異世界に召喚されたが奴隷扱いされた私はエリート騎士様に溺愛される

つぐみ

文字の大きさ
2 / 25

その2

しおりを挟む




私は混乱する頭を整理するように一度座り、目を閉じた。

この世界は、私の居た世界とは違うらしい。にわかには信じがたいが、先程の魔法陣と言い、神官という存在と言い、国王陛下といい、信じるしかない。言葉が通じるのは、まぁご都合主義なのだろう。

この世界『フィルブレム』には、魔法が存在している。
そして私達が召喚されたこの国は『ラムダ』というらしい。

近年ラムダは雨も降らず、しかし時には暴風雨などの異常気象も起き、凶作に見舞われている。
それが原因で国が逼迫ひっぱくしている。
それを引き起こしているのが隣国『アウルリム』だと言うのだ。

ラムダは現在アウルリムという国と敵対関係にあるらしく、飢饉を起こしかねない今、いつ戦争が起きてもおかしくないんだとか。

この情報量だけで既にいっぱいいっぱいなのだが、この冷戦状態を打破すべく召喚されるのが聖主様という存在らしい。
異世界より召喚される聖主様は、召喚国に大いなる恩恵を与え、恵みをもたらしてくれるとされている。
まぁ具体的何をすればいいのかは誰にも分からないらしいが、とにかくアウルリムとの戦争に終止符を打つ決定打になると思っているらしい。なんとも曖昧なものだ。

その聖主様には私と一緒に召喚された女性――東雲しののめ絢香あやかさんだけが認められ、私は完全におまけ……というか邪魔者扱いされ、今に至る。
なんでもこのフィルブレムには黒髪の人間は『呪い子』と呼ばれ、世界にわざわいをもたらすとされているらしいのだ。
なんだ、厄って。聖主様と言い、漠然としすぎている。

だったら元の世界に帰して、と何度も行ったのだが、この儀式は一方通行。
連れてくる手段は知っているが、戻す手段はないとキッパリ言われた。

最悪だ。なんて残酷な儀式だ。こっちの都合も考えないで。
次兵士が来たら文句言ってやる! そう意気込んでいたのだが、兵士はちっともやって来なかった。

風呂は愚か、食事も、一日一回だった。固いパンに味の薄いスープ。
ここを訪れる兵士の話を聞くと、絢香さんは高貴な客人として扱われ、今はお姫様のような生活をしているらしい。
別に羨ましいとは思わないが、ただ、どうして自分がこんな目に、と思わざるを得なかった。


「お願いです! 話を聞いてください! 私は『呪い子』なんかじゃない! この髪は、私の国では普通で、あの絢香さんだって、元々黒髪なんです! それを染めてるだけで……!」

「貴様……!『呪い子』の分際でアヤカ様を愚弄する気か……! 陛下の恩情で生かされている身で、たわけた事を!」


そう言って兵士は私を殴ってきた。
空腹もあり力が入らなかった私は、兵士に何度も殴られた。

その日から、色んな兵士が事あるごとに私に手を上げるようになった。
決して身体には手を出されなかったが、髪を掴まれ、頬をぶたれ、腕を捻り上げられた。

最初は抵抗していたが、大の男に女の私が勝てるはずもなく。
日に日に私は無抵抗になり、されるがままになっていった。きっと私は、兵士たちの憂さ晴らしの的にされているのだろう。
身体に手を出されないだけありがたい。

体中がアザだらけになるまで、そう時間は掛からなかった。
時計もカレンダーも無いので、今が一体いつだかは分からない。体感的には、半月程たったのだろうか。
一体いつまで私はこんなことに耐えなければならないのだろう。
絢香さんは、どうしてるだろうか。


「……あら、酷い有様ね」

「……!?」


不意に聞こえた懐かしい声に、私は弾かれるように顔を上げた。


「あ、絢香さん……!」

「それに、凄い臭い。貴方、お風呂も入れさせてもらえてないのね。可哀想に」


絢香さんは、まるで昔絵本で見たような綺麗なドレスを来て、私の前に現れた。
肌も髪もツヤツヤで、首元や指には高価そうなアクセサリー。元々整った顔立ちだった絢香さんに、それらはとても似合って見えた。


「絢香さん! 良かった! ずっと会いたかったんです!」

「へぇ? 私に?」

「はい! 私、ずっとここに閉じ込められてて……。黒髪が『呪い子』の象徴だって。これは私の世界では普通で、絢香さんも元々黒髪なんだって何度説明しても分かってもらえなくて……」


私は鉄格子にしがみつき、絢香さんに訴えかけた。


「お願いです! 絢香さんからも言ってもらえませんか? じゃないと私、ずっとここから出られないんじゃないかと思って――」

「いいんじゃない? ずっとここに居れば」

「…………え?」

「聞こえなかった? 貴方……沙羅さん、だっけ? ずっとここに居ればいいじゃない」

「な、何を言って……」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...