一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

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12話 お風呂とトイレができたよ

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 人間、何がきっかけで閃くかわからないものだ。俺は正和にして携帯製材所と言わしめる力を覚醒させた。あと、工具に類するものを強化する力もあるようだ。

 幸依はどうやら魔法の力に目覚めたのか、水を出せる感じだ。俺はその際、濡れ鼠にされるまで角材と板で何事もなんとかしようと考えていた。だけど石材でかまどを作り、服を乾かすついでに夕食も済ませてしまおうと提案した事が思案の壁を突破させる事となる。

 いや、爺様が白子をあまりに美味そうに食べてたものだから、酒も勧めてみたんだよ。で、酒をコップに注いだ時に閃いた。ああ、これだ、と。夕食後、俺は幹の太いベイマツを選び適当な長さで切断する。その際にできるおがくずも確保しておく。工具の中から鑿(ノミ)を強化し、正和と華音に浴槽の様にくりぬいてもらう。直径が一・五メートル位のものなので大変かと思いきやスーパーパワー+スーパー工具の効果でそう時間もかからなかった。仕上げにヤスリで内部の表面を滑らかにして完成。

 俺はその間、板状木材ですのこを作り、同じく板状木材で簡単な囲いを作る。周囲は誰もいないので、今日のところは屋根なしでいいか。あとはこれらを組み合わせて、さっきのベイマツ浴槽にお湯を張れば簡易浴場のできあがり。

 何かが出来ると応用も早い。トイレも同じ要領で、最初は汲み取り式便所に近いものを作ろうとしたのだが、せっかくおがくずを確保してあるのでバイオトイレに挑戦してみる事にした。下水設備のない場所に向いていて、うまくいけば臭いも軽減できる。

 ベイマツをカンナで削りカンナくずをだし、森から腐葉土をとってきて、これらをおがくずと混ぜ合わせ便槽にした幹の中に入れる。簡単な台座も木材で作り、組み合わせて完成。

 最初は便槽の部分に爺様仕様のアイテムボックスを設置するアイディアもあったが、排泄物専用にするには抵抗があるのと、性質を完全に理解できていないアイテムを使用すると、どんな問題が起きるか分からないのでこの形になった。一応水のいらないトイレという事になるが、一部材料が違うので、バイオトイレとしての効果がでるかはわからない。これは外に置くのもどうかと思うので三階の空き部屋を利用しよう。

 これで今日はしのげるはずだ。作業途中で夜の帳が下りてきたが、爺様指導で家族全員が光魔法のライティング(照明効果)を身に付け乗り切った。色々あった気がするけど、これでこの世界の一日が終わるのか。今日はぐっすり眠れそうだ。

 翌朝、早速問題が持ちあがった。トイレットペーパーがなくなったらどうするの? 紙の問題だ。あー......。解決法はいくつかあるが、高い文明レベルの生活になれた俺達には簡単に割りきれない問題だった。葉っぱとかな!

 現在の洞口家の文明レベルで紙の精製はとても無理だ。爺様にきいてみたが、この世界にトイレットペーパーは存在していないらしい。予想の範疇ではあったけどね。とりあえず保留にするしかないな。

 爺様も一般的道具とかに関しては、無から有を生み出している訳ではないらしいのであてにならなかった。昨日の斧は以前献上物として捧げられた物を出したのだ、と他にもいくつか農作業用の道具を出してくれた。

 簡単な朝食後、正和はニースの散歩を兼ねた周辺の散策へ。爺様と華音もついていくという。幸依は魔法制御を練習しつつ家事を行うようだ。

 俺は昨日作った浴槽と同じものを何個か作り始めた。水を貯めたものとお湯を貯めたものをアイテムボックスにストックしておくつもりなのだ。なのでヤスリがけの工程は省いてもいいかもしれない。

 ああ、洗い物がしやすいように浅くくりぬいたやつも作っておこう。流れ出た水のことも考えると作業場は裏庭より森側がいいかなぁ。爺様に貰った鍬(クワ)で溝も掘っておくか。それにあわせて簡易浴場も移動させる。......なんだか生活の場が家の中から外に移行してきている気がするんだが。

 こうなってくると現地の住人の生活を参考にするため村か街を見ておきたいところではある。やはり比較対象がないと自分達がどんな状態なのか分からないままだからなぁ。なんだかやる事ばかりが増えていくが、充実感とわくわく感があるのも事実だった。この環境を楽しんでいる自分も確かにいる。しばらく作業に没頭していると散歩兼散策に出ていたメンバーが戻ってきた。

「おかえり何か発見できたかい?」
「少し上流に開けた場所があったから淡水魚が住む池をつくってきたよ」
「お、魚が入手できれば食料事情に変化が起きるかもしれないなぁ」
「! し、白子なんかも作れるじゃろうか!?」
「幸依白子作れたかな? 結婚してから手作り白子の記憶はないなぁ」
「ざ、残念じゃ......」

 釣竿は倉庫にあるから近いうちに行ってみるか。

「私は午後からおじいちゃんと畑になりそうな場所作ってくるね」
「ガシュウイィィン!」

 そう言って一旦家の中に入って行った。なんだか今日はドタバタもなく平穏に過ごせてるな。午後からは華音と爺様は畑になりそうな場所を作りに行った。植えれそうなものは何もなかったような気がするのだが、爺様も一緒だし何か考えがあるのかもしれない。幸依は白子の作り方は知らないとの事で爺様がしょげていたな。

 正和は俺の作業を手伝ってくれていたが、ぼーっとしてるというか、上の空というか、心ここにあらずというか、話しかけても反応が返ってこない事もあった。具合が悪いのなら休ませようとしたのだが、そうではないと本人は否定していた。アイツは家族にも気を使う所があるから、疲れが出ているのを黙っている可能性はある。今日は早目に休ませてやろう。

 幸依は魔法での水の扱いに多少は慣れてきたようで、落ち着いていれば必要な量をうまく調節して出現させる事が出来るようになっていた。試しに飲んでみたが消毒されてないけどむしろ問題ない水、というのが俺の感想だ。水は必需品なので幸依に頼る事も多くなりそうだけど、本人にどんな影響が出るのかも不明だから慎重に行動しないといけないな。

 あ、全く関係ない話だが、裏庭を歩いていたニースが二階部分の屋根に飛び乗ったのを目撃した時は驚いた。聖獣なんだからそれくらいできるんだろうが、俺の中ではまだ犬のイメージが抜けきれてない。角生えてるけど見た目も行動も犬っぽいし。犬が地面から二階の屋根に飛び乗る場面とか普通遭遇しないよな? その後何もない空間をみつめてたり、屋根の上で寝てたりしてたけど。犬のイメージでいいんだよな?

 夕方、爺様と華音が戻ってきたので畑で何をするのかきいてみた。華音曰く、特に考えてなかったそうだ。何か役に立とうとして失敗したかのようにしょんぼりしていたので、明日柵を作って畑を囲い、予定地としてキープする事を勧めたら気を取り直していた。うん、今日は昨日よりこの世界になじんだ生活が出来た気がするぞ。明日もこの調子だといいな。
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