になり衣装選びに時間がかかってしまって。」
「貴方はっ。」
何故かイライザはフルフルと震えている。
「やっと見つけましたわよ。
この恋泥棒……いや運命の君。」
イライザはそう言うと私の腕をワシッと掴んで離さない。
(うわぁぁ、再びロックオンされたよ。
何かみんなの視線が痛いです。)
私は慌ててイライザを見るが既に瞳がハート。
乙女モード全開で放さない。
仕方がなく私はその場に跪いて手にキスをした。
「参りましょう。
社交界が貴女を待ちわびています。」
「私はイライザ、当然ですわ。」
彼女は勝ち誇ったように髪をかき上げて執事に目をやるとスタスタと歩き出した。
ガヤガヤ
カチャ ザワザワ
周囲はパーティー会場独特の香りが漂っていた。
何とか夜会への潜入に成功した私は周囲にそっと目を配る。
第一王子プロード様攻略の過程で何度か夜会には出た事がある。
でも今回は今までより遥かに規模が大きかった。
様々な名だたる貴族や令嬢達が勢ぞろいしている。
第一王子失踪から一時夜会は自粛ムードだったが今回は第二王子の主催。
風向きが変わりつつある情勢に顔を売ろうと皆必死だった。
見ると第二王子のフライス王子が令嬢達に囲まれていた。
真面目で厳格なブロード様に比べてとにかくチャラいフライス王子。
恋の噂は数知れず、真っ先に攻略対象から外した王子だった。
(取り巻き多過ぎ。
どうやって近づこう……)
悩んでいるとイライザが袖を引っ張る。
「運命の君。
まだお名前を訊いておりませんわ。」
見ると顔を赤らめ伏せ目がち。
普段の強気な性格からは想像もつかない乙女な顔をしていた。
(うっ、夜会に潜入出来たのはいいけど失敗したかも。
ええと、名前、名前と、リプルと言ったらバレちゃうしな。)
「失礼した。
私の名はルプリと申します。」
「ルプリ様、聞かない名前ですわね。
もしかして隣国から?」
「えっ、えぇぇ、まぁそうです。」
「やっぱり、そうでしたの。」
イライザが嬉しそうに手を叩く。
最近クラウド王国では隣国との交流が盛んで様々な人や物が入って来ていた。
その為、多少のトラブルも発生していると聞くが概ね好意的に捉えられている。
大陸一の繁栄を誇るクラウド王国。
誰もが一攫千金を狙って王都へやって来る。
他文化が混ざり合い今王都は今世紀最大の活気に満ちていた。
私達はグラスを取るフリをしてそれとなくフライス王子の方へ近づいた。
すると王子の取り巻きの一部が気づきイライザへ声を掛けて来た。
「あら、イライザじゃないの。
最近見ないと思っていたけど久しぶりね。
もう王都には居ないのかと思っていたわ。」
「そうそう、ブロード様へあんな無礼をしたのだから。
よくもまあ、まだ王都へ居られたものですわ。」
ザワザワ
ヒソヒソ
その声に反応して周囲がざわついた。
イライザは唇を噛みしめ俯いて黙っている。
そう彼女は乙女ゲーム『シンデレラ プリンセス』に出て来る悪役令嬢。
第一王子ブロード様の攻略の過程で私とバトルを繰り広げた仲だった。
私とブロード様の婚約発表直前で悪事を追求され社交界を追放されていた。
(そう言えば、そんな彼女が何故また夜会へ来たのだろう。
しかもたった独りで……。)
不思議に思い首を傾げていると、尚も令嬢達の陰口が激化した。
以前は社交界のボス的な存在で
『知っておきなさいっ、
私の名前と貴族制度をね。』
が決めセリフの強気な悪役令嬢イライザ。
泣かされた令嬢達も多いのだろう。
それが一方的に責められている。
今までの仕返しとばかりに次々と周りも同調し、いい気味だとニヤニヤしていた。
確かに気が強く挑戦的な性格。
私もよくイライザには絡まれた。
ゲーム中で一番私が被害に遭ったのかもしれない。
だけどイライザはいつでも単身自分の責任で喧嘩を売って来た。
少なくてもこんな多勢に無勢な陰湿な責め方などしやしない。
隣で聞いていて私は何だがだんだんと怒りが湧いて来た。
「ふん、ブタどもがっ。」
聞えよがしに私は呟いた。
「ちょっと、あなた。
今なんて言いましたの?」
「はぁ、ブウブウうるさいブタ達だと言ったのですよ。
独りでは狩りに出かける勇気もないメス豚がっ。
餌に群がりブウブウと。
社交界には孤高の美学とルールがあるんですよ。
貴女達には品がない。」
「なんですって。」
「なんですって。」
「なんですって。」
取り巻き達がいきり立つ。
「だいたい。ブロード王子へ謝れと言うが貴女達はどの立場でそれを言っている。
まるでクラウド王国 第一王子より上の存在のような口ぶりだ。
それこそ王家へ対する不敬なのでは?」
「そっ、それは……」
その言葉に取り巻き令嬢達が黙り込む。
パンッ、パンッ、パン
「あはははっ、
そりゃそうだっ。
我ら王族は貴族の助けなど要りはしない。
また決してそんな軟弱であってはならない。」
そう言うと第二王子 フライス王子は手を叩いて笑い転げた。
「フライス様っ、
ですがイライザは以前ブロード王子へ無礼を……。」
「黙れっ、貴族令嬢ごときがでしゃばるな。
そいつの言うように社交界には社交界の流儀があるんだよ。
殴られる勇気のない者が立ってよい場所ではない。」
「ですが。」
「ですが。」
「黙れと言っている。
興が醒めた。
お前達はもう下がれ。
それにあの兄貴に挑むなんてなかなか出来る事ではない。
流石は孤高のイライザ嬢と言う所か。」
そう言って手を振ると取り巻き達はスゴスゴと離れて行った。
フライス王子は私へ馴れ馴れしく肩を組むとシャンパンを差し出した。
「しっかし、お前、伯爵令嬢達相手にズパズパと……。
面白い奴だな、向こうで一緒に飲もうぜ。」
イライザを見ると苦笑いしながら頷いている。
私もイライザへ無言で頷くとフライス王子に連れられてバルコニーへ出た。
夜空には満天の星が散らばり心地よい風が私の冷や汗を乾かしていく。
まだドキドキしている。
(危なかった~っ、
カチンと来て思わず変なコト言っちゃったけど今考えれば処刑モノだよね。
名だたる伯爵令嬢達をブタ扱い。
思い出しただけでもやっちまった感がプンプンするわ。)
フライス王子はぼんやりと街並みを眺めている。
「なぁ、お前はこの国をどう思う。」
(えっ、急にこのチャラ王子どうしたの?)
