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その1
しおりを挟む「おぉ! 遂に、遂に降臨なされた……!我らが聖主様……!」
「あぁ、長かった……! この日をどれほど待ちわびたことか……!」
「皆の者! 急ぎ聖主様を大広間へ! 国王陛下がお待ちだ!」
痛む頭を押さえ、目を開ける。
そこでようやく私は、自分が地面に座り込んでいることに気が付いた。
一体何がどうなってるの? 確か私、仕事帰りに横断歩道を渡ってて……。
そこでプツリと記憶が途切れていることに気付く。
えっと、それから……どうなったんだっけ。
「……ん? 聖主様の他に、もう一人いるようだが……?」
先程から聞こえる男の声に、私は恐る恐る顔を上げた。
そして、驚愕した。私の国では決して見かける事のないだろう服装をした男が数名、私を取り囲むように立っていたのだ。
いや、正確には私を取り囲んでいるというよりも、私を中心に描かれている円……まるで昔見た魔法少女アニメのような魔法陣を取り囲んでいるらしかった。
というか、その服装何? コスプレかな。それにしても、凄いクオリティ。まるで本物の神官?さんみたい。
「な、何……!? 一体どうなってんのよ……!」
「え?」
ふと隣から女の人の声がして、私は振り返る。そこに居たのは、私と同じ年くらいの女性だった。
ゆるくカールされた髪は茶髪に染めてあって、まさに今風のオシャレな女性って感じだ。
黒髪で特にオシャレに興味も無かった自分とは大違いだと、現実逃避がてら考えてみる。
「な、なんと……! こやつ、黒髪であるぞ!呪いじゃ、呪われし者じゃ……!」
「え? わ、私?」
神官のような服を来た男が一人、震える手で私を指差す。
「なるほど。光を召喚には影も付き纏う、と言う事か……」
「致し方あるまい。こちらの聖主様と一緒に、その呪い子も連れて行こう」
「し、しかし神官長!呪い子などを陛下の前にお連れするのは……!」
「聖主様の召喚にしろ、呪い子の召喚にしろ、我が国では一大事だ。陛下に今後の処置を仰がねばなるまい」
「は……」
私達には何の説明もされないまま、男は私の腕を乱暴に握り、引っ張るように持ち上げた。
「いたっ」
「うるさい! とっとと立て!」
初対面の人になんて事を、と思ったが、隣の女性にはまるでお姫様だとでも言うように恭しく手を添え支えるように立たせていた。
どういうこと? その女の人の方が可愛いのは認めるけど、あまりには扱いの差がありすぎじゃない?
私は悶々とした気持ちを抱えたまま、しかし今の状況が全く不明だったので、そのままされるがまま歩き続けた。
「陛下! 無事、聖主様召喚の儀、成功いたしました!」
「うむ、ご苦労であった。長きに渡るそなた達の功績、素晴らしいものだった」
「い、いえ! 勿体無いお言葉です!」
結局道中、何の説明をされないまま私達二人はだだっ広い広間に連れてこられた。
ここも、海外映画とかで見たことあるような場所だ。言うなれば、王宮の広間って感じ。
私は両脇を男に抑えられながら、目の前の「陛下」と呼ばれた男を見る。
……うん、確かに見るからに陛下という感じがする。威厳たっぷりな彫りの深い顔。高そうで気品ある服、頭上で光り輝く王冠。
歳はおそらく50歳くらいだとは思うけど、かなり整った顔立ちだ。その証拠に、隣の女性も少し頬を赤らめている。オジ専?
「さて、君達二人には突然すまないことをしてしまった。改めて、詫びを入れよう」
陛下はそう言い、一度頭を下げた。
「単刀直入に言わせて頂こう。君達はこことは違う世界――異世界より、この世界『フィルブレム』に召喚されたのだ。フィルブレムを救う聖主として」
「「え……?」」
私の名前は、小峰沙羅。25歳、しがない花屋の店員だった。
他の人と少し違う所と言えば、私の両親は既に他界し、私は母の祖父母によって育てられたことくらいだ。
二人とも私を本当の娘のように可愛がってくれたし、特に生活に不満はなかった。
そんな祖父母も先日他界し、私は天涯孤独になった。彼氏もいないし、他に頼れる親戚もいない。
そしてその日も、いつもと変わりなく仕事帰りの帰路に着いていたのだ。
その矢先に、この仕打ち。
「いいか!お前は聖主様を召喚する代償として召喚されて『しまった』呪い子なんだ! 殺されないだけありがたいと思え!」
「ま、待って! どういうこと!? 私も、ただ生活してただけで、急に連れて来られただけなの!」
「黙れ! 呪い子の言葉など聞きたくない! 陛下の御慈悲により命までは奪わないでいてやるが、ここから出ることは許されん。肝に銘じておけ!」
「お願い待って! ねぇ!」
私は海外映画で見るような地下に閉じ込められてしまったのだ。
もうこれは、完全に地下牢獄だ。鉄格子なのがその証拠。
私を閉じ込めた兵士をのような男は、それだけ吐き捨てると何処かへ行ってしまった。
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