アイテムボックスは人を襲う ~箱を狩る少女~

シャア・乙ナブル

文字の大きさ
55 / 55

55話 異民族

しおりを挟む
「やっぱり人だわ!」

 私は確認して驚く。確かにそこには奇妙な服装ではあるが武装した集団がいて、突っ込んだスカイシャークと戦闘を開始している様子が窺えた。すでに一人はスカイシャークに奇襲を受けた形になりその身体を鋭い歯で引き裂かれ何人かは怪我を負わされている。

「わ、私のせいだ!」

 なんとかするためにアオイを戻し戦闘の現場へ参加しようとする私の足を別の方向から聞こえた声が止めた。

「そこのあなた! こっち! こっちです!」

 見ると別の岩陰から私を手招きしている同い年位の女の子が。その表情はなんだか必死に見える。

 私は戸惑った。私のせいで魔物に襲われた一団がいるのにこの子は私をそこには行かせまいとしている? 一団の方を指さすと彼女は首をブンブン振りながら両腕をクロスさせてばつの形に。 ……と、思ったら猛ダッシュで私の所にきて腕を掴んで引っ張り始めた。

「え、ちょっ」
「いいからこっちへ! 早く! 奴らに見つかる前に!」

 奴ら? 奴らとはあの一団の事だろうか? 私のせいで悲惨な状況にしてしまったのに……

「!?」

 私はスカイシャークと戦闘している一団を見て何故か違和感を覚えた。女の子は私を別の建物へ引き入れる。

「話は後で。今はここから離れないと」

 私に一言いい、部屋の奥に向かい、

「チュンさん、バッカスさん、相手はやっぱりモンスターの方に気をとられてます!」

 そう伝えた。部屋の奥には背格好が似ているものの、色白の男性と褐色の男性がいてそれを聞いてこちらに進み出てくる。

「そうか、じゃあこのどさくさを利用しよう」

 褐色の男性が言う。……わ、この人左腕にたくさんの傷跡があるわね。痛くないのかしら。

「誰だかわからないが君のおかげで助かりそうだ。礼を言うよ。俺はチュン。こっちが相棒のバッカスだ。君に声をかけたのが……」
「エイジアです」

 色白の男性と女の子が名乗り私達はその場を離れる。私はその時スカイシャークと戦う集団の違和感に気付き、その異様さになんだか気分が悪くなった。

(は、はこ丸あれ……)

 片腕や片足を食いちぎられたり、とても動き回れる様な状態ではないにも関わらずその集団は……ううん、死んでさえいなければその人達は戦う事をやめようとはしていなかった様に見える。下半身がなくなっている人でさえ地面を這いずってスカイシャークに攻撃しようとしていた。

(まるでバーサーカーだ。嫌な予感がする)

 私とはこ丸は得体のしれない何かを感じながらもエイジアさん達について行き、目的地である王国の要塞に辿り着く事が出来た。

「おー! エイジアちゃん無事やってんね。おいちゃんもう禿げてしまうほど心配しとったんやでー? ってもうすでに禿げ散らかしてるけどな」

 そして妙な言葉とノリで絡んでくる中年のおじさんと出会う。

「お? こちらさんは初めて見る顔やね? おいちゃんはグウル。よろしゅう」
「墓場で死肉を漁る魔物?」
「それはグールでんがなー! ってお嬢ちゃんノリええね」

 無意識! 無意識だったのよ!

「とにかく話は中で」

 バッカスさんがそう言って別の場所へと向かいだす。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

けるさん
2019.08.31 けるさん

くっ やられてしまった。
涙もろくなってしまったようだ。
序盤で いとも簡単に
やられてしまうとはな。

まだまだ 修業が
足りないようだが
次は そうはいかんぞ!

2019.09.01 シャア・乙ナブル

泣けるほど感情移入していただきありがとうございます。 今後も色んな場面があると思いますので、さらにこの作品にのめり込んでいってください!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。