普段、兄に政治を押しつけて令嬢の尻ばかりを追いかけるチャラ王子らしくない。
ブロード様が失踪して王家としての責任に目覚めたのだろうか?
チャラ王子とは仮の姿。
ホントは一途な真面目王子だったりして。
(まさかね~、
ないない。)
そう思いつつもあまりの真面目顔に背筋が伸びる。
きっと他国の人間だからこそ、どう見えるかが気になるのだろう。
「活気があり秩序もあった。
良い国だったと思います。」
「だった?
過去形なんだな。」
フライス王子が意外そうな顔で問いかける。
私に眠りの呪いをかけブロード王子の失踪に関係しているかもしれない相手。
相手は王国の第二王子。
二人きりで話せる機会などもうないだろう。
私は思い切って踏み込んでみる。
「恐れながら、第一王子が謎の失踪。
その婚約者も昏睡状態と聞いています。
噂では王位を狙ったチャラい誰かが暗躍したとかしないとか……。」
「おいおい、それは俺が兄貴を暗殺したと言っているのか?
俺は王位なぞに興味はないし、そんな事はしやしない。」
「御冗談を。
男子たる者、王子に生まれて権力に固執しない訳がない。
それに英雄色を好むと申します。
王になってウハウハのハーレムを作りたいのでは?
婚約者への毒殺も王子の婚約を阻止する為に暗躍なされたのでしょ?」
私は意地悪く食い下がった。
「おいおい、まてよ心外だな。
俺はこう見えて一途な男だぜ。
それに俺がリプル嬢を殺す訳がないだろう。
初恋の相手なんだから。
色々な令嬢へ声をかけたのだって彼女を忘れる為だぜ。
あんな素敵な女性。
忘れる事なんて出来ないけどな。」
(えっ、フライスさん……今、なんとおっしゃいましたか?)
突然の言葉に私は目をぱちくりさせた。
「なぁ、信じてくれよ。
こんなコト打ち明けたのはお前が初めてなんだからよ。」
そう言ってフライス王子は私の肩を組んで寄りかかる。
その重みに耐えきれず倒れ込み王子が馬乗りになる形になった。
酔っているのかそれでもまだ王子は私に抱きついて来た。
「えっ、ちょっとあの、止めてって。」
思わず私は地声で叫んでいた。
「……っ?
お前、女なのか?」
急に酔いが醒めたのか慌てて王子が私の服を開いた。
「やっぱり女。
んっ、えっ、リプル嬢?」
「あっ、いや。」
慌てて私は服を取り繕った。
誰も居ない夜のバルコニー。
私とフライス王子は何故か正座をして向かい合っていた。
「毒を盛られて昏睡状態と聞いていたが……
眠りから醒めていたんだな。」
「はい。お陰様で……。」
私はばつが悪そうに答えた。
「そうか。良かった。
うん、本当に良かった。」
フライス王子は涙ぐんでいるようだった。
「俺がリプル嬢のコト好きだって聞いたよな。」
「はい、聞いてしまいました。」
「そっか~、
もっとロマンチックに告白するはずだったんだけどな。」
そう言うとフライス王子は悔しそうに空を見上げた。
「あのっ、私、何と言ったらいいのか。」
思いがけない方向からの告白に戸惑う。
どうしたらいいのかモジモジしているとフライス王子は真剣な顔で私を見つめた。
よく見るとやんちゃだけど整ったイケメン顔をしている。
チャラいと思っていた相手が実は一途だった。
それが分かり多少のギャップ萌えも感じていた。
(綺麗な顔。
うーん、よく見るとまつ毛が長くて素敵な顔立ち。)
「リプル嬢。」
「えっ、あっ、はい。」
急に声を掛けられて私は妄想から現実に引き戻された。
「君は俺の初恋の相手だ。
忘れようとしたけどやっぱ無理だわ。
俺マジだから。
振り向いてくれるまでずっと君を待ってる。」
そう言って彼は私の頬に手を添えた。
(えっ、えっ、急にマジだからってコクられても
何かこのままだとキスとかされちゃうよ。)
ドキドキしながら思わず沈黙を埋めに行く。
「あっ、いやその、私はブロード様と婚約をする予定でして……。
あっ、そうだっ、ブロード様は暗殺されてしまったのでしょうか?」
「えっ、兄貴が暗殺?
ないない。ちゃんと今も生きてるよ。」
「へっ、そうなんですか?
ではブロード様は今どちらへ?」
「あぁぁ、別宅の愛人の家。」
「そうですか、愛人さんの所へ……って
えぇぇぇぇっ、愛人ですってぇぇぇ」
私の絶叫と共に夜がゆっくりと更けて行った。
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